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【旅行記】マルセイユ4 コルビュジェとユニテ

マルセイユに立ち寄ると決めた時、私は「なぜか名前を知っている街だから名所なのだろう」くらいに思っていた。けれども、海に面した港町という基本的なことすら実際は知らなかった。ではなぜ妙に印象に残っているのか。ヒントを探しにWikipediaへ向かったら、すぐに答えは見つかった。ユニテ・ダビダシオンだった。

近代建築の巨匠ル・コルビュジェ、彼の都市構想「輝く都市」に見られる都市への理想が詰まった集合住宅作品だ。ユニテ・ダビダシオンは彼によるいくつかの集合住宅作品の総称で、マルセイユにあるものは一番最初に完成したものだ。完成度が最も高いと評判で、実際一番有名だ。残りはフランスのいくつかの都市の他、ベルリンにもあるらしい。ドイツに里帰りしているクラスメイトが、先日ベルリンのユニテをインスタに上げていた。

私がマルセイユの名を知っていたのは、近代建築関係の本で学生時代に何度も都市の名を見ていたからだろう。何がある街かちゃんと記憶に残っていなかったのは、私があまりコルビュジェに興味がなかったからだろう。コルビュジェは近代建築界に与えた影響の大きさという意味で、建築界の超重要人物だが、彼のデザインが好きか嫌いかというのは別の問題だ。私はこれといって好きでも嫌いでもなく、コルビュジェには特に惹かれるキッカケがなかった。

しかし私がコルビュジェに惹かれなかったのは、彼の作品を殆ど生で見ていないからかもしれない。上野の国立西洋美術館だけでコルビュジェを好きになれるほど、私は建築に惚れっぽいタイプではなかった。ただ、どんなに写真や図面で見ても、その身で体験するまでは建築の本当の良さは分からないものだ。うっかり近くまで来たのも何かの縁ということで、ユニテの見学ツアーを早速予約した。

見学ツアーは、マルセイユの観光サイトから予約できた。ツアーに申し込まずとも、ある程度見学は可能らしいが、10ユーロでツアーに参加すれば居室まで見学ができる。ユニテは居室がメゾネット構造になっているのが特徴のひとつなので、そこを見学したいのが正直なところだ。英語のツアーは土曜日のみの開催で、滞在期間の都合から選択できなかった。ただ、フランス語ならば日曜を除くほぼ毎日、ツアー自体は開催されていた。言葉は分からなくとも、内部を見学できれば充分と思い、私は平日のツアーに申し込んだ。

ユニテまでは、路線バスでアクセス可能だった。旧港近くのホステルに滞在していた私は、地下鉄M1線でCastellane駅まで2駅乗り、そこから21番のバスに乗った。バス停Le Corbusier(ル・コルビュジェ)がユニテの目の前のバス停だ。Googleマップでルート検索をすると、一つ前のバス停を提案されるのだが、Le Corbusierの方が真正面に停まるし、なんと言っても名前が分かりやすい。コルビュジェ目当ての観光客を、一瞬も迷わせない直球な名前だ。

バスを降りると、教科書や写真集で何度も見た有名なファサードがすぐに目に飛び込んできた。ああ、大きい。この迫りくるスケール感こそ、写真や図面では体感できないものだ。偉大なるモダニストの素晴らしさが、今日は感じられるかもしれない。そんな期待が、やっと湧いてきた。

【今回利用したWEBサイト】
・Office de tourisme et des congrès de Marseille公式サイト(マルセイユ観光局及び議会)
http://www.marseille-tourisme.com/
※選択で日本語表示もできますが、全てのコンテンツが綺麗に対応しているわけではありません。

・ユニテ・ダビダシオン見学の予約は下記
http://resa.marseille-tourisme.com/en/event/a820194/cité-radieuse-le-corbusier-tours-in-english-only-on-saturd/showdetails
※英語ツアーは土曜日10時のみのよう

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