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『街のあかり』の数だけ、そこには人間がいるのに
アキ・カウリスマキという名前を初めて聞いたのは、たしかTwitterだったと思う。『枯れ葉』という映画が公開された時に、誰かが「パレスチナを思う感情と、日常を送ることの両立を描いた」と書いていたのを見て、興味を持った。というのも、ちょうどそのころ、イスラエルとハマスの対立が悪化していた。今でも、イスラエルがガザ地区の人を―特に子どもだ―を殺していく、ジェノサイドが続いている。新作であるその『枯れ葉
もっとみる【日記】文章的空間③ + 飛来した対話
ジャングルジム
こんなことを思い出す。
小学校のとき、学校にはほとんど一番乗りで行っていた。7:30ごろ、眠そうな先生が下駄箱のガラス扉を開く。
僕は電気がついていない教室にランドセルを置いて、青い皮が貼られたスポンジボールを片手に、低学年用の校庭に走っていく。
朝の校庭、ぼく一人しかいない校庭。その奥まったところに、黄緑色のジャングルジムがあった。変わった素材のジャングルジムは、いつも、一面
【日記】対話できそうな文字
よく「ペンは剣よりも強い」「言葉には人を傷つける」と言うように、人と言葉の関係については、巷にたくさんの意見が飛び交っている。今回は特に、標識としての文字について考えてみたい。
居住している寮で、水道点検があった。僕が住んでいるフロアーの洗面所と化粧室に繋がる扉には、サムネイル写真のような黄色いテープが貼られていた。太字のゴシック体で「立ち入り禁止」と赤い文字が描かれ、少し小さなフォントで「入ら
【日記】文章的空間をつくるために①
小説などの文章を書いていると、表現が自然と視覚に偏ってくる。たとえば情景描写がそれに当たる。
2文目から、僕の眼に映ったものが書かれている。おそらくこれによって、文章のなかに厚みと奥行きが付与される。ホームに立っている僕と自転車置き場の間に<距離>が生まれ、それにしたがって空間が文章に現れるからだ。
こうして、文章に視覚を用いると、立体感を作ることができる。繰り返しになるが、遠くに見えたものに言