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現代日本で「就労請求権」が認められる場面【地方独立行政法人市立東大阪医療センター事件・大阪地裁令和4年11月10日決定・労判1283号27頁】
本来、労働契約とは、労働者が使用者の指示する時間・場所において指示する内容の労務を行い、その対価として賃金の支給を受けるという契約です。
すなわち、労働者にとっての労働とは義務であって権利ではありません。
そのため、日本の労働法の世界では、基本的に使用者に対する「就労請求権」は認められないものとされています。
しかしながら、自らの資格を維持するために一定の実務経験が要求される職種の場合も同様に
業務の属人化が招く「職場のメンタルヘルス」の危険【新潟市事件・新潟地裁令和4年11月24日判決・労経速2521号3頁】
今日、職場におけるメンタルヘルスは当たり前のものとなっており、かつ、企業の労務管理にとって最も負担のかかる問題の1つとなっています。
すなわち、職場のメンタルヘルスが生じた場合、そのメンタルヘルスの原因が業務によらない場合でも、使用者は休職命令などを通じて症状を経過観察したり、復職時には試し出勤や復職後の配属先につき検討をしたりする必要が生じます。
ましてや、メンタルヘルスの原因が業務に起因す
「管理本部経理部長」は管理監督者ではないとされた事例【国・広島中央労基署長(アイグランホールディングス)事件・東京地裁令和4年4月13日判決】
労働基準法32条は原則1日8時間・週40時間という労働時間の上限規制を設けており、また、同35条は使用者に対し最低でも週1回の割合による休日を労働者に保障するよう命じています。
もっとも、「管理監督者」に当たる労働者については、これらの労働時間や休日規制の適用がないとされています(労働基準法41条2号)。
そのため、管理監督者に対しては深夜割増を除く割増賃金を支払う必要がありません。
そこで、「
昨年末以来、コロナ感染と後遺症でコラムを中断しておりましたが、このたび再開することにしました。更新は不定期になりますが、中断中に重要判例が積み重なっているので逐次更新できればと思います。改めてよろしくお願いいたします。
大学非常勤講師の「10年超え」無期転換ルールを制限した裁判例【専修大学(無期転換)事件(東京地判令和3年12月16日(第1審)労働判例1259号41頁】
労働契約法18条は、通算5年を超えて労働契約が更新されることになる有期契約労働者に対して、無期労働契約の申込みをする権利を認めています。
ところが、大学教員や研究者については、科学イノベ法や大学教員法という特別法によりこの「5年」が「10年」と読み替えられています(科学イノベ法15条の2柱書、教員任期法7条)。
現在は、この「10年超え」を前にした無期転換阻止のための大量雇止めが危惧される状況
高年齢者雇用に潜む法務リスク【譴責処分を理由とする定年後雇用契約の解除が否認された事例・ヤマサン食品工業事件・富山地裁令和4年7月20日判決・労働判例1273号5頁】
我が国の特徴的な労働慣行として、「定年制」があります。
この「定年制」は、一定の年齢になれば自動的に労働契約が終了するというものであり、長期雇用と人材の新陳代謝を両立させられるという点にメリットがあるとされています。
今日では高齢者雇用安定法8条により定年制を採用する場合の定年の下限は60歳となっています。
また、企業においては、労働者が定年を迎えても直ちに労働契約を完全に終了させるのではなく、
「即戦力」=「解雇自由」ではない【即戦力として採用された中途営業職員の成績不良を理由とした解雇が否認された事例・デンタルシステムズ事件・大阪地判令和4年1月28日判決】
「能力不足」は、解雇理由のなかでも最も典型的なものの1つです。
特に、高い営業能力を期待され即戦力として中途採用された場合で、しかも期待された成績を挙げられなかったために解雇されたというパターンですと、使用者側としては「期待した成績が挙がらない以上、当然に解雇はできるはずだ」と考える傾向が強いため、紛争が激化しやすくなります。
最近では、デンタルシステムズ事件(大阪地判令和4年1月28日判決)
「とりあえず戻ってこい」は通らないー会社の意向に基づき出勤拒否した労働者に対する解雇の無効とバックペイの支払いが認められた事例ー【ダイワクリエイト事件・東京地判令和4年3月23日判決】
いわゆる「不当解雇」事件では、労働者側から使用者側に対して解雇無効を前提とする労働者としての地位確認とそれまでの未払賃金(バックペイ)を請求するのがセオリーです。
ところで、このバックペイの請求が認められる法的根拠は民法536条2項にあります。
すなわち、同条は「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。」と定めてい
安直な求人がトラブルを招く【求人情報と内定通知書の記載の齟齬が問題となった事例・プロバンク事件・東京地裁令和4年5月2日決定】
労働契約は、①求人情報への掲載→②求職者による応募→③採用面接→④内定という過程を通じて成立していきます。
この場合、通常であれば①で示される労働条件と④の労働条件は同じものになります。
ところが、実際には①と④の労働条件が異なっている(④の内定段階で示される労働条件が①の求人段階のものより不利になっている)ということが散見されます。
この場合、求職者側は①の求人情報で掲載した労働条件での労働
「雇止め」のコストと意義ー雇用通算期間8年間の有期契約労働者に対する雇止めが認められた事例ー【国立大学法人東北大学(雇止め)事件・仙台地裁令和4年6月27日判決・労働判例1270号14頁】
予め雇用期間が定められている労働契約を有期労働契約といいます。
有期労働契約では、雇用期間が満了した時点で労働契約が終了するのが原則ですが、実際には期間満了後も引き続き同じ仕事を任させるということも珍しくありません。
そのような状況がある程度続くと、労働者側としてはその企業に長期間就労して収入が得られるという期待を抱くことになります。
それにもかかわらず、有期労働契約だからといって簡単に契約更新を
みなし労働時間制が認められた激レア事例ーMRと営業職の違いとはー【セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン事件・東京地裁令和4年3月30日判決・労経速2490号3頁】ー
労働基準法32条は労働者の健康確保の観点から1日8時間・週40時間労働の原則を定め、かつ、使用者に対して労働時間適正把握義務を課しています(労働安全衛生法66条の8の3及び同法施行規則52条の7の3参照)。
もっとも、例えば生命保険の外交員など、業職種によっては使用者側で労働者の行動を把握することが難しい場合もあります。
そういう場合、労働基準法38条の2は、労働時間の「みなし」のひとつとして
「厚生」と「労働」の深刻な矛盾ー訪問看護事業所等における緊急看護対応の待機時間に対する残業代を認めた事例【アルデバラン事件・横浜地裁令和3年2月18日判決】ー
以前、次のような記事で本来業務外の待機時間における労働時間性が問題となった事例を紹介しました。
以前のシステムメンテナンス事件では、結論として待機時間の労働時間性が否認されました。
ただ、その際、私は
との記載をしました。
そうしたところ、近時、訪問看護等に従事する看護師の待機時間が労働時間に当たるとして高額の残業代が認められたという裁判例が判例誌に掲載されました。
今回は、そのような事例