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木内昇『茗荷谷の猫』『漂砂のうたう』(毎日読書メモ(283))

2011年に『漂砂のうたう』(集英社、のち集英社文庫)で直木賞を受賞した木内昇きうちのぼり、読んでいて割と引っかかるので、気になりつつなかなか読めない。
過去の読書記録から、『茗荷谷の猫』(平凡社、のち文春文庫)と、『漂砂のうたう』の感想。

『茗荷谷の猫』:時代小説集?、と思ったら、1編ずつ時代が現在に近づいてきました。そして、別々の主人公の別々の物語だったのに、他の作品と確実につながっている。昔の東京の範囲、というのを感じさせてくれる(永井荷風の本みたい)。内田百閒へのオマージュ? 「隠れる」の不条理さに笑いました。人情系はややインパクトが弱い? どの話も唐突に終わる印象。しかし心に残る本。(2009年9月の読書記録)

『漂砂のうたう』:とっつきが悪く、読み進めるのに難航。明治初期の根津の遊郭。江戸時代からすべてががらっと変わったわけでない、ということを読み進めるうちに体感していく感じ。主人公は自らの意思で生家を飛び出し、何故、こういう生き方を選んだのか? それはやる気の問題なのか、経済の問題なのか。時代が激動したのだから、もっと何かを切り開いていくことも可能な感じだが、実際にそんなことが出来た人は本当に一握りだったのだろう。木内昇読むのは2作目だが、控えめな筆致で、時代を超越した(一読ではいつの時代の話か判別出来ない)ひとの心の機微みたいなものを描きたい、と思っているのか。(2011年9月の読書記録)


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