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artsyな言葉たち

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自然、感情、美、哲学など、心奥に得たことを綴る。
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2019年5月の記事一覧

ハワイアンブルーイン東京

「ハワイのような気候になるでしょう」

朝6時、おなじみのお天気お姉さんが言った。

ハワイには行ったことがある。
何十年も前に家族旅行で。

父がレンタカーを借り
シュノーケルに行った。
英語が流暢な母は
ハワイアンキルティングのショップの店員と世間話をしてた。

今、
私はひとり、この東京で
ハワイではないけど
ハワイの気候を
その美しさを
存分に感じている。

大樹の葉は一枚一枚異なって

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暇のギャラリ 青山一丁目編 2

ギャラリーに展示された
日常のための吹きガラスを時計回りでゆっくりと眺めて行った。

最初の棚には
小皿がぽつん、ぽつん、と規則正しく並べられている。
空気みたいに透けてるガラスに
微細な線でシロツメクサが一輪描かれていた。
丁寧に、丁寧に、描かれていた。
水玉模様で縁取りされた小皿、
私だったらどんな食べ物を置こう。

シロツメクサを隠すような真似はしたくない。

そうだ、ゼリーだ。
それも紫色

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暇のギャラリ 青山一丁目編

土曜の11時半の待ち合わせ、
「ごめん!」
のひとことだけ送られてきてから早20分。

仕方ない
この辺りで時間をつぶそう。

青山一丁目駅を出て根津美術館の方へ向かう途中、
コムデギャルソンの手前を右に曲がってしばらく歩くと生け垣にぶつかる。
生け垣沿いを南東に向かうとそのギャラリーはある。

絵画、彫刻、陶芸、アクセサリーなどあらゆる作品の展示販売を行うギャラリー。

行くたびにギャラリ

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タイムカプセル

9歳の時である。
タイムカプセルに憧れて人生で初めて実行した。

幼稚園からの幼馴染とあれこれ自分の大事なものを、
ガチャガチャの小さな小さなカプセルに詰め込んだ。

特に、タイムカプセルといえば、
私たちにとって一番大事だったのは未来の自分と未来のお互いに向けたお手紙。

大して本気で思ってもないこと、
ずっと親友!とか
優しいところが好き!とか
適当に、でも時間をかけて書き連ねていった。

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4分の1の大玉西瓜

PM7:00、
閉店間近の八百屋
「お姉さん、安くする!」
と、すいか四分の一を押し売りされた

300円、
一人じゃ食べきれんないよ

真夏の西日射す夕入り
蒸し蒸しのリビングに帰り、
大テーブルにすいかをドンっと置く

背中に汗をかきながら、
包丁とまな板を持ってきて
つま先立ちで真上から
サクリ、サクリっ!
気持ちいい音がリビングに響く

そのまんまおっきな白い皿を受け皿に
カプリっ
じゅる

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夕の彫り、秋

夕の彫刻をみたことがあるだろうか。

木々の漆黒のシルエット、
折り重なって折り重なって。
私には彫れない。

背景。
底には黄昏の橙
そして東まで広がる波打つ濃紺の
その中間の板を彫る。

世界で一番美しい彫刻。
#文学 #小説 #エッセイ #日記 #自然 #哲学 #詩 #essay #literature #poetry #poetics #nature #philosophy #あたしのエ

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特別な人工的自然現象

小田急バスに乗って
井の頭公園に向かってた

まっすぐな一本道、
二車線しかなくて
すぐ横に店が立ち並んでいる
バスにはどうにも狭そう

車内には唯一
前面の大きなガラスを見られる特等席がある

大きなガラスからの景色を邪魔するものは何もない
私のお気に入りの席だ

大抵はゆっくりと歩くおばあちゃんや、
自転車を飛ばす小学生、
立ち並ぶ店とかを見つめるけれど
今日は違った
前に植木屋のトラックが走

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ムクドリのムック

林道の隅でムクドリがミミズをついばんでコテコテと歩いてる。
実家の夏蜜柑とおんなじ色のくちばしに、
焦げ茶にベージュ、そして白という毛の装い。
なんとも洗練された色使い。

ムクドリをみるといつでも
穏やかなおじいちゃんの畑を思い出す。
よく木の実をついばみにやってきてたからだと思ったけど、
そうじゃなかった。

そういえばおじいちゃんが一度、
ムクドリを捕まえたんだった。
大昔のことだ。

捕ま

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羽化した光の日

光が大好きな照葉樹林を自転車で走ってた。
車も人もほとんど通らないから、
歩くスピードくらいでゆっくり、
ゆっくりと走る。

マンション6階建てくらいの高さの樹々。

いつも光を存分に集めて、
そのまま私に照らしてみせてくる。
風が光のかたちを変える。

心地よい。

それにしても、
今日はいつも以上にテラテラと
むしろザワザワとしているな。

よく見たら、
今日は葉っぱだけじゃない。
たくさんの

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変わりゆく空間の匂い

雨水に濡れた草花の中をゆっくりと歩く 足元20cmのあらゆる草花は艶やかで
眩しい

5月中旬、
梅雨にまだ早いよ
なんて呟いてしまう

歩いていくと、進んでいくと、
変わっていく空間の香り

おっきな葉っぱを持つ南国風大樹が茂るここは新緑が芳ばしい
若竹の並木の中は朝の小雨のように爽やか
成竹の林はツンとくる生乾きっぽい

あぁ、
うちのローズマリー湿気にやっててないかしら
#文学 #小説

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うちの山百合

うちの庭の隅っこに山百合が咲いていたことを思い出した。

白い6枚の花弁は歪で、
それぞれの先端はあらゆる方向に向かっていた。
質感は絹のよう。
表面には花びらの形に沿って中央に黄色い線が先端に向かい伸びている。

その上に赤黒い斑点が全体に散りばめられていた。
中央には一本の控えめな雌しべと
それを囲う6本の雄しべ。
重みのある朱色の花粉は風に揺蕩っていた。
少しグロテスクだった。

それでも私

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上野 菜の花

たけのこをかじる、
甘い味噌ダレの奥の方に微かなえぐみ。

茹でわらびの上には細かなかつ節がふわりと空気を纏ってのせられてる。
パキりと音を立て噛み切る、弾ける茎。

稚鰤の脂はコク、さっぱりとしたひらめの弾力、マグロの血の気

お豆腐の生感、表面にはざらりと薄い塩気

日本酒がコーティングされたいぶりがっこ

艶やかに立った新潟コシヒカリの粒、食べたらネチッと柔らかい

ナズナと賽の目どうふの味

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芍薬の、

ボトっ

薄紅色の芍薬の花弁が、
ごっそりと落ちてしまった。

なんて奇妙な落ち方。

薔薇のようにはらり、はらりと散っていくのとはちがう。

ボトっ。
まさにこの音だった。

午後4時、
陽のあたるベッドの上で読書してた私はビクっとした。

散らばった厚さ0.1mmくらいのか弱い花びらは折り重なって花嫁のベッドみたい。

重なり合った花びらの真ん中に、
幾層にもなる花弁に包まれた何かが転がってい

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単純なピザトースト

土曜日なので、ゆったりと起きて朝ごはんの準備。

8枚切りの食パンは、冷凍庫に入れてたから変形してる。
いびつな形のまんまトースターへ入れ込む。

残り少ないケチャップを絞り出して薄く塗り、ナチュラルチーズはこんもりとのせる。

900ワットで3分後、薄っすらと焦げ目がつきはじめた。
チーズはジリジリジリジリまだ焼かれている。

その上にベランダで育てているフレッシュなバジルを5枚ほどのせる。

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