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マルセイユ5 浮遊する建築
コルビュジェが唱えた「近代建築の5原則」のなかで、私が最も好きなアイデアは「ピロティ」だ。水平連続窓や自由な平面、自由なファサードといった、技術の進歩で可能になったデザイン上の自由だけでなく、ピロティからは都市問題に対する強い願いを見出すことができる。建築を浮かせることで、地上をパブリックに開放する。その発想が好きだ。都会では、建築物に大地という大地を侵食され、屋外で人々が過ごせる場所は、隙間を縫
もっとみる【旅行記】マルセイユ3 坂とマリアと
地下鉄のVieux-Port - Hôtel de Ville駅の目の前に広がる湾は、旧港と呼ばれるマルセイユ観光の中心地だ。Vieux-Portが直訳するとOld Port、つまり古い港だ。幅300メートルくらいで、対岸が目の前に見える、さほど大きくない入り江だ。港町という割に、小型のボートばかりが停泊した小さな港だと思ったが、あくまで古い港であって、大型の船が停泊できる港は、この湾の外側の別の
もっとみる【旅行記】マルセイユ2 オールド・レイディー
食事から戻ると、部屋の住人が増えていた。私の母親よりも年上だろうか。日本人からすると、欧米の女性は実年齢よりも高齢に見えるので分からないが、60代か70代くらいに見えた。真っ赤なTシャツを着た、恰幅の良い女性だった。使い込まれた小さなキャリーが、ちょこんとベッド脇に置いてあり、分厚いペーパーバックの本がベッドに転がっていた。
私の中に、ホステルはお金の無い若者が泊まる所、という先入観があったので
【旅行記】マルセイユ1 屋根裏
バルセロナからバスで8時間、国境を越えてフランスのマルセイユに来た。特に目的は無く、耳覚えのある街だから、そして陸路での移動で無難な位置にあったから選んだ街で、次の目的地までの繋ぎのつもりだった。自身初めてのフランスがマルセイユからスタートするとは思っていなかった。人生は予測できないものだ。
バルセロナの宿は半地下だったが、マルセイユの宿は打って変わり屋根裏だった。2フロアのメゾネットタイプで、
【旅行記】バルセロナ4 ガウディと虹色の夢
宿に荷物を置いたとき、既にバルセロナは夕方だったので、その日は街をぶらぶら歩きながら、サグラダ・ファミリア、カサ・ミラ、カサ・バトリョの位置を確認するだけにした。次の日、カサ・ミラとカサ・バトリョへ行き、三日目は友人の勧めで郊外のコロニア・グエルへ。最後の四日目にサグラダ・ファミリアとグエル公園に行った。
バトリョ邸の中に入った時、私の中のガウディ感は大きく塗り替えられた。想像よりもずっと消費的
【旅行記】バルセロナ1 サマー・ブレイク
バルセロナを訪れようと思ったのは、近くの空港から安くで行けるチケットを見つけたからだった。友人に教えてもらったKayakというウェブサイトで、出発の空港とおおよその出発時期を指定すると、各都市までの最安のチケット料金を地図上に表示させることができる。旅行したい時期は決まっているが、どこに行くか決まっていない人間にとって、どこに行くのが安いか、高いかが分かる便利なサイトだ。
その時見つけたのは、