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Cinema note 1世

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『悪は存在しない』 根本的にドキュメンタリーのよう

『悪は存在しない』 根本的にドキュメンタリーのよう

story

山奥の小さな集落で暮らす寡黙な男 巧(大美賀均)とその娘 花(西川玲)。自然の中で何でも屋として慎ましい生活を送っている。そんな集落に東京からグランピング場建設計画の話が舞い込んでくる。既に建設時期も決定しているこの計画の説明会のため東京から高橋(小坂竜士)と黛(渋谷采郁)がやって来るが、説明会は住人たちの反発によって紛糾してしまう。そして高橋と黛はそのグランピング場の管理人を巧にお

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ARGYLLE/アーガイル | オチは考えず、ともかく話を転がそう

ARGYLLE/アーガイル | オチは考えず、ともかく話を転がそう

ARGYLLE/アーガイル2024年 / イギリス・アメリカ / 139分
監督: マシュー・ヴォーン
出演: ジェシカ・チャスティン、サム・ロックウェル、ジェシカ・チャスティン

story

凄腕スパイの活躍を描いた人気スパイ小説『アーガイル』。その作者のエリー(ジェシカ・チャスティン)はシリーズの結末をどうすべきか書きあぐねていた。気晴らしに愛猫アルフィーと旅に出たところ、スパイと名乗る謎の

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Saltburn|醜態を晒してでも、高嶺の花へ手を伸ばす。その姿が切ない

Saltburn|醜態を晒してでも、高嶺の花へ手を伸ばす。その姿が切ない

Saltburn2023年 / アメリカ / イギリス
監督:エメラルド・フェネル
出演:バリー・コーガン、ジェイコブ・エルロディ、ロザムンド・パイク…

story

オックスフォード大学に入学したオリバー(バリー・コーガン)は友達が出来ずに学生生活をスタートした。しかし些細な事件をきっかけに学園の人気者でお金持ちのフィリックス(ジェイコブ・エルロディ)と仲良くなり、親友になっていく。そして夏休

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シャクラ|このアクションは観客にも鍛錬を求める

シャクラ|このアクションは観客にも鍛錬を求める

シャクラ原題:天龍八部之喬峰傳
2023年/ 香港・中国 / 130分
監督:ドニー・イェン
アクション監督:谷垣健治
出演:ドニー・イェン、チェン・ユーチー、リウ・ヤースー

story

丐幇[かいほう]の幇主・喬峯[きょうほう](ドニー・イェン)は義に厚く周囲からの信頼も厚い武芸者だったが、副幇・馬大元殺しの濡れ衣を着せられた上、謎だった彼の出自が漢民族ではなく契丹人だと暴かれて丐幇を追放さ

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ファースト・カウ|あまりに資本主義的な一匹の牛さん

ファースト・カウ|あまりに資本主義的な一匹の牛さん

ファースト・カウFirst Cow
2020年 / アメリカ / 120分
監督 ケリー・ライカート
出演 ジョン・マガロ、オリオン・リー、トビー・ジョーンズ

【story】

西部開拓時代、オレゴンは毛皮を狙う狩猟グループで賑わっていた。そこで偶然出会った気弱なコックのクッキーと中国人のキング・ルーは成り行きで共同生活をすることになる。その町の有力者である仲買商がはじめてオレゴンに牛を連れてき

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伯爵 | ピノチェトが生き返った上に実は吸血鬼だった!

伯爵 | ピノチェトが生き返った上に実は吸血鬼だった!

伯爵El Conde
2023年 / チリ / 110分
監督: パブロ・ラライン

文責= 1世
おすすめ度 ★★★☆☆

アウグスト・ピノチェトが現代に蘇った!
しかも吸血鬼だった!

個人的にここ最近チリ映画づいている気がする。この夏に巷を賑わしていたストップ・モーションアニメ『オオカミの家』もチリ映画だったし、そのちょっと前にこの作品の監督パブロ・ララインの過去作『NO』(2012)を見

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悪い子のところにはロバート・マッコールが来るぞ!ー『イコライザー THE FINAL』

悪い子のところにはロバート・マッコールが来るぞ!ー『イコライザー THE FINAL』

イコライザー THE FINALThe Equalizer 3
2023年 / アメリカ / 109分
監督:アントワーン・フークア
出演:デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング

悪い子のところにはロバート・マッコールが来るぞ!

文責=1世
おすすめ度 ★★★★☆

デンゼル・ワシントン演じるロバート・マッコールさんが世に潜む悪党どもに正義の天誅を下すアクションシリーズの第3作。

とはいう

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偉大な祖父とまだ何者でもない孫の物語にやられた - 『マルセル・マルソー 沈黙のアート』

偉大な祖父とまだ何者でもない孫の物語にやられた - 『マルセル・マルソー 沈黙のアート』


マルセル・マルソー 沈黙のアートL'art du Silence
2022年 / スイス・フランス合作 / 88分
監督:マウリツィウス・シュテルクレ・ドルクス

文責=1世
おすすめ度 ★★★★☆

マルセル・マルソー、という名前をどのくらいの人が知っているのだろう。
ついでに筆者は20代だが不勉強ながら全く存じ上げなかった。

マルセル・マルソーはフランス出身のパントマイマーで「パントマイム

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【映画感想文】斬新、だが由緒正しいドラキュラ映画-『ドラキュラ/デメテル号最後の航海』

【映画感想文】斬新、だが由緒正しいドラキュラ映画-『ドラキュラ/デメテル号最後の航海』

ドラキュラ/デメテル号最後の航海The Last Voyage of the Demeter
2023年 / アメリカ / 119分
監督:アンドレ・ウーブレタル(『ジェーン・ドウの解剖』)
出演:コーリー・ホーキンズ、デヴィッド・ダストマルチャン

文責=1世
おすすめ度 ★★★☆☆

洋邦問わずヴァンパイアものが大ブームとなったのも、もう数年前。
すっかりほとぼりも冷めきっこのご時世で、ドラキ

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【映画感想文】「痛みを知る」とは「他者を知る」こと─『イノセンツ』

【映画感想文】「痛みを知る」とは「他者を知る」こと─『イノセンツ』

文責=1世
おすすめ度 ★★★☆☆

団地に住む子どもたちに超能力が発現する。
だがそれは特別なこととしては描かれない。ただ、この子たちの成長過程の一つとして、身長が伸びるように、乳歯が抜けるように、超能力はその一つでしかない。

『イノセンツ』はそんな超能力キッズたちを描いたスリラー映画だ。
設定だけ聞くと、超能力を通して思春期男子の荒ぶる胸の内を描いた『クロニクル』(2012)みたいなものを連

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【映画感想】『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』クローネンバーグの思想的集大成

【映画感想】『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』クローネンバーグの思想的集大成

文責=1世
おすすめ度 ★★★★☆

肉体変容、痛覚と快楽。
肉体にまつわるクローネンバーグの思想的集大成

自分の体内で臓器を生成。
それを摘出する様をパフォーマンスとして発表する現代アーティスト。

こんな奇想、誰が思いついたんだ。そして思いついたとして誰が映画にしようなんて考えたんだ。
そんな奴、デヴィッド・クローネンバーグしかいない。

今年で80歳になるクローネンバーグの最新作は前述の通

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【映画感想】マイ・エレメント

【映画感想】マイ・エレメント

おすすめ度 ★★★☆☆

設定のためのストーリー?
ストーリーのための設定じゃない?

火・水・土・風。4種族のエレメントたちが暮らすエレメント・シティ。そんな街で火と水の本来相容れない若者たちが恋に落ちる。

いかにもディズニー・ピクサーらしい設定。これは良くも、悪くもだ。ちょっとだけ悪くもが優勢かもしれない。

エレメント・シティの設定は“ピクサーらしさ”を形作るいくつかのラインの複合体と見る

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