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映画の深読み&考察

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深読み・考察しながら、映画への愛を熱く語ります。
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リー・トランド・クリーガー監督『アデライン、100年目の恋』

リー・トランド・クリーガー監督『アデライン、100年目の恋』

 年を取るということは素晴らしいことなのだ、ということを教えてくれる映画。

 ※注意
 以下の文は、結末まで明かすネタバレを含みます。
 未鑑賞の方はご注意ください。

 この映画の主人公は、アデライン・ボウマンという女性。

 彼女は29歳の時、事故に遭いました。

 そして彼女の時間は止まりました。

 …と言っても、事故で死んだのではありません。

 事故が起きた時、いくつもの偶然が重なっ

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デヴィッド・ゲルブ監督『二郎は鮨の夢を見る』

デヴィッド・ゲルブ監督『二郎は鮨の夢を見る』

 マグロがルビーに見える。

 ウニが金に見える。

 そんな美しいドキュメンタリー映画。

 小野二郎さんも、長男・禎一さんをはじめとする『すきやばし次郎』で働く人たちも、仕事をする所作が実にしなやか。

 映像を通して伝わってくる、よく研いである包丁みたいに研ぎ澄まされたプロフェッショナルの仕事に、圧倒されます。

 特に、小野さんが語った、

 という言葉がかっこいいです。

 また、このド

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マティアス・ハーネー監督『ロンドンゾンビ紀行』

マティアス・ハーネー監督『ロンドンゾンビ紀行』

 老人ホームのおじいちゃんたちとおばあちゃんたちがゾンビと勇ましく戦う映画。

 ※注意
 結末までは明かしませんが、以下のレビューには一部ネタバレを含みます。

 孫たちも出てくるけれど、なんと言ってもおじいちゃんたちとおばあちゃんたちが凄い!

 歩行器を必死に使って命からがら逃げ、みんなで老人ホームに閉じこもって、ゾンビに怯えていたのに…。

 孫が大量の銃を持って来てくれた途端。

 おじ

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クリストファー・ノーラン監督『インターステラー』

クリストファー・ノーラン監督『インターステラー』

 ふいに、誰もが静まり返った深夜に、ひとりでヘッドフォンをつけて観たくなる映画。

 大切な人といつか必ず再会するために、宇宙を旅している。

 そんな気分になれるから。

 観終わったら、朝日を浴びて、そして誰かと会って欲しいです。

 自分以外の誰かがそばに居てくれる。

 ただそれだけのことが、どんなに幸福なことか感じられるから。

 ※注意
 結末は自分で確かめて欲しいので結末までは明かし

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ウィリアム・ブレント・ベル監督『ザ・ボーイ〜人形少年の館〜』

ウィリアム・ブレント・ベル監督『ザ・ボーイ〜人形少年の館〜』

 怖い映画って、初めて観る時は新鮮だけれど、2回目以降はオチが分かっているので退屈なことがありますよね?

 しかし、この映画に関してはむしろ逆。

 2回目以降の方が断然面白いです。

 「人形少年ブラームス」の気持ちを想像してツッコミを入れながら観ると、めくるめく変態ワールドを楽しめます。

 ※注意
 結末までは明かしませんが、以下のレビューには一部ネタバレを含みます。

 美女の着替えを覗

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高橋渉監督『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』

高橋渉監督『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』

 「今日は良い夢を見た!」と思って目覚めた時って、「次もまた良い夢を見られるかも」と次に寝るのがちょっと楽しみになりますよね?

 でも、悪夢を見て目覚めた時はその逆…。

 この映画のヒロインは、悪夢ばかり見てしまう女の子。

 ※注意
 結末までは明かしませんが、以下のレビューには一部ネタバレを含みます。

 <あらすじ>

 サキちゃんという5歳くらいの女の子がいます。

 サキちゃんのパパ

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J・A・バヨナ監督『怪物はささやく』

J・A・バヨナ監督『怪物はささやく』

 ※注
 以下のレビューにはネタバレを含みます!

 ママが重い病気にかかっている。

 どんな治療をしても、ちっとも効いてくれない。

 早く元気になって欲しいのに…。

 どんどん弱っていくママの姿を目の当たりにしなければならない。

 何かしてあげたいのに、何もしてあげられない。

 「誰かママを助けて!」と叫び出したいのを必死にこらえながら、ママを励まして、耐え続けるしかない。

 けれど

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ティム・バートン監督『スリーピー・ホロウ』

ティム・バートン監督『スリーピー・ホロウ』

 世にも珍しい、首なし騎士の恋愛映画…だとわたしはこの映画のことを解釈しています。

 ジョニー・デップもクリスティーナ・リッチも脇役にして、わたしにとってこの映画の主役は首なし騎士。

 傭兵としてドイツからアメリカへと渡ってきた騎士は、戦いに勝つことや報酬を得ることよりも、ただひたすらに殺戮を楽しみました。

 歯を鋭くとがらせ、目を爛々と輝かせ、一人で敵陣深く斬り込んでいくこともしばしば。

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ロバート・ゼメキス監督『魔女がいっぱい』

ロバート・ゼメキス監督『魔女がいっぱい』

 わたしは大魔女様にまんまと魅了されてしまった一人です!

 怖いけれど、とんでもない別嬪さんなので、どの角度から見ても目の保養になります。

 怖いけれど、すぐ調子に乗ってノリノリになっちゃうところが可愛いです。

 怖いけれど、かなりのドジっ娘。

 うっかり怪我をする度に「痛いよぉー!」と子どものように泣き出しそうな表情をするところに親近感を覚えます。

 よく、足の小指をタンスの角にぶつけ

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ヘンリー・セリック監督『コララインとボタンの魔女』

ヘンリー・セリック監督『コララインとボタンの魔女』

 「あれ? この世界…何かがおかしいぞ…」と不気味な映画。

 仄暗く湿ったような感じ。

 ゾクッとするこの雰囲気は、きっとストップモーションアニメならでは。

 甘い言葉で子どもを油断させてさらってしまう誘拐犯の恐ろしさを暗示しているかのようなストーリー。

 ※注意
 以下の文には、この映画の結末まで明かすネタバレを含みます。
 また、あくまでもわたしなりの解釈です。

 ⭐️ストーリー

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ウォルフガング・ペーターゼン監督『アウトブレイク』

ウォルフガング・ペーターゼン監督『アウトブレイク』

 ※注意
 以下のレビューにはネタバレを含みます!

 ウイルスは恐ろしい。

 けれど、人間も恐ろしい。

 ということを描いた映画。

 1995年に制作された映画ですが、2023年現在観ても全く他人事と思えません。

 この映画と2023年の現実とで大きく違うのは、

 ●この映画の中で流行拡大するのは「新型コロナウイルス」ではなく、発症するとまるでエボラ出血熱のように出血を伴って死に至ると

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ジェイク・カスダン監督『ジュマンジ ネクスト・レベル』

ジェイク・カスダン監督『ジュマンジ ネクスト・レベル』

 ※注意
 結末までは明かしませんが、以下のレビューには一部ネタバレを含みます。

 

 役者さんってなんて凄いんでしょう!

 前作の『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』を観た時も、ジャック・ブラック演じるベサニーが可愛くて、本当に無邪気なギャルに見えて、わたしはジャック・ブラックが出演している他の映画を観ても「あらっ、今回はベサニーじゃないんだね…」とちょっとガッカリしたほどでした。

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イアン・ボノート監督『マックイーン モードの反逆児』

 赤色ではなく、血の色を用いる人。

 白色ではなく、骨の色を用いる人。

 自分の命を削って、あの美しい世界を創造した人。

 わたしはアレキサンダー・マックイーンにそういう印象を持っています。

 生前のコレクションの映像や写真を観る度に、今も圧倒されます。

 この世の者がこんなデザインを生み出せるのだろうか…? とゾッとするほど美しい作品ばかりで。

 「僕のショーは全て私的なものだよ」

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アレックス・ガーランド監督『エクス・マキナ』

アレックス・ガーランド監督『エクス・マキナ』

 深夜から夜明けまでの間に再生したくなる映画。

 何度観ても残酷なストーリー。

 なのに、透き通るように美しい。

 絶望的な展開を観ているうちに、自分まで永久の闇に囚われるかのような気分に陥った頃、この映画の結末が映し出され、そして現実世界にも夜明けが訪れると、言葉では言い表すことの出来ない気分になります。

 ※注意
 以下の感想及び考察には、結末に関するネタバレを含みます。
 未鑑賞の方

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