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悪い子のところにはロバート・マッコールが来るぞ!ー『イコライザー THE FINAL』

イコライザー THE FINAL

The Equalizer 3
2023年 / アメリカ / 109分
監督:アントワーン・フークア
出演:デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング


悪い子のところにはロバート・マッコールが来るぞ!

文責=1世
おすすめ度 ★★★★☆

デンゼル・ワシントン演じるロバート・マッコールさんが世に潜む悪党どもに正義の天誅を下すアクションシリーズの第3作

とはいうもののこのシリーズに関しては、アクション映画よりホラー映画に近いものかもしれない。この3作目を見るとそう思った。
そのくらいロバート・マッコールさんが強いのだ。
そして怖い。強すぎて怖い。

見たことない方へ向けて説明をしておくと、『イコライザー』シリーズはとにかくロバート・マッコールさんの人柄に触れるためにあると言っておこう。

元CIAの凄腕エージェントで現在は隠居の身。1作目の時点ではその地に塗れた過去を封印していたが、不眠症で夜な夜な読書に通うダイナーで顔見知りになった娼婦の女の子(演じるのはクロエ=グレース・モレッツ)が酷い目に遭ったことでその封印を解き、理不尽なまでの強さで敵を捩じ伏せる。

アクション映画数あれど、ロバート・マッコールさんほど強いキャラクターはいないんじゃなかろうか。そう思えるほどに圧倒的に強い
ロバート・マッコールさんが負けそうどころか劣勢に陥ることすらなく、敵は目をつけられた時点で死ぬことは確定してしまっている。問題となるのは「いつ死ぬか」「どう死ぬか」ということしか残っていない。
だから『イコライザー』を見ていると「理不尽」「不条理」という単語が浮かんでくる。普通はアクション映画でこんな単語あまり浮かばない。

やっぱりそう考えると、ロバート・マッコールさんってどっちかというとジェイソンやフレディみたいなホラー映画の殺人鬼の方に近いような…
彼の思想信念が正義にあるだけで、行われていることだけ取ればホラー映画の大量殺人と同じことだ。殺し方は洗練されて事務的な分こっちの方が残酷かもしれない。

でも、なんでみんなロバート・マッコールさんが好きなのか。それは彼が誰よりも正義と仁義を信じているからである。彼はタクシー運転手をしながら困っている人がいれば、その人を陰ながら助けてあげる。夢を持った若者がいれば彼らの後押しをしてあげる。そんな理想的な人物なのだ。
(その方法が悪党何百人を殺すことではあるのだが…)

圧倒的な正しさと圧倒的な暴力によって世直しをする、そんな姿を見て観客はドン引きする。そこがこのシリーズの良さだ。
敵はロバート・マッコールさんに目をつけられた時点で寿命が決まり、そこからどう足掻いても最後にはロバート・マッコールさんが現れて殺されてしまう。

今作『イコライザー THE FINAL 』はそんな「不条理」な存在としてのロバート・マッコールさんを真っ向から描く。その姿はもはやホラー映画の殺人鬼も超えて、イングマール・ベルイマン監督の『第七の封印』における死神のようなものにさえ見えてくる。

今回はたまたま通りかかったイタリアの港町をロバート・マッコールさんが気に入ったせいで、そこらで幅を利かせていた悪党どもの死が確定してしまう。幅を利かせた地元マフィアに「三週間前なら問題なかったが、今は私がいるからタイミングが悪い(趣旨)」と言い放つマッコールさんが怖い。
この映画におけるロバート・マッコールは善悪を区別し、善には救いを、悪には死を与えるシステムと化している。それってつまり天使であり、死神じゃないか。

3作目に至って、ロバート・マッコールさんはアクション映画の人気キャラでもなく、殺人鬼をも超えて、「世の常」となった。
もしあなたが悪行を働いた身に覚えがあるなら、今晩ロバート・マッコールが現れないように祈るしかない。



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