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天下をとった成瀬に嫉妬した話(本屋大賞おめでとうの気持ちを添えて)
今年の本屋大賞は『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社、2023、以下『成瀬』)であった。明るい黄色の背景に「LIONS」と書かれたユニフォームを身につけ、強い眼差しで前を向く少女の横顔が印象的な表紙は、普段あまり書店に行かない人であっても、一度は目にしたことがあるだろう。この書籍は3月の刊行以降この一年、どこの書店に行っても店頭の話題書コーナー、もしくは特設の「成瀬」コーナーで大々的な展開をされてい
もっとみるSaltburn|醜態を晒してでも、高嶺の花へ手を伸ばす。その姿が切ない
Saltburn2023年 / アメリカ / イギリス
監督:エメラルド・フェネル
出演:バリー・コーガン、ジェイコブ・エルロディ、ロザムンド・パイク…
story
オックスフォード大学に入学したオリバー(バリー・コーガン)は友達が出来ずに学生生活をスタートした。しかし些細な事件をきっかけに学園の人気者でお金持ちのフィリックス(ジェイコブ・エルロディ)と仲良くなり、親友になっていく。そして夏休
『クララとお日さま』(と『私を離さないで』をちょっとだけ見比べてみる)
カズオ・イシグロ作品では2作品目。最初に読んだのは『私を離さないで』だったので奇しくも類似の題材とされる作品。今回は少しだけ比較してみたい。カズオ・イシグロ作品についての専門家でもなんでもないので、とりあえず思ったことを書いているだけである。どうか夜道で刺さないでほしい。
話す前にあらすじ。
人工友人(AF)のクララは、病弱な女の子ジョジーの家に買われ、ジョジーの友人として生活することになる。
偉大な祖父とまだ何者でもない孫の物語にやられた - 『マルセル・マルソー 沈黙のアート』
マルセル・マルソー 沈黙のアートL'art du Silence
2022年 / スイス・フランス合作 / 88分
監督:マウリツィウス・シュテルクレ・ドルクス
文責=1世
おすすめ度 ★★★★☆
マルセル・マルソー、という名前をどのくらいの人が知っているのだろう。
ついでに筆者は20代だが不勉強ながら全く存じ上げなかった。
マルセル・マルソーはフランス出身のパントマイマーで「パントマイム
映画『Barbie』が見せてくれる「弱い夢」
文責: HAL
すでにpodcastの方で話をしているため蛇足にもなるかもしれないが、話し忘れていたような気がすることをメモ程度に書いておく。
マテル社公式サイトは、 バービー人形のキャッチコピーとして「You Can Be Anything(「あなたは何にだってなれる」)」を掲げている。このコピーが示すように、バービー人形は1960年代からずっと、少女たちの将来の幅広さ、多様さを提示する、モ