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【KDDI維新ホールメディフィットラボ講師インタビュー】歩き方が変われば人生が変わる!正しい歩き方とその伝え方≪中村女子高校陸上部顧問/20㎞競歩10,000m競歩山口県記録保持者 吉松洋介≫

あなたは正しい歩き方、知っていますか? 

歩くという行為は毎日当たり前のように行っているようで、実は間違ったやり方をしている人が大変多いものです。
しかも、間違った歩き方を続けていくと、正しい筋肉がつきにくくなり、将来の生活にも大きく支障をきたす可能性があります。

しかし、
スマホを見ながら猫背になっていたり……
靴のかかとの片方だけがすり減っていたり……
直すべき悪い癖も人それぞれ。正しい歩き方を自分にあったやり方で身につけていくためには一体どうしたらいいのでしょうか。

KDDI維新ホール、メディフィットラボでは「健康寿命の延伸」をテーマに心身ともに健康となることを目的としたさまざまなイベントを開催しております。【8/6】はウォーキング教室〜歩き方が変われば人生が変わる〜を開催!
今回、東京オリンピック国内技術役員も務められた中村女子高校吉松先生にお越しいただき皆様それぞれに「正しい歩き方」をご教授いただきます。
開催を前に、正しい歩き方とは、それを伝えるために必要なこととは何か、指導者としてのお話を伺いました。(記事・写真)

中村女子高校陸上部顧問/20㎞競歩10,000m競歩山口県記録保持者 吉松洋介先生



どうやったら人は前に進むのかー競歩との出会いー

もともと中学生の時から3000mで全国大会に出場するなど、長距離を走る陸上競技を専門にやっていたんですが、高校2年生の時にちょっと足を痛めることがあって。そのリハビリとして出会ったのがレースウォーキング、競歩でした。
当時初めて練習で5000mを歩いた時にはもうすでに中国大会にでられるようなタイムだったんです。(5000m25分ぐらい)
競技人口も少なかったので、半分冗談もあったと思いますが、10年に一人の逸材と言われていました。今指導者として思えば、本当だったのかなとも思います。ただ当時は箱根駅伝に対する憧れが強かったので、競歩への熱意最初は少なかったんです。

しかし、習って二日目の時に先生が、
テレビ放送などもない時に、海外のホームビデオで撮られた映像をわざわざ見せてくださったんです。これが世界の一流なんだよって。

そのときに「人はどうやったら前に進むんだろうね」と言われたんです。
走るのが速い人は速い。歩くのも速い人は速い。そんな風に思っていたので、空気を吸うのと同じくらいに、走る時もただ、前に進むということが当たり前に考えていました。だからこの質問に一瞬思考が止まってしまったんですよ。笑

この時に先生から「地面を押す」と教わったんです。具体的なことは言われなかったんですが、自分の中で考えていくうちに、たしかに、
ボールも投げつけたら跳ね返っていく。
ボール自身に強い意識がないけどボールににしたら地面を押しているわけで、
その力によって跳ね返っていく。
あぁ、そういうことか! と思って。もう物理の話ですよね。
足の運びが推進力に変わるように、足の運びを腕の振りで歩く力に変えていく。
何かこんなイメージがだんだんと出来上がってきました。
そうなると、体幹を使うとか、歩くためのさまざまな課題が見えてきたんです。

正しい感覚の伝え方

指導者なってからはそんなウォーキングのイメージをどう伝えるか自分なりに考えるようになりました。
よく走る選手とか「蹴る」という表現を使うんですが、僕の中にはその感覚はありません。
歩く時だけではなく、走る時もスタートダッシュやラストスパートする時、駆け引きの時に足を使うけれど、それ以外の時って足を置いていくような感じがほとんどなんです。
歩くときに僕の中で大切にしているのは「地面を押す」という感覚と共に「小さなジャンプをしてる」感覚です。


脚のバネをためるってよく言われるんですが、大会直前になると練習量を落として、脚の跳ねる力をためておくんです。でもバネがたまりすぎるとふわふわして足が地面から離れるように見られてしまい。競歩ではロス・オブ・コンタクトという反則になってしまう可能性がある。そこのバランス調整が難しいんですけどね。


感覚を再現するために必要なこと

そんな感覚を自然につかめるようになるために、まずは最初の姿勢づくりが大切だと指導しています。
押した力が、おへその上の辺り(人によっては骨盤とか腹部あたり)。に伝わって、ここの部分がいわゆる車のデファレンシャルのような働きをして、両足の力を吸収して、前に進む力に変えるポイントになるんです。
そこをしっかりと意識するためには、体の軸があって体幹がしっかりしてないといけない。


また、最初の姿勢を整えないと、バランスが崩れたり、ケガをしやすくなってしまいます
逆に最初の姿勢が整えば、無理なく綺麗に歩いていけますし、それに沿った
筋力をちゃんとついていくようになります。


競歩と日常の歩き方はどう違うのか

競歩には二つ制約があります。
1つは膝を伸ばした状態を作らなきゃいけないこと、もう一つは両足が地面から離れてはいけないこと。です。
しかし、このルール、実は日常のウォーキングに対しても、とても理にかなっているんです。
膝を伸ばす歩き方って日常であまりないかもしれないですが、速く歩くためには腰高の状態を作り、人は自然と膝を伸ばしていくものなんです。
日常の歩き方が間違ってるということではないんですが、もっと良くしようと思ったら競歩に近いような歩き方を意識するのが歩き方の改善につながるように思います。

歩き方はデザインできる

正しい歩き方を伝えるために、今の姿勢とか意識のポイントなどは伝えますが、見た目についてはあまり細かく言いません。目に映るのは二次的なものだからです。
競歩も腰クネクネさせているように見えるとよく言われるんですが、
あれはそう見えているだけで、本人的にはまっすぐ歩こうとしているだけなんです。
まっすぐ速く進もうとするために結果的にあの形が理にかなっているわけです。

競歩の審判をする吉松先生


以前、私の恩師に「競歩は自己表現のためのキャンパスだ」という素敵な言葉をもらったことがありました。
確かに競歩という競技では歩き方を審判にジャッジされます。でも見られるっていう意識が加わると、それだけでも表現者になっていると思うんです。
ファッションショーのモデルさんもそうだと思います。
来ている服を魅力的に見せるための歩き方があり、それをデザインしている。
自分がどんな歩き方を目指したいか。それによって毎日行う「歩く」という行為もデザインしていけると思います。


感覚を自分に落とし込むために必要なこと

指導している中でも、「言われたことを自分の言葉に直しなさい」とよく言っています。
たとえば正しく歩くという行為に対して、やっていることは同じでも、「押す」という言葉が私にはしっくりきたけれど、
指導された側はもっとその感覚を表現するのにしっくりくる言葉があるかもしれません。
難しい言葉を使う必要もないし、私が言った言葉をそのまま使う必要もない。
正しい感覚を自分流に表現し、つかんでいくために自分の言葉に表現し直すことが重要なんです。

あなたはAタイプ?Bタイプ?自分に合った感覚のつかみ方

正しい歩く感覚をつかんでもらうために、どう伝えたらいいのか。
私はシンプルに大きくタイプを2つに分けて伝え方を変えています。
しかもそれは腹筋運動をすればわかるんです。
腹筋をするときに体を丸めながら腹筋する方がやりやすい方がAタイプ。
背筋を伸ばして腹筋する方がやりやすい方がBタイプ。

骨盤の傾きなど細かい要素もありますが、大雑把にはこれで2つのタイプに分けることができます。

体を丸めながら腹筋する方がやりやすい方がAタイプ
体を丸めながら腹筋する方がやりやすい方がAタイプ
背筋を伸ばして腹筋する方がやりやすい方がBタイプ
背筋を伸ばして腹筋する方がやりやすい方がBタイプ

この2つのタイプで、正しい感覚をつかんでもらうために、意識してもらうポイントが変わってきます。
例えば、つま先を上げなさいと言って、Aタイプはそのまま通じる方が多いですが、一方で、Bタイプはかかと意識してつま先あげなさいって言った方がつま先上げやすいという場合が多いんです。
Aタイプは考えるよりまず行動しようっていうタイプが多い気がします。
Bタイプの方は物事を慎重にゆっくりと考えられる方多いように思います。
なんだか性格診断みたいですね。笑 ちなみに私はAタイプです。

このタイプに分けるというのも地面を「押す」という感覚をちゃんと意識してほしいというのが目的です。つま先上がっていたら、かかとからしっかり地面に接地していくものです。
本来自分がやってほしい動きにつなげるためにどうしたらいいか。
ただ「押す」という表現だと、普段ウォーキングになれていない方はおそらくピンとこないので、まずは「つま先を上げる」と言った方がご自身で意識としてちゃんと地面を押してもらえると思っています。
「地面を押す」とそのまま伝えるのではなく、「つま先をあげる」と言ってた方が、自然と動きとして地面を押していけるんものなんです。

自分はその人にはなれないので、どう他の人に再現させるか。動く側がその感覚を探しやすくなるように指導をしています。

自分でできないときは環境を変えていく

地面を押すということに集中しだすと、一つ腰が落ちてくるという問題が出てきます。
腰が落ちてしまうと、美しく見えない上に、しっかり体全体を使うことができなくなってしまいます。正しいウォーキングを行うためには体のポイントの高さを上げていくいわゆる「腰高」の状態を作る必要があるのです。
最初に作った姿勢を引き上げるようなイメージがあるといいのですが、なかなかそれも難しい。
そんな時は、ウォーキングのコースを作ることで補うことがあります。

吉松先生が毎週練習を指導されているコース

たとえば、緩やかな上り坂を活用してコースを作ります。この時に腰が落ちたままだとスピードが落ちてしまう。そこでウォーキングをしている本人が自身の姿勢に高さを出さないといけないという意識が出てくるんです。同じペースで歩くことを意識したら、そのままの姿勢では登れない。コースによって自然と体を持ち上げる必要がある状況を作るんです。

一度感覚が分かれば、それをフラットな平地でもやればいいだけになる。
自分でできなければ、自然とそうせざるを得ない環境を作っていくことも必要です。


ウォーキングを定着させるために必要なこと

まずは目安を作ることも重要です。
例えば1キロを10分で歩けるようにしようという目安をつくって歩いてみる。
今だとスマートフォンやスマートウォッチでキロ何分で歩いてるかなどが分かるので活用できるとよいかもしれないですね。
その中で、自分の体にリズムを作っていく。これをキープして、繰り返し行っていくことで段々とウォーキングが身についていくものだと思います。
形が決まれば歩き続けられる。そうなると楽に感じて疲れにくくなっていきます。


日常の中で定期的にウォーキングスイッチを入れよう

日常生活の中では、ウォーキングスイッチを自分で入れる必要があると思います。
例えば犬の散歩に行くときはちょっとスイッチを切り替えて意識して歩いてみる。とか、
窓ガラスがあったら自分で歩いている姿を見てみるとか。
これも見方も色々あって、真正面からみると面白いんですよね。
横から見ることはできると思うんですが、首が横を向いている時点で不自然な姿勢になってしまいます。真正面から写っている姿を見るというのはナルシストに見えるかもしれませんが、それでいいんです。自分でここが変かもと気がつくということが重要なんです。


自分の癖を知り、今から矯正していく

不思議なもので、人って歩き方ひとつとっても、それぞれに癖がついてしまっているものです。
右肩が上がっていたり、蟹股になってしまっていたり。
癖があると偏った筋肉が発達してしまい、余計に正しい姿勢が難しくなってしまいます。
でも当の本人は全く癖のある歩き方をしているつもりないんですよね
内股の人もまっすぐ歩いているつもり。思いっきり蟹股にしてみて歩いてごらんって言ってはじめて正しい姿勢になったりします。
短距離は速すぎて気づきづらいですが、ウォーキングは自身の癖にも気づきやすい。
歩くことはちゃんと意識すれば自分で矯正できるものなんです。

歩く行為以外にも足の形を整えることも正しい歩き方につながっていきます。僕自身、O脚だったんですが、毎晩お風呂あがりに骨盤を締める運動をして、脚がストレートになっていきました。そうなると体重移動がしやすくなり、体の中心に近い方に力が集まってきて歩きやすくなったんです。


歩き方が変われば人生が変わる

歩くという行為は毎日行われます。毎日歩けば歩くほど、もしズレがあればそれがどんどん広がりやすくなる。年を重ねれば重ねるほどその弊害が出てくるものです。
しかし、早い段階で正しい歩き方ができれば、将来的に足腰が悪くなるリスクを緩やかに伸ばせるんじゃないかなと思います。やはり健康な体を維持するためにも歩き方はとても重要です。
歩き方が変われば人生が変わるというのは本当に冗談ではなくて、
今、整えていくことが将来につながっていくと思っています。
皆さんも今からの歩き方を見直して、健康な将来につなげていきましょう。

吉松先生にお越しいただく【8/6】はウォーキング教室〜歩き方が変われば人生が変わる〜は13:00~開催!すでに満席ですが、キャンセル待ちもできますので、こちらよりお問い合わせください♪




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