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第127話 その導きは闇の向こうに



 スーパーの買い物から戻る時、家の手前で歩道を歩くけーこの姿を発見した。

「けーこ!」

 少し窓を開けて手を振ると、右折して私道へと入る私を追いかけて彼女が付いてきてくれた。会話をするのは一か月か、下手したら二か月ぶりくらいになるだろうか。
 車を降りるとけーこはいきなり「ねぇひみ聞いてよ、どう思う?」と愚痴を吐いてきた。付き合いの長い友人からのお裾分けが、度を越しているという内容だった。

 こんなにクサクサしてるのも珍しいなぁと思って聞いていたけど、ひと通り言いたいことを話せてすっきりしたのか、「え、ひみは?」と近況を聞かれた。

「私ね、今、ちょっと変わったものに憑依されてるの。けーこなら視えると思うけど何だかわかる?」

「あー、赤ちゃんの形してる。なんかピンクのちっちゃいのがいる。」

「なるほどね。もうそれ正解、なるほど。
……私ね、今トカゲに憑依されてるの。ヤマタ先生がレプティリアンだったみたいなんだけど、トカゲって確かに胎児の形してるもんね。」

「だからかー。ピヨって尻尾みたくなってるよ。え?ツンツンしていい?」

 どうぞご自由にと勧めると、けーこが意識でトカゲのことをつつきだし、その都度私の呼気で浄化されていく。

「おーおー怒ってる。コイツ紫色になった。」

 しばらく飽きずにトカゲを刺激して怒らせたのち、「またひみと久しぶりにご飯行きたいね。」と彼女に言われた。
 だけど先日、この状態で母に会いに出かけた時には少し具合も悪くなり、電車の中で呼気を我慢するのも大変で、正直もうちょっと落ち着いてからじゃないと厳しいかなと思った。

「お店入る時首からさ、ゲップが出ますって書いて、みんなに見えるように下げときなよ。」

 けーこは面白いアイディアだと思ったみたいで、気に入って何度も「いいじゃん書いときなよ。」と言っては笑ってくるけど、言われるたびに、私の心は冷めていった。

 そんなん絶対書く訳ないじゃん。

「じゃあねー、近々行こうねー。」

 そう言って去っていく彼女に対し、「うん、またねー。」と返事をしながら、この人と出かけることはもう無いなと思った。

……

 買った物を冷蔵庫にしまい、紅茶を淹れてひと息つく。
 食事の件は別として、けーこに会えたことでいい情報が聞けた。
 トカゲのサイズは数センチ。紫色になったところで、せいぜい五〜六センチだろうか。それならば、こちらが本気で闘えば、なんとかなるかもしれない。


 洗面台の、鏡の前。
深呼吸をしてから低い声が呼び出す。

「トカゲ。」

 反応して、顔の右側が黒味を帯びる。威嚇の舌がチロチロ出てくる。
 全身全霊を込めての、トカゲとの一騎打ち。全神経を集中して、怒りと共にありったけの光をぶつける。

 五分……まだまだ。十分……さすがにあちこち痺れてきていた。お互い声も出ず、松果体が悲鳴をあげているのがわかる。

 それほどのサイズ感ならどうにかなると思ったのに、完全に平行線。ちょっとでも気を抜いたら飲まれてしまうと思うと負ける訳にはいかなかった。

 さらに数分。
突如プツンと糸が切れた。極限までの集中が途切れた瞬間、ヤツに負けたと思った。無防備になった途端にどんなに痛めつけられるかわからない。

 ところが、足の先から上に向かって順番に力が抜けていくと、フラッと全てが脱力した。床の上へと倒れ込むと、向こうもそれ以上は攻撃してくることは無かった。

……まさか互角。

 倒れた頭上には洗濯カゴに、畳んだタオルが入っていた。横になったまま、腕だけでカゴをひっくり返すと手探りでタオルを引っ張り出して、弛緩しきった口元に当てた。涎が止まらなかった。

 どのくらいの時間、冷たい床に転がっていただろう。普通に生活していて、脱衣所の天井なんて、こんなに眺めたことはない。

 自分一人では限界だった。もうこれ以上、為す術がなかった。こんなバケモノを相手にしなきゃいけないことに、過去の自分のことを呪った。私の精神がおかしな発狂をしていた。


 その夕方、ボロボロになりながら、ツインレイに取り組む者の憑依を闘い抜ける手段を探した。

 ヒットした。たぶんこの人。
画面の向こう側にいたのは、現代の白魔女その人だった。



written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

⭐︎⭐︎⭐︎

新月でした。
昨日、けーこと出掛けて帰宅して、お風呂からあがってそのまま脱衣所で浄化してたんですが、

「あ、やばい。どこかにつかまったほうがいいな」って思った次の瞬間には意識が飛んで、気づいたら洗濯機に眉毛の横を強打してました。そのあとしばらく置かれた状況がわからなくなるという……。私にしては珍しく、色々と現実面で出てきました。

夜はまぶたの上に眼球一個分ボコって腫れてて、起きたらやっぱまぶた変な色になっちゃったんだけどね。
前髪で隠れるしモウマンタイ(無問題)笑
ハイヤーさんもこれで合ってるって言ってるっぽいのでメイウェンティ(没問題)笑
腫れてる違和感と、クラウンチャクラから抜けてくから、その時に違和感はあるけどね。

ただね、彼のレイヤーとはよく指文字会話するんだけど(←ん?笑)、
あるレイヤーからは、「もう もう もう もう」ってめっちゃ心配&怒られて、なに?牛?って思ったのと、
別のレイヤーからは「のんびり」って言われた笑

なんか多分、首とか腰のメンテナンスのための荒療治らしいんだけど、荒療治すぎて笑ってしまうよね。

…という、まさかの本編に続き洗面所トークをするという流れ。
浄化って、脳みそ一気に高血圧になってから低血圧になるでしょ?(←え?笑)今回はその高血圧に向かう上り坂の途中だったから驚いたよ!みなさんは、浄化はちゃんと座ってやるか、せめてどこかに掴まってやってくださいね!

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→第128話 宇宙子さん

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