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ひとつなるもの すべてなるもの

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ひみの連載ストーリー
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#憑依

第236話 隠されていた本当の秘密

第236話 隠されていた本当の秘密

 毒づいていた。
来る日も来る日も浄化をしても、未だ私の子宮の奥底に憑依しているヤマタ先生の意識に、もういい加減鬱陶しさを募らせていた。

 もちろんこの教師の他にもいくつか憑依は残っていたが、スサナル先生との間にある『性』エネルギーをクリアに浄化しようとする度に、必ずといっていいほどヤマタ先生が表面へと浮かんできていた。

「もう!私があなたのお相手じゃないってことは嫌というほどわかってるでしょ

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第231話 巣離れの支度

第231話 巣離れの支度

 レッカーされた車の修理はまだ当面かかると、ディーラーからのそんな電話連絡を受けた。それに伴い初めてのあきらのバス通学が唐突に始まった。
 クラッチ(杖)があれば以前よりは長距離を歩けるようになっていたけど、荷物があると無いとでは身体的な負担が大幅に違うらしく、家と最寄りのバス停の間だけは私が背中にリュックを背負った。
 けれども私もあきらも二人共、こんなことを思っていた。

「いつか親子で離れて

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第224話 凍えた命、あたたかく港へ。

第224話 凍えた命、あたたかく港へ。

 あれ、誰だろう……。

 私に向けての『嫉妬』と同時に彼に向けての『怒り』の念。
 その日の夕方、食事の支度をしようと台所に立っていると、どこからか女性の意識が飛んでくる。そして気がつく。

 ああ、あの子か。

……今となっては懐かしい、あきらの卒業式の朝。
エレベーターで校舎を上がると廊下で見かけた光景に、あの時一瞬体が強張った。
 まるで恋人のような雰囲気の、スサナル先生と教え子の女の子。

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第199話 想い合う。支え合う。

第199話 想い合う。支え合う。

 その宇宙子さんとのセッション終盤、そろそろエネルギーを閉じようかと意識をこちらに戻す準備を始めた時に、家の電話が鳴り響いた。

 あっ、なんか電話来ちゃった。どうしよう……。

 ところが一瞬だけ狼狽えるも、お知らせのように2コールだけ鳴ると音はすぐに切れてしまった。そしてその瞬間に気がついた。

 そうか、この人だったのか……。

……

 いつからか、家に一人か、あるいはリビングに一人の時だ

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第175話 迷路

第175話 迷路

 もうこれ以上、けーことは深く関わらないようにしようと決めたばかりだったけど、深夜再びタケくんの意識がやってきたことで堪らず彼女に抗議のLINEを送りつけた。

「昨日の夜中、スサナル先生の意識に繋がろうとするたびに、タケくんが割って入るように飛んできた。
 “タケ。タケ。”って自分の名前のアピールを続けるから少し浄化しようとしたんだけど、そうすると今度はけーこの意識が私とタケくんを見にやってくる

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第174話 順風満帆・逆風満帆

第174話 順風満帆・逆風満帆

 春分のすぐ後、あきらの高校は春休みを迎えた。
朝夕の送り迎えから解放されるとその分集中して内観をすることができるのだが、それに伴ってもう一つ、厄介ごとがくっついているのがわかってしまった。

 あの日以来、タケくんのビジョンがしょっちゅう頻繁に現れる。あろうことかなんと、けーこのツインレイに憑依されてしまっていた。
 ヤマタ先生にしても今までクリアにしてきた他の男性たちにしても、気持ちをわかって

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第161話 誰にわかってほしかったの?

第161話 誰にわかってほしかったの?

 集合意識の闇に飲まれるとは一体どういう状態か。

 よく小学生の理科で行われる豆電球の実験を思い浮かべてみてほしい。用意するのは最低限、豆電球と乾電池と、それから導線とスイッチ。これらを直流に組み合わせ、スイッチを繋ぎ合わせると電球が点くという簡単な仕組み。

 そしてこの時、豆電球があなたで、乾電池が、あなたが持っている四次元の闇だとすると。
 浄化スイッチにフォーカスすることによって、四次元

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第160話 隣り合わせのマトリックス

第160話 隣り合わせのマトリックス

「ねぇけーこ、アンカー外すってどうすればいい?」

「いや今回は、建物の中に入っちゃえばそれでいいと思うよ。
それより行きたくねぇー。さっきからアウェー感が半端ねぇ。本っ当ひみはルンルンしてるよね。」

 高次元と自分たちとのやり取りの正誤は、向き合っていれば肌感覚として自ずと掴めるようになってくる。けーこがアウェー感を感じ、尚且つ私の足取りが軽い時。それは間違いなく“正解”していることを表してい

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第140話 鏡に映った自縄自縛

第140話 鏡に映った自縄自縛

(かがみにうつったじじょうじばく)

「……でね、『嫉妬ちゃん』のガムテープが剥がれたんだけど、そしたら本当はその下には、牙が生えてたんだよね。」

「おおマジか。……でもなんか牙っての、それわかる気がする。」

 ここのところ、私が一体何を視て何を浄化しているかを逐一あきらに報告することが、なんとなく日課になっていた。この子に話を聞いてもらえることで保っている部分もあった。
 スサナル先生に長い

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第134話 大丈夫。あなたもいつか必ず。

第134話 大丈夫。あなたもいつか必ず。

 話しかける。

「R、私がわかる?学校で見たことあるでしょ。あきらの母だよ。
あなたの苦しみが伝わってきたからお話をしにきたんだよ。」

「……あきらのおばさん?」

「そうだよ。私のことをわかってくれたのね。
うちね、親子で何でも話すから、あなたのこともあきらから聞いて知ってるの。
Rの想いがあきらに届かなくて、あなたが苦しんでること知ってるよ。」

 一体何度目の、Rに対する自己紹介になるだ

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第129話 「ただ、わかって欲しかった。」

第129話 「ただ、わかって欲しかった。」

「見せつけられてムカつくんだよっ!」

 私を介したヤマタ先生の、語気を荒げた声が響いた。

「いつもいつも、お前ら俺に見せつけやがって。
学校内で毎回イチャイチャくっつきやがって。」

 そんな『恨み』が次々出てくる。

 以前から子宮の右側に宿っていた憎悪の正体はこれかと思った。ここ数年、内科でも婦人科でも原因はわからず、炎症反応すらないのに異常な痛さを放っていたもの。すでに私の脳すら通さずに

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第128話 宇宙子さん

第128話 宇宙子さん

「初めましてー、ええとひみさん。うわぁ、凄いね。」

 黒いロングヘアに黒い服、そして耳には鮮やかなピアス。画面越しに対面したのは、圧倒的なパワーを放つ光の魔女、パラレル宇宙子さん。
 そのエネルギーに感化され、椅子に座ったままの私の体が弧を描いて揺れ続けると、奥から奥から闇が上へと抜けていく。
 トカゲとヤマタ先生からの総攻撃で生命力なんてすっからかんだった筈なのに、自然とヘラヘラ笑ってしまった

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第127話 その導きは闇の向こうに

第127話 その導きは闇の向こうに

 スーパーの買い物から戻る時、家の手前で歩道を歩くけーこの姿を発見した。

「けーこ!」

 少し窓を開けて手を振ると、右折して私道へと入る私を追いかけて彼女が付いてきてくれた。会話をするのは一か月か、下手したら二か月ぶりくらいになるだろうか。
 車を降りるとけーこはいきなり「ねぇひみ聞いてよ、どう思う?」と愚痴を吐いてきた。付き合いの長い友人からのお裾分けが、度を越しているという内容だった。

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第126話 滲み出る

第126話 滲み出る

 全国的に、医療機関も検査機関も逼迫していたその晩秋。高校再開から四か月も経って、ようやくあきらの健康診断の結果が返ってきた。

 半年以上にも及ぶ抗生剤の投与と共に、何度も手術を繰り返すたび医療用麻薬を摂取してきたあきらの身体は、内臓に時限爆弾を抱えているのとさほど変わらない状況だった。
 返却された結果を見て、「やはり」といった思いと「どうしよう」といった思いが重なった。
 中二、中三とも二次

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