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  • 2024年映画感想

    2024年に書いた映画の感想。

  • 2023年映画感想

    2023年公開作品の感想です。

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2023年映画ベスト10

2023年映画ベスト10 01 The Son/息子 02 TAR/ター 03 BLUE GIANT 04 ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック! 05 別れる決心 06 エンパイア・オブ・ライト 0…

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5か月前
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2024年映画感想No.12 告白 コンフェッション ※ネタバレあり

ハイコンセプトなあらすじと監督の作家性の融合 シネクイントにて鑑賞。 まずは「死ぬと思ったから昔の重たい罪を告白したのに生き延びてしまったので殺し合いになってし…

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27分前
1

2024年映画感想No.11 若武者 ※ネタバレあり

二ノ宮隆太郎監督らしい厭世と自己嫌悪 ユーロスペースにて鑑賞。 他の二ノ宮隆太郎監督作同様、強烈な厭世感と自己嫌悪に満ち満ちた登場人物たちが描かれている。世界が…

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7日前
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2024年映画感想No.10 マイ・スイート・ハニー(原題『Honey Sweet』) ※ネタバレあり

キャスティングに必然性のある物語 MOVIX京都にて鑑賞。 ユ・ヘジンが主演でラブコメをやることで、ルッキズムを含めた「男らしさ」を批評的に再定義してみせるような恋愛…

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1か月前
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2024年映画感想No.9 パスト ライブス/再会(原題『Past Lives』 ※ネタバレあり

パーソナルな物語を巡る眼差しの導入 TOHOシネマズ日比谷にて鑑賞。 人にはわからない登場人物たちのパーソナルな感情、関係性を巡る物語だということを「傍目からみて関…

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2か月前
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2024年映画感想No.8 ネクスト・ゴール・ウィンズ(原題『Next Goal Wins』 ※ネタバレあり

酷い状況のサッカーアメリカ領サモア代表 TOHOシネマズ川崎にて鑑賞。タイカ・ワイティティ監督新作。 冒頭からアメリカ領サモアのサッカー代表が2001年のW杯大陸間予選で…

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3か月前
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2024年映画感想No.7:夜明けのすべて ※ネタバレあり

苦しみを抱える人の居場所を探す物語 109シネマズ川崎にて鑑賞。 日常を上手く進めなくなってしまったことに苦しんでいる人たちがそれぞれの前進に辿り着くまでを描きなが…

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4か月前
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2024年映画感想No.6:ボーはおそれている(原題『Beau is afraid) ※ネタバレあり

「家族という呪い」についての地獄めぐり TOHOシネマズ川崎にて鑑賞。 「家族という呪い」という過去のアリ・アスター監督作同様の主題を煮詰めた物語であり、最終的には…

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4か月前
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2024年映画感想No.5:ビヨンド・ユートピア 脱北 ※ネタバレあり

シネリーブル池袋にて鑑賞。 映画の序盤は脱北者を支援している韓国人牧師さんの取材から「脱北とはこのように行われています」ということの説明するような内容なのだけど…

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4か月前
4

2024年映画感想No.4:ゴールデンカムイ ※ネタバレあり

アクション原理主義な構成と差し込まれる暴力描写 109シネマズ川崎にて鑑賞。原作未読。 各キャラクターの背景や価値観の対立といったドラマ的な厚みになる要素はほぼほぼ…

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5か月前
3

2024年映画感想No.3:サン・セバスチャンへ、ようこそ ※ネタバレあり

ウディ・アレン映画に見る業の肯定 シネリーブル池袋にて鑑賞。 いつものウディ・アレン作品と同じように「俺、もう男として終わってるのかも、、、」という自信を失った…

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5か月前

2024年映画感想No.2:ある閉ざされた雪の山荘で ※ネタバレあり

どこまでがオーディションの範疇なのかがわからない展開の面白さ TOHOシネマズ川崎にて鑑賞。 舞台の最終オーディションとして集められた7人の男女が泊まっている貸別荘で…

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5か月前
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2024年映画感想No.1:市子 ※ネタバレあり

悪女として語られる市子の苦しみ キネカ大森にて鑑賞。 「プロポーズした翌日に失踪した彼女の足跡を追う」というあらすじの強さを活かしたミステリー的な構成が序盤から…

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5か月前
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2023年映画感想No.91:魔術(原題『Brujeria』 ※ネタバレあり

丸の内TOEIにて鑑賞。東京国際映画祭2023ワールドフォーカス部門(第20回ラテンビート映画祭 in TIFF)。プロデューサーはパブロ・ラライン。 虐げる側の人間が抱える「い…

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6か月前
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2023年映画感想No.90:ファースト・カウ(原題『First cow』 ※ネタバレあり

寄る辺なさを抱える登場人物たちによるポスト西部劇 シネリーブル池袋にて鑑賞。 「鳥なら巣 蜘蛛なら糸 人間なら友情」という冒頭の引用句から、心の居場所についての映…

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6か月前
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2023年映画感想No.89:愛にイナズマ ※ネタバレあり

石井監督の近作に共通する「クソな社会」と「物を作る意味」というテーマ キネカ大森にて鑑賞。 コロナ禍ということを意識的に描いた『茜色に焼かれる』以降の石井監督作…

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6か月前
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2023年映画ベスト10

2023年映画ベスト10

2023年映画ベスト10
01 The Son/息子
02 TAR/ター
03 BLUE GIANT
04 ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!
05 別れる決心
06 エンパイア・オブ・ライト
07 aftersun/アフターサン
08 AIR/エア
09 ファースト・カウ
10 カード・カウンター

The Son/息子

エゴイスティックな父権の抑圧によって深刻化していく青年の

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2024年映画感想No.12 告白 コンフェッション ※ネタバレあり

2024年映画感想No.12 告白 コンフェッション ※ネタバレあり

ハイコンセプトなあらすじと監督の作家性の融合

シネクイントにて鑑賞。
まずは「死ぬと思ったから昔の重たい罪を告白したのに生き延びてしまったので殺し合いになってしまう」というジャンル映画的な強いあらすじがあり、その中に「人生の停滞」を巡る主題という山下敦弘監督の作家性もしっかり感じられる密度の高い内容。ほぼワンシチュエーションの二人芝居というミニマムな設定、74分というタイトな構成ながらとても見応

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2024年映画感想No.11 若武者 ※ネタバレあり

2024年映画感想No.11 若武者 ※ネタバレあり

二ノ宮隆太郎監督らしい厭世と自己嫌悪

ユーロスペースにて鑑賞。
他の二ノ宮隆太郎監督作同様、強烈な厭世感と自己嫌悪に満ち満ちた登場人物たちが描かれている。世界がおかしいから自分の人生が壊れているのか、自分が壊れているからこの世界もおかしいのか、その行き詰まりを解決する方法が見つけられないことで破滅の予感だけが膨らんでいく危うい若さが心に残る。
胸の内側にパンパンに憎しみを抱えた坂東龍汰演じる主人

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2024年映画感想No.10 マイ・スイート・ハニー(原題『Honey Sweet』) ※ネタバレあり

2024年映画感想No.10 マイ・スイート・ハニー(原題『Honey Sweet』) ※ネタバレあり

キャスティングに必然性のある物語

MOVIX京都にて鑑賞。
ユ・ヘジンが主演でラブコメをやることで、ルッキズムを含めた「男らしさ」を批評的に再定義してみせるような恋愛描写で展開する物語になっているところが面白かった。
主人公もヒロインも家庭内のマチズモ的な価値観によって人生の犠牲を強いられているという設定があり、そんな二人がお互いの存在によって抱えていた欠落を再生して他者と生きる幸せを再構築して

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2024年映画感想No.9 パスト ライブス/再会(原題『Past Lives』 ※ネタバレあり

2024年映画感想No.9 パスト ライブス/再会(原題『Past Lives』 ※ネタバレあり

パーソナルな物語を巡る眼差しの導入

TOHOシネマズ日比谷にて鑑賞。
人にはわからない登場人物たちのパーソナルな感情、関係性を巡る物語だということを「傍目からみて関係性が理解できない」という他者からの目線で示すファーストシーンからグッと引き込まれる。パッと見てわかるほど単純でも、一言で説明できるほど簡単でもない。唯一選ばれた可能性である現在として男女が並んで語らう姿があり、そこから過去を遡るから

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2024年映画感想No.8 ネクスト・ゴール・ウィンズ(原題『Next Goal Wins』 ※ネタバレあり

2024年映画感想No.8 ネクスト・ゴール・ウィンズ(原題『Next Goal Wins』 ※ネタバレあり

酷い状況のサッカーアメリカ領サモア代表

TOHOシネマズ川崎にて鑑賞。タイカ・ワイティティ監督新作。
冒頭からアメリカ領サモアのサッカー代表が2001年のW杯大陸間予選でオーストラリアに31-0と歴史的大敗を喫する映像があまりに悲惨で笑ってしまうし、その出来事を経て10年後にさらに酷くなっている代表チームが出てくることで「全然悲劇を乗り越えようとしてない人々」というコメディとして遠慮なく笑える設

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2024年映画感想No.7:夜明けのすべて ※ネタバレあり

2024年映画感想No.7:夜明けのすべて ※ネタバレあり

苦しみを抱える人の居場所を探す物語

109シネマズ川崎にて鑑賞。
日常を上手く進めなくなってしまったことに苦しんでいる人たちがそれぞれの前進に辿り着くまでを描きながら、同時にこの星は常に動き続けているのだから自力で前に進めない時もあなたは前に進んでいるんだと優しく包み込むような物語だった。

藤沢さん〜社会に順応できなくなることの苦しさ

上白石萌音演じる藤沢さんの日常がなんとかならなくなってし

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2024年映画感想No.6:ボーはおそれている(原題『Beau is afraid) ※ネタバレあり

2024年映画感想No.6:ボーはおそれている(原題『Beau is afraid) ※ネタバレあり

「家族という呪い」についての地獄めぐり

TOHOシネマズ川崎にて鑑賞。
「家族という呪い」という過去のアリ・アスター監督作同様の主題を煮詰めた物語であり、最終的にはきっちり「最初から詰んでました」となるところまで相変わらずアリ・アスター印の絶望が堪能できる一作だった。
ボーが生まれる瞬間の主観ショットを思わせるファーストカットから彼の不幸は始まっているのだけど、そんな羊水発の因果が最終的には水の

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2024年映画感想No.5:ビヨンド・ユートピア 脱北 ※ネタバレあり

2024年映画感想No.5:ビヨンド・ユートピア 脱北 ※ネタバレあり

シネリーブル池袋にて鑑賞。
映画の序盤は脱北者を支援している韓国人牧師さんの取材から「脱北とはこのように行われています」ということの説明するような内容なのだけど、大変なんだろうとぼんやり認識していたことが改めてどれだけ大変かを具体的に実感させられる。北朝鮮と中国の国境の状況や計画段階の連絡先の信用性、実行のタイミング、国境を越えてから待っている困難や一度の失敗で全てを失う怖さなど、北朝鮮からの亡命

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2024年映画感想No.4:ゴールデンカムイ ※ネタバレあり

2024年映画感想No.4:ゴールデンカムイ ※ネタバレあり

アクション原理主義な構成と差し込まれる暴力描写

109シネマズ川崎にて鑑賞。原作未読。
各キャラクターの背景や価値観の対立といったドラマ的な厚みになる要素はほぼほぼ次作以降に丸投げで、実質登場人物とマクガフィンの設定の紹介しかしていないような内容だと思うのだけど、アクションが途切れないエンタメモリモリの構成が風呂敷を広げるだけの話に観客を楽しませる推進力を作り出していると思う。

冒頭の203高

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2024年映画感想No.3:サン・セバスチャンへ、ようこそ ※ネタバレあり

2024年映画感想No.3:サン・セバスチャンへ、ようこそ ※ネタバレあり

ウディ・アレン映画に見る業の肯定

シネリーブル池袋にて鑑賞。
いつものウディ・アレン作品と同じように「俺、もう男として終わってるのかも、、、」という自信を失った男性主人公が新しいロマンスを通じて人生を取り戻そうとする話で、相変わらずウディ・アレンは惨めな自分に残された最後の居場所として映画撮ってる人なんだなあと感じる作品だった。
幸せになれなかった過去の恋愛や自身の情けなさといった業も映画にする

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2024年映画感想No.2:ある閉ざされた雪の山荘で ※ネタバレあり

2024年映画感想No.2:ある閉ざされた雪の山荘で ※ネタバレあり

どこまでがオーディションの範疇なのかがわからない展開の面白さ

TOHOシネマズ川崎にて鑑賞。
舞台の最終オーディションとして集められた7人の男女が泊まっている貸別荘で起こる殺人事件を描く。7人全員が主役級の役者さんで、キャスティング見ただけでは全員に殺される可能性も真犯人の可能性も考えられるのが良いバランスの配役だと思った。

4日間のオーディションの内容になぞらえて実際に殺人事件が起きているの

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2024年映画感想No.1:市子 ※ネタバレあり

2024年映画感想No.1:市子 ※ネタバレあり

悪女として語られる市子の苦しみ

キネカ大森にて鑑賞。
「プロポーズした翌日に失踪した彼女の足跡を追う」というあらすじの強さを活かしたミステリー的な構成が序盤から物語にグッと引き込む仕掛けとして素晴らしかった。
市子という人物について彼女の人生のそれぞれの時期に関わりがあった人物たちの証言から浮かび上がらせるような内容なのだけど、抱えているものについて徐々に見えてくるような構成、その断片性自体に真

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2023年映画感想No.91:魔術(原題『Brujeria』 ※ネタバレあり

2023年映画感想No.91:魔術(原題『Brujeria』 ※ネタバレあり

丸の内TOEIにて鑑賞。東京国際映画祭2023ワールドフォーカス部門(第20回ラテンビート映画祭 in TIFF)。プロデューサーはパブロ・ラライン。

虐げる側の人間が抱える「いつか報復されるんじゃないか」という不安が加害を加速させるトリガーになるという物語でいうと今年公開された『福田村事件』でも鋭く描かれていたけれど、1880年のチリが舞台の本作の根底にもドイツ人入植者たちによって支配、搾取さ

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2023年映画感想No.90:ファースト・カウ(原題『First cow』 ※ネタバレあり

2023年映画感想No.90:ファースト・カウ(原題『First cow』 ※ネタバレあり

寄る辺なさを抱える登場人物たちによるポスト西部劇

シネリーブル池袋にて鑑賞。
「鳥なら巣 蜘蛛なら糸 人間なら友情」という冒頭の引用句から、心の居場所についての映画であることが予感されているように感じた。続くファーストカットの川に浮かぶ貿易船がゆっくりと画面を横切るショットは、根を張る場所を持たない登場人物たちの物語に響いているように映る。
ケリー・ライカート監督の映画では自分がこの世界において

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2023年映画感想No.89:愛にイナズマ ※ネタバレあり

2023年映画感想No.89:愛にイナズマ ※ネタバレあり

石井監督の近作に共通する「クソな社会」と「物を作る意味」というテーマ

キネカ大森にて鑑賞。
コロナ禍ということを意識的に描いた『茜色に焼かれる』以降の石井監督作品はどれも「クソな社会」と「物を作る意味」を改めて明確に描こうとしているように感じる。『愛にイナズマ』でも前半の社会構造の話と後半の個人的な創作の話で違うトーンの物語になるという歪な構成すら主人公の創作にとっては必然であり、それを抜きにし

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