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毎日読書メモ

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2022年3月の記事一覧

木内昇『茗荷谷の猫』『漂砂のうたう』(毎日読書メモ(283))

木内昇『茗荷谷の猫』『漂砂のうたう』(毎日読書メモ(283))

2011年に『漂砂のうたう』(集英社、のち集英社文庫)で直木賞を受賞した木内昇、読んでいて割と引っかかるので、気になりつつなかなか読めない。
過去の読書記録から、『茗荷谷の猫』(平凡社、のち文春文庫)と、『漂砂のうたう』の感想。

『茗荷谷の猫』:時代小説集?、と思ったら、1編ずつ時代が現在に近づいてきました。そして、別々の主人公の別々の物語だったのに、他の作品と確実につながっている。昔の東京の範

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わたしの本棚、自宅編(毎日読書メモ(282))

わたしの本棚、自宅編(毎日読書メモ(282))

わたしの本棚、前回(ここ)は実家で塩漬けになっていた本の写真だったので、今日は自宅で、カバーかけてない本の多そうな場所を撮ってみました。
今の家に引っ越した時に本を並べて、それから入れ替えてない本が多いので、たぶん15年位このラインナップで頑張ってます。
傾向が大体見えて、
村上春樹 付随してレイモンド・カーヴァ―
ディック・ブルーナ
谷川俊太郎
サンリオ
岩波少年文庫

辺りが見えてきますね。

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『やさしい猫』(中島京子)、わたしたちは何と多くのことを知らずに通り過ぎているのか(毎日読書メモ(281))

『やさしい猫』(中島京子)、わたしたちは何と多くのことを知らずに通り過ぎているのか(毎日読書メモ(281))

中島京子『やさしい猫』(中央公論新社)を読んだ。2020年から2021年にかけて読売新聞で連載されていた小説。不法滞在者とされ、入管(出入国在留管理庁)施設に収監されたスリランカ人男性と、彼を救おうとする日本人の妻、そしてその娘の物語であることはあらかじめ知って読み始めた。そして、2021年3月に、スリランカ人女性ウィシュマさん(ラトナヤケ・リヤナゲ・ウィシュマ・サンダマリさん)が名古屋の入管施設

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わたしの本棚(毎日読書メモ(277))

わたしの本棚(毎日読書メモ(277))

お題を見てやりたかった「わたしの本棚」、自宅の本棚がかなりカオスになっているのと、書店のカバーのかかっている本が多くて、写真を撮るとなるとカバー外して並べなおさないといけない状況で、そのまま撮影できない本棚を「わたしの本棚」と名乗っていいのか?、と葛藤して結局写真撮れず。
で、実家に来て、残っている本を見ていたら、写真撮れそうな感じに本が並んでいたので、撮ってみた。
30年近く塩漬けになっていた本

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『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』(川本直)、アメリカ文学史のはざまを読む(毎日読書メモ(279))

『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』(川本直)、アメリカ文学史のはざまを読む(毎日読書メモ(279))

川本直『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』(河出書房新社)を読んだ。この本を知ったきっかけは、朝日新聞の書評欄に著者インタビューが出ていたから(ここ)。

(本の紹介として、「日本では1文字も紹介されてこなかった」は雑だ。最後までこの本を読めば、日本での紹介の経緯もきちんと書かれている、まぁ、そこも虚構なんだけれど)

架空の作家を作り出して、実在のアメリカ文学史に切り込んでいるのか! どういう仕

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多和田葉子『雪の練習生』(毎日読書メモ(280))

多和田葉子『雪の練習生』(毎日読書メモ(280))

多和田葉子『雪の練習生』(新潮社、現在は新潮文庫)の読書メモ。

シロクマ三代記。小説をものする不思議な祖母、亡命に亡命を繰り返し、カナダで娘トスカを産み(その辺の描写が一気に幻想的になり、現実と境目がわからなくなる)、その娘は母が去ってきたドイツに戻り、サーカス芸に生きる。トスカに育児放棄されたクヌートは手さぐりで、人間に育てられ成長する。切ない。誰も北極の海は知らない。クマとしてのアイデンティ

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#ハイシスタ まとめ記事(毎日読書メモ(278))

#ハイシスタ まとめ記事(毎日読書メモ(278))

朝日新聞Hi sistaのオンラインイベント「『普通』にさようなら」のまとめ記事が昨日(2022/3/23)の夕刊に掲載されていた。
2月20日の樋口毅宏さんのトーク:感想ここ
3月3日の和田彩花さん、山崎ナオコーラさんのトーク:感想ここ
それぞれに響くことがいっぱいあったトークだったが、こうして、新聞記者がまとめると、要点がうまくまとめられていて、記者ってすごいな、と思う。
記事の見出しは「誰か

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図書カードが10万円分あったら何を買うか(毎日読書メモ(276))

図書カードが10万円分あったら何を買うか(毎日読書メモ(276))

昨日の、朝日新聞&図書カードNEXTのキャンペーン企画「#1万円のエール」について感じたこと(ここ)の続き。そこに、自由に使っていい図書カードがあったら何を買うか。

毎年4月に発表される本屋大賞、副賞は図書カードが10万円分である。
大賞受賞者がその10万円の図書カードで何を買ったかは、「本の雑誌」の記事で紹介される。
これまでの本屋大賞のページの中でも、過去の受賞者が何を買ったかが、紹介されて

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#1万円のエール(毎日読書メモ(275))

#1万円のエール(毎日読書メモ(275))

昨日(2022/3/20)の朝日新聞に、朝日新聞の好書好日と図書カードNEXTの共同広告が出ていて、「進学や就職のプレゼントに、図書カードNEXT」をお勧めしている。節目のお祝いに1万円の図書カードを贈ったら、それはどんな本になるだろう、という期待をこめた広告。

で、広告に出ていた本(9,977円相当)が、自分だったら選ばないな―、というセレクションだったので、なんだか引っかかって、書いてみる。

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恩田陸『愚かな薔薇』(毎日読書メモ(274))

恩田陸『愚かな薔薇』(毎日読書メモ(274))

年明けすぐに、本屋の店頭で見かけて、この子を連れて帰らない訳にはいくまい、とずしっとした本をお持ち帰りして、結局自宅で2ヶ月寝かせてしまった恩田陸の新刊『愚かな薔薇』(徳間書店)をようやく読んだ。
今だけ、普通のカバー(着物の柄みたいな絞りの入った花模様と星空の絵のモザイク)の上に、萩尾望都描き下ろしの期間限定カバーがかかっている(元々のカバーは、本を読み終わってから初めて眺めた)。伸ばした左腕か

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桐野夏生『緑の毒』(毎日読書メモ(273))

桐野夏生『緑の毒』(毎日読書メモ(273))

桐野夏生『緑の毒』(角川書店、現在は角川文庫)の読書メモ。桐野夏生の中毒性はなんなんだろう。読み始めると先が知りたくて必死に読み進める。そして誰一人共感できる登場人物がいないことに息苦しくなりながら、気持ちが一緒に破滅していく、そんな感じ。

一日で一気読み。あー、世の中にはひどい人間がいる、って小説だけどさ、いかにもいそう。ぐらぐらするね。愛の倒錯をこんな風に発露しちゃいかんだろ。登場人物みな歪

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山内マリコ『東京23話』(毎日読書メモ(272))

山内マリコ『東京23話』(毎日読書メモ(272))

山内マリコ『東京23話』(ポプラ社、現在はポプラ社文庫)の読書記録。
東京23区。それぞれの区に特徴があり、違う顔がある。中心的なエリアとか、象徴的な電車路線がある。とはいえ、すべての区に住んだことがあるとか、通学したり勤めたりしたことがある、という人もそんなに多くはあるまい。通りすがり的に持つイメージ。それも23区全部ではなく、よく知っている幾つかの区と、漠然としたイメージしかないそれ以外の区。

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佐藤多佳子『第二音楽室』『聖夜 ― School and Music』(毎日読書メモ(271))

佐藤多佳子『第二音楽室』『聖夜 ― School and Music』(毎日読書メモ(271))

佐藤多佳子『第二音楽室』、『聖夜 ― School and Music』(いずれも文藝春秋→文春文庫)の読書メモ。

第二音楽室:色んな年の自分が、音楽室で見たかもしれない光景。リコーダーカルテットの話はすてき、羨ましい感じ。バンドの葛藤の話は、自分の立ち位置を意識しすぎる今の若い子の姿を彷彿とさせて胸が痛い。ひとりひとりの心の姿が、くっきりと描かれていて、いい本でした。

聖夜:『第二音楽室』か

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『スコーレNo.4』(宮下奈都)(毎日読書メモ(270))

『スコーレNo.4』(宮下奈都)(毎日読書メモ(270))

宮下奈都『スコーレNo.4』(光文社文庫)の感想。

自分の身の丈、ということを考えさせられるビルドゥングス・ロマン。麻子のペースで呼吸し、考え、好きなものを好き、苦手な物を苦手、と思う。成長に伴い、いっぱいいっぱいと重いながら、豊かになっていく麻子がまぶしく、最後につかむ幸せを共に喜びたくなる、そんな本。地味でうまく褒めることが出来ないのに、宮下奈都の本はどれもいい!(2011年4月の読書記録よ

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