kissaame

同人初心者、文字を書いているよ。

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記事一覧

中村文則 王国の感想

月という変わるけれど変わらないものが存在し続けていて、煙という視界を曇らせるものがスパイスとなっているこの作品。 神よりも現実的な存在の、生々しい悪意を何十年も…

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4日前
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死のやわらかい話

最近短歌を始めて歌人のトークショーやワークショップに参加して、死をテーマに二次創作をしていることについて得た話まとめ。苦手ジャンルとされる死を自分がどう捉えてい…

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6日前
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大人ってなんだろうなと散文

なんとかなると思うとなんともならなくて どうにでもなれと思うとどうにかなって そんな繰り返しであえて逆を選んでも上手くは行かない どうでもいいやと投げ捨てた…

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11日前
4

福本伸行作品の天と同人誌の話

自分が出した天 天和通りの快男児の同人誌について備忘録と補足。 以下原作と自作同人誌の内容に深く突っ込みますのでよろしくどうぞ。 赤木しげるは原作にて安楽死を選…

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13日前
2

やりたいことをやるって何

というわけでやってまいりました夏、といえばスイカ割り。私は今まで恥ずかしながらやったことがなくて、やってみてーと思って体調の良い涼しい日に決行。 材料費、木切れ4…

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13日前
2

ハネムーンは天国へ

 抱えきれるだけのものをかき集めて小さな箱に入れていく。これは要る、こっちはやっぱりいいや、ひとり言を呟きながら荷造りをしていたら、愛猫が箱の蓋にごろりとお腹を…

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1か月前
4

ある職人の死と私の後悔について

彼はとても優しい人だった。 若く青く生意気だった私を、工場の中で黙々と作業していても優しい笑顔で出迎えてくれる、そんな珍しい昭和の職人のことを思い出したので自分…

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1か月前
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ミュージカルゴースト&レディの感想、祈りとは何か

先日ゴースト&レディを観た感想と震災関連について思ったことを書く。 ゴースト&レディとは藤田和日郎先生のゴーストアンドレディを原作としたミュージカルで、フローレ…

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1か月前

人生をともにしたBUCK-TICKへ、愛を込めて

現実世界ではなかなか半年前に亡くなったアーティストへの生々しい悲しみを共有しづらい方もいると思うので、その中のひとりとして書きました。まとまらない文章ですが、誰…

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2か月前
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加害性について

加害者を告発すると被害者ぶるし、依存症患者は本人が望まない限り治療できないし、向いてないことをやりたがる下手くそもおる。 加害も依存症だ。 習慣の全てはそれによ…

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2か月前

差別と区別と思いやりについて

ちひろさんという漫画18話を読んだ。 主人公ちひろが勤務する弁当屋の店主の妻が体調を崩して入院し、失明して退院するところからこの話は始まる。 あれやこれやと気を遣わ…

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3か月前

ままならない、について

この言葉を辞書で引くと、不自由さや思い通りにならないことと出てくる。 私の好きな作品の登場人物の口癖なのだが、現代ではあまり使う言葉ではないし、諦めをまとった陰…

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3か月前
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中村文則 王国の感想

中村文則 王国の感想

月という変わるけれど変わらないものが存在し続けていて、煙という視界を曇らせるものがスパイスとなっているこの作品。

神よりも現実的な存在の、生々しい悪意を何十年も持ち続ける人間に支配された女性が、人生を作られて奪われる残酷さ。

ターゲットになってしまった理由は彼女が美しかったから、ただそれだけ。また、彼女が唯一救おうとしたのは美しく不器用な少年。理由は美しかったから。

対照的な絶対的悪と虚無を

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死のやわらかい話

死のやわらかい話

最近短歌を始めて歌人のトークショーやワークショップに参加して、死をテーマに二次創作をしていることについて得た話まとめ。苦手ジャンルとされる死を自分がどう捉えていたのかの気付き。

先日のトークショーのテーマは死についてであった。とても直球な内容で濃厚な時間を過ごすことができたのだが、細かい内容は理想の死について、死というものへの考え方など。羅列すると暗い話題のように思える。

しかし、そうではなく

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大人ってなんだろうなと散文

なんとかなると思うとなんともならなくて

どうにでもなれと思うとどうにかなって

そんな繰り返しであえて逆を選んでも上手くは行かない

どうでもいいやと投げ捨てたのに

それを拾われて届けられることもある

いい年した人に知らないだろと言われることを

それ以上知ってることもある

曖昧な笑顔が張り付いたまま過ごす毎日を

シャワーで流して寝るのに夢ではおべっか使ってる

大人に

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福本伸行作品の天と同人誌の話

福本伸行作品の天と同人誌の話

自分が出した天 天和通りの快男児の同人誌について備忘録と補足。
以下原作と自作同人誌の内容に深く突っ込みますのでよろしくどうぞ。

赤木しげるは原作にて安楽死を選んでいること、その後のスピンオフ作品にて彼の人生における話は10代の限られた部分しか明かされていないことを踏まえて、自分だったら何を書きたいかを考えたときに、前作の赤木しげる追悼本にて触れた他者視点からの彼を書きたいと思い、捏造したモブキ

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やりたいことをやるって何

やりたいことをやるって何

というわけでやってまいりました夏、といえばスイカ割り。私は今まで恥ずかしながらやったことがなくて、やってみてーと思って体調の良い涼しい日に決行。
材料費、木切れ495円、飛散防止のボウル110円、スイカ中玉(スーパーで冷えたのが売ってて助かった)2980円、レジャーにしては結構リーズナブル。
その他ゴミ用にビニール袋を持参して、人気のない海岸の隅でバシャバシャ写真撮りつつ決行。
いやぁ、本当に楽し

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ハネムーンは天国へ

ハネムーンは天国へ

 抱えきれるだけのものをかき集めて小さな箱に入れていく。これは要る、こっちはやっぱりいいや、ひとり言を呟きながら荷造りをしていたら、愛猫が箱の蓋にごろりとお腹を出してにゃあと鳴いた。
 艷やかで丸々とした金色の瞳に、何をしてるんだ、私を構いなさいという意思を感じて、彼女の毛皮を左手でゆっくりと撫でる。あたたかくてふかふかしていて、これが命の熱量なのだと手の甲に残った三本の並行した爪痕を眺めては獣の

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ある職人の死と私の後悔について

ある職人の死と私の後悔について

彼はとても優しい人だった。
若く青く生意気だった私を、工場の中で黙々と作業していても優しい笑顔で出迎えてくれる、そんな珍しい昭和の職人のことを思い出したので自分の心の整理のために書いてみることにした。

彼は取引先の職人で、私との年齢差は孫と祖父くらい。職人気質だが優しい人、それが私の第一印象だったと思う。
セクハラパワハラノーカンな業界だったので、引き継ぎ挨拶で紹介されるたびに奇異の目を向けられ

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ミュージカルゴースト&レディの感想、祈りとは何か

ミュージカルゴースト&レディの感想、祈りとは何か

先日ゴースト&レディを観た感想と震災関連について思ったことを書く。

ゴースト&レディとは藤田和日郎先生のゴーストアンドレディを原作としたミュージカルで、フローレンスナイチンゲールの人生を勇敢な幽霊が支えていたとしたら…というストーリー。
2つはそれぞれ表現方法が異なるため、漫画の忠実な再現ではないと作者が述べていたことを添えておく。

看護師という仕事は何の知識もない貧困女性たちが行うものだと差

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人生をともにしたBUCK-TICKへ、愛を込めて

人生をともにしたBUCK-TICKへ、愛を込めて

現実世界ではなかなか半年前に亡くなったアーティストへの生々しい悲しみを共有しづらい方もいると思うので、その中のひとりとして書きました。まとまらない文章ですが、誰かの涙に寄り添えればと思います。

BUCK-TICKの櫻井敦司さんが旅立ってから半年以上経過しても、心のなかにある悲しみがうまく整理できていない。
彼の音楽に初めて出会ったのは、夕暮れのテレビ画面越しだった。美しく彩られた口元から綴られる

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加害性について

加害性について

加害者を告発すると被害者ぶるし、依存症患者は本人が望まない限り治療できないし、向いてないことをやりたがる下手くそもおる。
加害も依存症だ。

習慣の全てはそれによって脳が心地良いか否かによって決められている。つまり、偉そうなことを言っていたとしても、大義名分役職立場がどうであれ、たった数キロの頭蓋に守られた弱々しい臓器の中、行ったり来たりする少量の分泌物によって決まるのだ。

法律の行き届かないア

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差別と区別と思いやりについて

差別と区別と思いやりについて

ちひろさんという漫画18話を読んだ。
主人公ちひろが勤務する弁当屋の店主の妻が体調を崩して入院し、失明して退院するところからこの話は始まる。
あれやこれやと気を遣われるのではなく、普段通り接してくれる人のほうがありがたいという言葉を妻は漏らしていて、確かになぁと合点がいくエピソードを思い出した。
ある日、駅で目撃したのだけれど、車椅子ユーザーが電車を降りようとするところに居合わせたサラリーマンが、

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ままならない、について

ままならない、について

この言葉を辞書で引くと、不自由さや思い通りにならないことと出てくる。
私の好きな作品の登場人物の口癖なのだが、現代ではあまり使う言葉ではないし、諦めをまとった陰気な雰囲気がどうにもなぁと思っていた。
しかしながら、彼ら(別の作品で二人の登場人物が使用していた)は、この言葉を難関へのスタートラインに置いてから、クラウチングスタイルを取っていたのだ。

「人生ってのはままならねぇってことに今更気付いち

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