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ショートショート#バッティングセンターと女
君どこの球団が好き?
ああ、解った。
そのフォーム、ヤクルトの何やっけ、今年話題になった子のに似とるね。
けどね、この街に住んでるんやったら、とりあえず阪神ファンや言うといたほうがいいよ。
何?カッコいい子が少ない?
君わかっていないなあ、みんな実は脱いだら凄いねんで、知らんけど。
僕は今日もバットを構える彼女に話しかける。
バットを振る度、揺れる1つに結んだ長い髪。愛嬌のある丸い目。
彼女は目
ショートショート「明日は大学祭(終)#幹部」
おでんの味が決まらない。
ある部員の地元ではおでんにショウガ醤油をつけるから、基本の味は薄目がいいというし、別の部員は実家では味噌を入れて煮込むからそうしてくれという。
ほかにも、鰹節をまぶして食べるからそれを想定しろとか、田楽味噌をつけたいから用意しろとか、ちくわじゃなくてちくわぶを入れろとか、牛スジもいいが鶏肉も入れろとか。
大学というところは全国津々浦々から人が集まるので、何か料理をして食
ショートショート「明日は大学祭#会計」
私はこの街での暮らしを気に入っている。
地元出身の子たちは、地味だし田舎なのに何がいいのって言うけど、私にとってはそこがいい。
人は少なからず多からず。大人しくて特に面白いことも言わない。大きな工場地帯はあるけど、大学の近くまでは煙は届かない。
アルバイトは大学の近くのファミレスで厨房を担当している。表に出たくない私にとってはありがたい仕事だ。まかないも美味しい。
サークルだけは友達の誘いでうっ
ショートショート「明日は大学祭#設備」
お姫様だっことかあんなの何がいいんだと思っていたけど、いざされてみると悪くないと僕が思ったのは高校3年生の秋だった。
学校の帰り道にQ大学の近くを歩いていた。
その日、Q大学は大学祭で僕は人いきれのなかを一人歩いていた。
夕方から夜に近づく時で、僕はちょっとドキドキしていた。
少し年上な人たちがこれから遊びにいくために楽しそうに歩いていて自分もその仲間入りをしたような気分を味わっていた。
ひとき
ショートショート「明日は大学祭#広報」
諒太から電話があったのは午後九時過ぎだった。
私はパンフレットをスポンサーや広告提供会社に配り終え、いったん帰宅しようとしているところだった。
「大変だよ、梨名」
「何が?」
「目黒佐月がごねて打ち合わせをしないんだよ」
目黒佐月とは、大学祭のライブで歌う予定のアーティストだ。広報はパンフレットを作ったり、SNSで発信したり、地元のラジオなどメディアに出て大学祭を宣伝するだけではなく、ライブも担当
ショートショート「明日は大学祭#企画」
ー明日のミスコンなんだけど、私、熱があるみたいで。もしかしてコロナかもしれない。出れなかったらごめんね。
「おいおいおいおいおい」
大学祭実行委員会の大会議室に俺の声が響き渡った。
時刻はあと5分で零時だった。
「何、どうしたの?」
清音は段ボールをカッターナイフで切る手を止めた。
「鎌田七緒がコロナになったかもしれないって」
「え?明日どうすんの」
「出れなかったらごめんね、だって」
「っかー
ショートショート「月下美人」
「それで、会社はやめたの、結局」
「ああ」
兄の風吾は家に帰ると、一番になぜか俺の部屋に来る。
彼は五年前に大学進学を機に家を出た。
夏休みなど大きな休みがない限り家には帰ってこない。
その兄が何て事のない平日の夜に実家に帰ってきた。
両親は旅行中で家には俺一人だった。
彼女の優未が泊まりに来る予定のところに兄がやってきたのだ。
俺は小一時間くらい、兄が大学を出てすぐに就職した会社について話を聞い