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逃げる(躊躇なく) ~当たり前過ぎて意識しなくなっていること

 義理の父の話。

 柔道、合気道、空手といった格闘技からテニス、バトミントン、野球とスポーツ万能で、かつ楽しむタイプ。当然体格は縦横ともにがっしりしていて、いかにもという雰囲気を醸し出していらっしゃいました。二輪車やスポーツカーも乗られていました。通勤も一時期は自分のスポーツカーでされていました。
 仕事も固く基幹産業で、インフラの要を担うメーカー。本来デスクワークなのに現場にも出で行く方でした。サラリーマン最後の仕上げは安全と、ヘルメットを被って結構日焼けしていました。

 私の父とは全く逆のタイプでした。ですから得るところ大。お酒を嗜む方でしたので、一献と言っていろいろな別世界の話をして頂きました。

 例えば、
「金属工学を学んだならテルミット反応って知ってるよな。」
「···」
(恥ずかしながら、金属工学と言っても表面物理学専攻なので冶金は頭に入っていなかった)

「この前、事故が有って···」
と、事故の仔細を教えて下さいました。当時は、鉄鋼会社の研究所の研究員でしたので、(恥をかかせまいと配慮頂き)知ってる前提で話をして頂きました。知識と実践が整理されて頭に入って居る方でした。また、安全には、特に拘りが有った方でした。

 ということで本題。
 お酒を頂きながらの話で最も印象に残っているのは、以下。

 「工事で、クレーンで吊るされた資材を建物の屋上に降ろす時、突風で資材が回転したことがあってな。」
と、一呼吸、
「〇〇さんならどうする?」
(〇〇は私の名前、何時もそうよばれました。私の母校のお作法なのですが、ご存知だったのかそれともNativeか。)
 話の途中に質問を挟むのが、義父の流儀なのですが、
さて何て答えようか。スポーツマンだし、現場に精通してるし、何か思いもよらないソリューションがあるのか?と頭はフル回転。
 それを察してか、おもむろに。

「逃げる。」
「躊躇なく。」

 やられた~。王道の答えか。
でも、一生忘れない、心に刻まれた一言でした。

 流石!

蛇足
 当たり前ですが、
「工事で、クレーンで吊るされた資材を建物の屋上に降ろす時、突風で資材が回転したことがあってな。」
というのは1つの例で、
「一般に危険なことがあったらカッコつけずに躊躇なく逃げろ。それは卑怯でも、弱腰でもない正しい選択。」
というメッセージと、理解しています。

超蛇足
 こちらも宜しけば…

 



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