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    2024年に書いた映画の感想。

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    2023年公開作品の感想です。

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2023年映画ベスト10

2023年映画ベスト10 01 The Son/息子 02 TAR/ター 03 BLUE GIANT 04 ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック! 05 別れる決心 06 エンパイア・オブ・ライト 07 aftersun/アフターサン 08 AIR/エア 09 ファースト・カウ 10 カード・カウンター The Son/息子 エゴイスティックな父権の抑圧によって深刻化していく青年の苦しみを「理解できない側の視点」で描く語り口の鋭さ。欠落感を抱えて生きることがい

    • 2024年映画感想No.7:夜明けのすべて ※ネタバレあり

      苦しみを抱える人の居場所を探す物語 109シネマズ川崎にて鑑賞。 日常を上手く進めなくなってしまったことに苦しんでいる人たちがそれぞれの前進に辿り着くまでを描きながら、同時にこの星は常に動き続けているのだから自力で前に進めない時もあなたは前に進んでいるんだと優しく包み込むような物語だった。 藤沢さん〜社会に順応できなくなることの苦しさ 上白石萌音演じる藤沢さんの日常がなんとかならなくなってしまう冒頭の描写から観ていてとても辛い。 一つバランスが崩れ、その上手くいかなさを

      • 2024年映画感想No.6:ボーはおそれている(原題『Beau is afraid) ※ネタバレあり

        「家族という呪い」についての地獄めぐり TOHOシネマズ川崎にて鑑賞。 「家族という呪い」という過去のアリ・アスター監督作同様の主題を煮詰めた物語であり、最終的にはきっちり「最初から詰んでました」となるところまで相変わらずアリ・アスター印の絶望が堪能できる一作だった。 ボーが生まれる瞬間の主観ショットを思わせるファーストカットから彼の不幸は始まっているのだけど、そんな羊水発の因果が最終的には水の真ん中で母親に裁かれる運命までを辿ることを思うと結局ボーは最初から詰んでいたかの

        • 2024年映画感想No.5:ビヨンド・ユートピア 脱北 ※ネタバレあり

          シネリーブル池袋にて鑑賞。 映画の序盤は脱北者を支援している韓国人牧師さんの取材から「脱北とはこのように行われています」ということの説明するような内容なのだけど、大変なんだろうとぼんやり認識していたことが改めてどれだけ大変かを具体的に実感させられる。北朝鮮と中国の国境の状況や計画段階の連絡先の信用性、実行のタイミング、国境を越えてから待っている困難や一度の失敗で全てを失う怖さなど、北朝鮮からの亡命がいかに綱渡りで難しいかというこの後のサスペンスの丁寧な前フリになっている。 脱

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          2024年映画感想No.4:ゴールデンカムイ ※ネタバレあり

          アクション原理主義な構成と差し込まれる暴力描写 109シネマズ川崎にて鑑賞。原作未読。 各キャラクターの背景や価値観の対立といったドラマ的な厚みになる要素はほぼほぼ次作以降に丸投げで、実質登場人物とマクガフィンの設定の紹介しかしていないような内容だと思うのだけど、アクションが途切れないエンタメモリモリの構成が風呂敷を広げるだけの話に観客を楽しませる推進力を作り出していると思う。 冒頭の203高地の戦闘シーンがこの映画の画力を宣言するような場面になっていて、物量的な絵の強さ

          2024年映画感想No.4:ゴールデンカムイ ※ネタバレあり

          2024年映画感想No.3:サン・セバスチャンへ、ようこそ ※ネタバレあり

          ウディ・アレン映画に見る業の肯定 シネリーブル池袋にて鑑賞。 いつものウディ・アレン作品と同じように「俺、もう男として終わってるのかも、、、」という自信を失った男性主人公が新しいロマンスを通じて人生を取り戻そうとする話で、相変わらずウディ・アレンは惨めな自分に残された最後の居場所として映画撮ってる人なんだなあと感じる作品だった。 幸せになれなかった過去の恋愛や自身の情けなさといった業も映画にすることでかろうじて意味を持たせられると信じたいんだろうと思うし、そういう「俺は本当

          2024年映画感想No.3:サン・セバスチャンへ、ようこそ ※ネタバレあり

          2024年映画感想No.2:ある閉ざされた雪の山荘で ※ネタバレあり

          どこまでがオーディションの範疇なのかがわからない展開の面白さ TOHOシネマズ川崎にて鑑賞。 舞台の最終オーディションとして集められた7人の男女が泊まっている貸別荘で起こる殺人事件を描く。7人全員が主役級の役者さんで、キャスティング見ただけでは全員に殺される可能性も真犯人の可能性も考えられるのが良いバランスの配役だと思った。 4日間のオーディションの内容になぞらえて実際に殺人事件が起きているのではないか、という展開になっていくのだけど、果たして本当に事件が起きているのか、

          2024年映画感想No.2:ある閉ざされた雪の山荘で ※ネタバレあり

          2024年映画感想No.1:市子 ※ネタバレあり

          悪女として語られる市子の苦しみ キネカ大森にて鑑賞。 「プロポーズした翌日に失踪した彼女の足跡を追う」というあらすじの強さを活かしたミステリー的な構成が序盤から物語にグッと引き込む仕掛けとして素晴らしかった。 市子という人物について彼女の人生のそれぞれの時期に関わりがあった人物たちの証言から浮かび上がらせるような内容なのだけど、抱えているものについて徐々に見えてくるような構成、その断片性自体に真実の複雑さや他者が理解することの難しさが象徴されているようにも感じられる。 ファ

          2024年映画感想No.1:市子 ※ネタバレあり

          2023年映画感想No.91:魔術(原題『Brujeria』 ※ネタバレあり

          丸の内TOEIにて鑑賞。東京国際映画祭2023ワールドフォーカス部門(第20回ラテンビート映画祭 in TIFF)。プロデューサーはパブロ・ラライン。 虐げる側の人間が抱える「いつか報復されるんじゃないか」という不安が加害を加速させるトリガーになるという物語でいうと今年公開された『福田村事件』でも鋭く描かれていたけれど、1880年のチリが舞台の本作の根底にもドイツ人入植者たちによって支配、搾取されていた先住民の怒りや悲しみが流れている。 『魔術』というタイトルやあらすじから

          2023年映画感想No.91:魔術(原題『Brujeria』 ※ネタバレあり

          2023年映画感想No.90:ファースト・カウ(原題『First cow』 ※ネタバレあり

          寄る辺なさを抱える登場人物たちによるポスト西部劇 シネリーブル池袋にて鑑賞。 「鳥なら巣 蜘蛛なら糸 人間なら友情」という冒頭の引用句から、心の居場所についての映画であることが予感されているように感じた。続くファーストカットの川に浮かぶ貿易船がゆっくりと画面を横切るショットは、根を張る場所を持たない登場人物たちの物語に響いているように映る。 ケリー・ライカート監督の映画では自分がこの世界において何者であるかを見失いかけていたり、社会における自分の居場所が不確かな状態の人物が

          2023年映画感想No.90:ファースト・カウ(原題『First cow』 ※ネタバレあり

          2023年映画感想No.89:愛にイナズマ ※ネタバレあり

          石井監督の近作に共通する「クソな社会」と「物を作る意味」というテーマ キネカ大森にて鑑賞。 コロナ禍ということを意識的に描いた『茜色に焼かれる』以降の石井監督作品はどれも「クソな社会」と「物を作る意味」を改めて明確に描こうとしているように感じる。『愛にイナズマ』でも前半の社会構造の話と後半の個人的な創作の話で違うトーンの物語になるという歪な構成すら主人公の創作にとっては必然であり、それを抜きにして「だから映画を作る」、「それでも映画を作る」という話にはならないのだと言ってい

          2023年映画感想No.89:愛にイナズマ ※ネタバレあり

          2023年映画感想No.88:クリティカル・ゾーン(原題『Critical Zone』) ※ネタバレあり

          ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞。東京フィルメックス2023コンペティション部門にて上映。 高速道路のトンネルを走っている救急車を後ろから追う長回しのカットから映画が始まるのだけど、この救急車が意外なタイミングで道を曲がり、そこから隠れていた社会のアンダーグラウンドに入り込んでいくような場面構成がハッとする見せ方で引き込まれる。映っているものの信用できなさ、ひいては映される世界そのものの信用できなさを提示しているようであり、同時に映像の映画であることを宣言しているよう

          2023年映画感想No.88:クリティカル・ゾーン(原題『Critical Zone』) ※ネタバレあり

          2023年映画感想No.87:MY (K)NIGHT マイ・ナイト ※ネタバレあり

          「夢を売ること」についてのメタなテーマ 新宿ピカデリーにて鑑賞。中川龍太郎監督最新作はEXILE HIROさんプロデュース、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEの川村壱馬、RIKU、吉野北人主演というある種のアイドル映画でもある。見た目がかっこいい人じゃないと演じられない役ということ以上に「ファンタジーを売る存在」とはなんなのか、というアーティストという現実の彼らの役割を再定義、再肯定するような物語としても受け取れるところが素晴らしいと思った。 キメッキ

          2023年映画感想No.87:MY (K)NIGHT マイ・ナイト ※ネタバレあり

          2023年映画感想No.86:水の中で(原題『In Water』) ※ネタバレあり

          「ピントを合わせようとする」ことについての映画体験 有楽町朝日ホールにて鑑賞。東京フィルメックス2023特別招待作品。 意外とピンボケしていないファーストシーン、続く場面もパキッとピントの合った食事シーンと全編ピンボケと聞いてたのに割と普通の撮影で映画が始まることに「あれ?」と思ったのだけど、それ以降はなにも知らないで観たら映写事故だと思うレベルのピンボケ撮影だった。「ピンボケは意図的ですよ」という目配せとして導入部的な演出になっていることもあるだろうし、もう一つは冒頭シー

          2023年映画感想No.86:水の中で(原題『In Water』) ※ネタバレあり

          2023年映画感想No.85:小説家の映画(原題『The Novelist's Film』) ※ネタバレあり

          街の片隅で起きている小さな人生の更新 キネカ大森にて鑑賞。 ホン・サンスの映画らしく今作もとてもミニマルな形での「人生の更新」が描かれているように思う。抱えている人生の停滞に抗うように移動する主人公がいて、その結果として訪れる偶然が物語そのものになっていく。 新しい場所を訪れたり誰かと会ったりするところにある「何かが変わるかもしれない」という期待と、一方で人間関係や物事の流れが自分の意思だけでは全くコントロールできないという偶然というものの掴みどころのなさがあり、とてもシン

          2023年映画感想No.85:小説家の映画(原題『The Novelist's Film』) ※ネタバレあり

          2023年映画感想No.84:ロングショット(原題『老槍 A Long Shot』) ※ネタバレあり

          丸の内TOEIにて鑑賞。東京国際映画祭2023コンペティション部門。 銃を撃てなくなった男の話 射撃の代表選手候補である若き主人公に難聴が発覚するファーストシーンから彼の失われたアイデンティティについての物語が始まるのだけど、明るかった室内から場面が変わると年老いた主人公が暗い部屋の片隅で黙々と自作の銃を改造したり射撃の構えをとったりしていて、喪失を乗り越えられていない痛々しさや行き場のない内省の苦しさがすでにしてしっかりと示されている。 人物や部屋の美術から漂う全てがさ

          2023年映画感想No.84:ロングショット(原題『老槍 A Long Shot』) ※ネタバレあり