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#読書感想文

本を読んで感じた気持ちや考えたことを、言葉にしてnoteに残してみませんか?おもしろかった本の感想や学びを「#読書感想文」で教えてください!

人気の記事一覧

大下英治『小説 佐川疑獄』読書感想文

描かれていくのは、東京佐川急便事件。 一言でいえば、佐川マネーが政界にバラ撒かられた事件。 それ以上は、実はよく知らない。 バブルが崩壊するのと同時に、リクルート事件、イトマン事件などの大型経済事件があって、そのうちの1つに東京佐川急便事件があって、いずれも政治家が絡んでいるという薄い理解があるだけ。 少し整理すると。 1992年2月、東京佐川急便社長の渡辺広康は、特別背任容疑で東京地検特捜部に逮捕される。 これが、東京佐川急便事件。 そして渡辺の供述により、多くの政

大岡昇平『野火』読書感想文

読書をしているうちに大岡昇平を知る。 あちこちの本の巻末の解説に “ ケンカ大岡 ” の異名が登場してくる。 海音寺潮五郎には「史実を曲げている」と突っかかり論争になったとか。 井上靖は「フィクションが過ぎる」と突っかかられて、気の毒なことに論争になったとか。 松本清張にも。 ほっとけばいいのに「推測が浅い」と突っかかり論争になったらしい。 めんどくさそうな人、という印象があった。 それほどに言うのだったら、さぞかし史実に忠実で、フィクションも過ぎなくて、推測も深い

【少しだけ昔を語っても?】初のペーパーバックを出版してみて分かったことと気付いたこと、そして伝えられること。

やぁ、いらっしゃい。今日も来てくれてありがとう。 先日、初めてペーパーバック出版が完了しました▽ ※ペーパーバックとは電子書籍ではなく、リアルの紙本。教科書のように表紙が印刷された別紙を圧着した仕様。 触った質感などもしっかりと"本"になってます▽ 本書は私がnoteを始めるまでの数年間を遡った内容。 最近でこそnoteに転がり落ちてきた話をする機会も減ったけど、初期の頃から仲良くしてくれている方や、最初の記事を読んでくれた方は御存知の通り。人づてに引用されて知ってく

¥300

過去の呼び声で振り返る -小説『終わりの感覚』の面白さ

  【水曜日は文学の日】     年齢を重ねるにつれ、どれ程楽天的な人であっても、悔恨することが増えてきます。   イギリスの小説家、ジュリアン・バーンズによる2011年の小説『終わりの感覚』は、そんな老年の悔恨のありようをアイロニーにくるんで切れ味よく描いた傑作です。イギリス最高の文学賞、ブッカー賞を受賞しています。   引退した生活を送る平凡な老人トニーに、見知らぬ弁護士から連絡が来ます。   ある女性の遺言で、ある人物の日記を寄贈したいとのこと。その女性はトニーの昔の

アドラー「嫌われる勇気」の独自解釈

「変わらないと決めているんだろ?」色んな本を読んだけど、嫌われる勇気の 「過去にどんなことがあったかなど、あなたの『いま、ここ』にはなんの関係もない」 はいつまでも色褪せず僕の心の中にある。 僕の仕事は相談を受けるところから始まるし「過去のあの出来事のせいで変われない」「今の状況は自分にはどうしようもない」と耳にすることが割と多い。 でも、アドラーはこれに対し「過去にとらわれるのは、変わることへの『決心』がないためだ」と言う。 この「変わらない決心をやめる」という視点

『世にも奇妙な物語』好きは安部公房がキライなわけがない【エッセイ】

この文章は「今年(2024年)は、安部公房生誕100周年の年らしいよ!」なんて話を急にぶつけられても・・ と気が引けてしまうくらい控えめなあなたのための敷居をググッと下げた安部公房評です。 安部公房という作家の楽しみ方をお伝えできれば、というかぼくは安部公房をこうやって楽しんでますみたいな感じのが近いかと思います。 高校の授業でその名前くらい聞いた覚えはある気がするけど、なんとなく手に取るのをためらっていた人が読んでくれているなら、本稿はぴったりかもしれません。 じつは

競争すると、孤独になるのか?孤独が薄れるのか? 

先日、週刊文春WOMANにて東畑開人先生と対談した。とても楽しく勉強になったので、ぜひ読んでもらえたら嬉しい。kindle unlimitedでも読めるよ!  東畑先生は陽のオーラがすごく感動した。人文系でもっとも根が明るい人ではなかろうか。あっでも信田さよ子先生も根本的に明るそうな空気をまとっており感動したので、臨床心理士とは人を照らすくらいでないとできない仕事なのかもしれない……。 という話は置いておいて、対談のなかで東畑先生がおっしゃっていたことで「なるほど!」と思

¥500

『それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史』が面白かった話と家族制度について考える(最近考えている話・後編)

このnoteでは、『虎に翼』が今描いている結婚制度の是非について書いた。今回はその続きである。 「国が家族ごとに戸籍を与えるのがおかしい、欧米では個人で戸籍管理しているのだから日本もできるはず」という意見は至極全うだと思う。実際、マイナンバー制度は戸籍(家族単位で管理)から個人番号(個人単位で管理)に移行するためのものであるはずだ。だとすれば、日本的な家族共同体単位社会から、欧米的な個人単位社会(結婚はあくまで個人間の契約であり、家=先祖や親は関係ない)に移行するのが良い、

¥500

【絵本感想】『 三びきのやぎのがらがらどん 』

「 恐ろしいトロルが潜む橋へ。山羊たちは無事たどり着ける? 」 👑ミリオンセラーの絵本👑 絵:マーシャ・ブラウン 訳:せた ていじ 出版社:福音館書店 《 読書感想 》 以前から表紙の絵が気になっていたこの絵本、やっと読む機会に恵まれました。 最初、絵本の伝えたいことが分からなくて、何度も読み返して 「困難を克服する方法って一つじゃなくて、みんなそれぞれのやり方があるんだな」 と感じるようになりました。 最近では、危ないものを見せない・触れさせない風潮がありますよ

【絵本感想】『 わたしのワンピース 』

「 星空、花畑、そして冒険。夢が広がるワンピースをあなたに 」 👑ミリオンセラーの絵本👑 作:にしまき かやこ 出版社:こぐま社 《 読書感想 》 この絵本は、私の子どもの頃の思い出が詰まった大好きな一冊です。模様が次々と変わっていくワンピースに、子どもの私は夢中でした。「こんなワンピースがあったらいいなあ」と想像しながら、お話の世界にどんどん引き込まれていったのを、今でもよく覚えています。 ちなみに皆さんは、どの模様がお気に入りですか?私のお気に入りは「星の模様」

レイモンド・チャンドラー「待っている」読書感想文

ハードボイルドの大作家とは知っている。 現代の作家にもお手本にされていて、あちこちの本の作中で紹介もされている。 1回は読もうとは思っていたけど、今までに読んだハードボイルドって、それほど好きにはなれなかったので躊躇させていた。 しかしながら。 期待してない読書のほうがおもしろい場合が多々ある。 試しに読んでみた。 この本には、5編が収められている。 4つの中編と、1つの短編。 終わりにある短編の題名が『待っている』となる。 感想テイストがちがう。 今までなんだった

2024年おすすめ本①

今年、現時点で133冊読んだ。 年末にTwitterで今年の10冊を選ぶのだが、1年でたくさんの本と出会いすぎて難航しそうな予感だ。(嬉しい悩み) noteでも読書記録をなんらかの形で残しておきたいが、すべてはとても書ききれない。 そこで、読めてよかった!という今年の個人的傑作を1記事1冊で手短にまとめていこうと思う。 まず第一弾。 「おわりのそこみえ」図野象 〈あらすじ〉 「私に明日なんて必要ないし、夜は明けないほうがいい。」 スマホで消費者金融のアプリとマッチング

【絵本感想】『 みずいろのマフラー 』

「 友だちと呼ぶには、ぼくらは何か足りていなかったのかもしれない 」 👑切ない絵本👑 作:くすのき しげのり 絵:松成 真理子 出版社:童心社 《 読書感想 》 この物語を通して、ヨースケのお母さんの「寄り添う」優しさ、三人の絆を結びつけていく様子、そして切ない別れが心に深く響きました。 子どもが友達との関係に悩む時、親としてどんな風に見守り、支えていけるかを考えさせられますね。 そっと寄り添い、温かい気持ちで信じてあげることが、子どもたちの成長にとってどれだけ力

「内圧」を高める方法ー『書くことの不純』そして「桜井政博のゲーム作るには」

最近は「桜井政博のゲーム作るには」チャンネルを見ている。私はゲームをまっっっったくしない(というかできない、反射神経がないのだ……)のだが、そんな私ですらスマブラは触ったことがあるしそのときはカービィを選んでいた。それがどれだけすごいことか今ならわかる。本読んだことないし読むのも苦手な人がそれでも読んだことのある本、ということだから。内容はもちろん、動画の細部からカテゴリの分け方にいたるまで、桜井政博さんの思想や価値観が表れてて何から何まで勉強になる。(それにしても、桜井さん

¥500

ざわめきのリズムを感じて -ヘミングウェイ『日はまた昇る』の魅力

    【水曜日は文学の日】     一般的に流布されているイメージと、読んでみた感想が違う文学は結構あったりします。   ヘミングウェイの初期の小説『日はまた昇る』は、マッチョとしばしばいわれるこの作家の作品の中でも、都会と旅の魅力に満ちた、煌めきに溢れる作品のように思えます。その鮮やかな描写は、また、「マッチョ」とは別の魅力に感じるのです。 新聞記者のジェイクは、第一次大戦の戦場で受けた傷で性的不能になり、パリでその日暮らしをしています。   元看護婦のブレットとジェイ

【追悼】谷川俊太郎さんに救われた日々

悲しみがいっぱいの朝を迎えた。 ああ、谷川俊太郎さんが亡くなられてしまった。 ご高齢にも関わらず、ご活躍されていたのを陰ながら応援していたのに… 辛かった時、支えてくれたのは谷川俊太郎さんの詩だった。偉大な人だった。まだまだたくさんの言葉を残してくださると思っていたのに。 谷川俊太郎さんの詩との出会いは小学生の時。教科書に載っていた、「朝のリレー」と「生きる」という2編の詩は衝撃を受けた。「朝のリレー」ではカムチャッカの若者から始まり、地球に住む人々の大きなつながりを感じさ

【絵本感想】『 どろんこハリー 』

「 泥んこハリー、果たして家族は気づくのか?無邪気な冒険の物語 」 👑絵本ナビプラチナブック👑 文:ジーン・ジオン 絵:マーガレット・ブロイ・グレアム 訳:わたなべ しげお 出版社:福音館書店 《 読書感想 》 実は…私も小さい頃、母の実家近くの小川や田んぼに入って泥んこになっていた記憶が、なぜか今も残っているんです。 楽しくて夢中になったあの感覚は、時間がたっても忘れられません。 この物語のハリーも、まるでそんな無邪気な気持ちをそのまま表しているようで、心がほっ

話題の図書『わたしたちは売りたくない』について

今回は、話題の図書をご紹介 新m-RNAワクチン(レプリコンワクチン)の販売元である  明治製菓ファルマの営業マンたちが匿名チームで書いた本である。 こちらからサンプルを読むこともできるのでご参照を またこちらに内容の詳細も書かれています。 私自身は、この本を購入したわけではないので それでご紹介するのもなんだなあ・・・ という思いはございますが。 そもそものm-RNAワクチンに関して 何度テレビやマスコミの説明を聞いても ワクチンのメカニズムが理解できず 「これでほんと

読書日記|電車のなかで本を読む

 今回は島田潤一郎さんの本を拝読。1年くらい前から読みたい1冊でした。読むタイミングがうまくつかめずに、ようやく読めました。島田さんが本書で書く本の紹介は書評とも一味違う。  本の紹介でありながらも、私的な事と結びつけて書く読書エッセイという趣き。紹介されてる本の中では、岡崎武志さんの本が一番読みたくなりました。  島田さんの本も岡崎さんの本も、いつか読みたい本としてチェック済み。こうやって巡り合えたという事はきっと今が読み時なんだろうな。島田さんの文章から流れる優しくて

車窓から見た景色は

私は小さい頃から本を読むのが好きで、ひらがなが読めるようになった3歳頃(早いでしょ?)には、イソップ物語や日本昔ばなしから1話ずつが冊子になっていた、小さな本を毎月3冊買ってもらい、「読む」楽しさを味わっていた。 小学生になると、「誰がこんな厚い本読むの?」と驚きつつも、ハリーポッターシリーズは全作読破した。 仕事を始めると、仕事内容に関する書籍や哲学書を好み、手に取るようになった。 こんなに電子化が進み、気軽に読めるようになっても、紙媒体の本とは離れられないようだ。

 新しい本屋像から見えるこれから

 本屋さんを営む方の本を連続して読みました。早坂大輔さん島田潤一郎さんそして佐藤友則さん。早坂さんは生き方に悩んでいる方が読むと楽になるかも。そして個人店の店主さんならではの苦労もうかがい知れました。  島田さんは読書から離れたり遠ざかったりの読書遍歴なども面白い。どちらかというと島田さんは書く人のイメージが強いですが・・・。私がちょっとびっくりしたのは佐藤友則さんの本。  佐藤さんは本屋を経営するという観点からのお話がメイン。部分的には佐藤さんの人生についても触れられて

瀬戸内晴美「女の海」読書感想文

瀬戸内晴美を読まなければ。 のちの瀬戸内寂聴の『いのち』を読み終えて思った。 それを著す95歳の瀬戸内寂聴は、体の不調で書くこともできなくなりつつある。 ラストには自嘲する。 今まで400冊以上書いたがベストセラーがない。 もう片目が見えなくなっているし、ペンを持つ指も曲がっている。 それでも断筆することなく未練がましく書いていると、3ページほどとりとめもない。 が、最後の一文だけは力強い。 あの世から生まれ変わっても、私はまた小説家でありたい。それも女の。 こ

【絵本感想】『 ちいさなあなたへ 』

「 親でいる喜びと切なさが溢れる、永遠に大切にしたい一冊 」 👑絵本ナビプラチナブック👑 著:アリスン・マギー 著:ピーター・レイノルズ 訳:なかがわ ちひろ 出版社:主婦の友社 《 読書感想 》 この絵本は、娘の成長の喜びと同時に、時が経つことへの少しの寂しさも感じさせます。

思考をプリズムで見る -『スピノザ 実践の哲学』の面白さ

    【水曜日は文学の日】     人は誰かの考えていることを、説明したりします。しかし、それが本人が「本当に」考えていることかはわからない。場合によっては、その対象の誰か自身ですら分かっていない場合もあります。   フランスの哲学者ジル・ドゥルーズが書いた『スピノザ 実践の哲学』は、スピノザという一人の哲学者の思考を見事に取り出して描き、ドゥルーズの思想自体をも描けた素晴らしい書物です。 バルーフ・スピノザは、1632年、オランダのアムステルダム生まれ。いわゆる「汎神論

「ゼロ秒思考」を読んで

「ゼロ秒思考」読了いたしました。以前から気になっていた本で、通販ではなく、街中にある本屋さんで購入。ブックカバーとしおりをつけていただき、ご機嫌で持ち歩きながら秋の読書中。 このメソッド、随分普及していてあちこちのサイトでやり方含め見かけます。ただ、なぜこの方法がよいのか、メモの書き方としても、どんな効果があるのか、どのように管理して、どのように役立てるのかの応用、どんなグッズ(道具)が使いやすいかまでを解説していて、まさに「ゼロ秒思考大全」コンテンツでした。 ひとつのタ

「ほら話」の突破力~『ふくわらい』西加奈子(ほぼネタバレです)

今回は、西加奈子の長編小説「ふくわらい」を取り上げます。 グロテスク、猥褻、とされる場面が多い作品です。 ですので、好き嫌いがはっきり分かれることと思われます。 短くまとめると、 「異端な生い立ちの主人公(少女)が、様々な体験を通し、自我を確立させてゆく成長物語」 、、、なのですが、この小説は、設定・登場人物・展開の全てにおいて、他に類を見ることができないほど世間一般の「常識」や「倫理」を突き抜けているのです。 目を覆いたくなるようなシーンがこれでもかと出てくるので

日本には二大政党制は不向きなのではないか?

 この頃、選挙がつづく。日本では総選挙があり、アメリカでは大統領選挙があった。  アメリカでは、共和党と民主党という二大政党が定着している。  一方の政党がダメだと判断されれば、他方の政党へという政権交代が起こりやすい。前政権で決められたことも覆されることがある。ガラッと変わる。  日本ではどうか?  この前の選挙で、一強多弱の状態はなくなった。数字の上では、野党が1つにまとまれば新たな政権が生まれることになるが、民意はそれを望んでいるとは言えない。なぜなら、比較第一党は選

きらめきと抒情の記録 -チェーホフの短編の美しさ

  【水曜日は文学の日】     短編には長篇にはない良さがあります。短いからこそ、人生を圧縮して集中して味わうことができる。   『桜の園』等の戯曲でも名高いロシアの作家、チェーホフの短編は、そんな短編小説の醍醐味を堪能できる逸品ぞろいです。 アントン・パーヴロヴィッチ・チェーホフは、1860年ロシア生まれ。モスクワ大学で医学を学びながら、雑誌に短編を発表して生計を立てます。大学を卒業後、医師として働きつつ、本格的な戯曲も書いて、旺盛な文学活動を広げています。   『決

フォロワー数を増やす一見遠回りな「近道」

たとえば、自分のビジネスを始めたいとき。 どうやって新しい層の集客をしようか、どうやって新しくたくさんフォロワーを増やしたらよいのだろうかと考える。それは人脈を広げる交流会に参加することかもしれないし、たくさんフォロー周りをすることかもしれない。何はともあれ、それは必要なことだと、信じて疑わなかった。 でも逆らしい。 新しい人脈じゃなくて、すでにあるひととのつながり。 新しいフォロワーじゃなくて、すでにいてくれるひと。 遠回りに見えて、これが大切なんだと。 心当たり

江國香織さんのエッセイに癒された

江國香織さんのエッセイ集「やわらかなレタス」を読んだ。 日常の切り取り方や感性がすてきで、どんどん惹き込まれた。 どのお話も食べ物がとても美味しそうに書かれていて、味、香り、舌触りなど最後までおいしい妄想でいっぱいになりながら楽しめた。 無性に食べたくなったのは、ところてんとのり弁とフランスパンとポタージュ。 お腹が空いている時に読むと、胃がくぅ〜となって、幸せな空腹感が増す。あれもこれも食べたい!と、食いしん坊な自分がでてきた。 お腹がいっぱいの時に読んでも美味しそう

世界の熱に触れる旅 -小説『蒸気で動く家』の面白さ

    【水曜日は文学の日】     ある作品が、その作り手の中で例外的な存在でありながら、それ故に美しく感じられることがあります。   『八十日間世界一周』や『海底二万哩』といった空想科学小説で知られるジュール・ヴェルヌが1880年に発表した冒険小説『蒸気で動く家』は、彼の特徴が出ながらも、彼の作品群からやや逸脱した面白さのある作品です。   インスクリプトから「ジュール・ヴェルヌ 驚異の旅 コレクション」の一冊として翻訳出版されており、原作の優れた挿絵を全てつけて、冒険に

「自分のスキルをアップデートし続けるリスキリング」を読んで

「自分のスキルをアップデートし続けるリスキリング」読んでいます。まだ読了まで行っていないのですが、あと少しで読み終えます。 図書館内を歩いていて赤いタイトル文字が目に留まり、「こういう本も読んでみようかな」くらいの気持ちで手に取りました。 導入文に そんなくだりからもう、飛ばしまくっています。その後著者の方は海を渡って華麗なる転身を遂げ、今ではリスキリングに特化した非営利団体を設立されました。 本文に続く文章は、このプロセスからのリスキリングノウハウなので、実に説得力

青春の熱気を叫ぶ -シュルレアリスム文学の面白さ

  【水曜日は文学の日】   イメージというのは、それが何に基づいているかが重要に思えます。   20世紀初頭の、いわゆるシュルレアリスム運動によって生まれた文学や絵画は、強烈なイメージを持ちつつ、その来歴を考えさせてくれる作品群です。 シュルレアリスムの運動自体は、同時多発的に色々と起きているのですが、きっかけは第一次大戦であり、そのメインストリームは、大戦中に始まったダダの活動から始まっていると考えていいでしょう。   特に重要なのは「チューリヒ・ダダ」。スイスのチュ

ついやってしまいがちな子育ての間違い【10選】

こんにちは、ほんたんです。 今回は𝕏で投稿したらけっこう反響があった、「子育ての間違いトップ10」について書きます。 今までいろいろな育児書や児童心理学の本を読んできました。そのなかで学んだことは、「成功する子育て」は運などもあるため再現性は低いですが、「失敗する子育て」は再現性があるということです。 子どもの気持ちを踏み躙ったり、無理やり言うことを聞かせたりしてしまうと間違いなく失敗します。失敗の定義は、非社会的な行動をとるようになったり、ひきこもり、暴力をふるうなどの

名著という言葉でも足りない。佐々涼子『エンド・オブ・ライフ』

読み終わるのに2週間かかった。ノンフィクションで読了するのにこれだけ時間をかけた本は初めてだ。 本書は在宅医療の現場を取材したノンフィクション作品である。 ※Amazonアソシエイト参加中。 多くの患者さんたちの人生の最期を切り取った作品だ。ひとつひとつのエピソードが私がこれまで考えてこなかった、(目を背けていたと言ってもいいのかもしれない)ことばかりだった。 人生の最期は正解があるのではなく、それぞれの家族で正解を見つけるしかないのだと知った。 亡くなるタイミング

谷崎潤一郎『痴人の愛』

このところ、谷崎潤一郎の作品を青空文庫で読み漁っています。 紙の本では、『文章読本』や『陰翳礼讃』を読み、独特の美意識や文豪らしい風格を感じていました。 若い頃には『細雪』上下巻を読み、阪神間の優雅な暮らしぶりに憧れを抱きました。 noteにも何度か感想を投稿していますが、ちょっと妖しげな谷崎ワールドにすっかり魅了されています。 『痴人の愛』 なんとなく、この小説には、インモラルなイメージがあり、好奇心はありましたが今まで敬遠してきました。 カフェで見初めた15歳の少女

虚無のパノラマ「楢山節考」~深沢七郎(ネタバレ有)

深沢七郎の「楢山節考」(1956年)は、日本に古来から伝わる「姥捨伝説」を題材として書かれた短編小説です。 古くからの民話としてはいくつかのバージョンがありますが、捨てられることを回避するために老婆が知恵をめぐらす内容のものや、「人道的」「敬老的」な立場から、この風習に対する批判がこめられたものが主なようです。 しかし、「楢山節考」では、この「姥捨」(口減らし)というしきたりは疑念をはさむ余地もない善行として肯定されているのです。 そして、リアルで残酷な世界が情容赦なく

大好きな本を語る 外国文学

「好きな本は何?」 こう聞かれたら、私は5時間おしゃべりします。 1,語りたくて仕方なかった本 大好きな本について思い切り語れる、この時間がきました! 実は、この「大好きなシリーズ」は、この記事で5つ目になります。 5つの記事を経て、私が自信をもって言えることがあります。 この「大好きなシリーズ」は、私の記事の中でもっとも文章が下手です! 大変残念なことに、何度書き直してもうまく書けないのです!! 大好き過ぎて、もう大好きとしか言えないのです!!! どんな物

「イノセント・ディズ」早見和真さん(読書感想文)(*ネタばれ注意)

田中幸乃(ゆきの)という 25才の死刑囚の無罪の描写。 P36 「う、生まれてきて、 す、すみませんでした」 と、法廷で述べる幸乃。 まず、違和感があった。 幸乃は、母が17才のとき 生んだ子だけど、 野田氏と再婚し、 義姉の陽子と4人で 楽しく暮らしていた。 母が事故死して、野田氏が 「お前(幸乃)じゃなくて、妻が 必要だったんだ」 と、言われる。 今までにない、義父の壊れよう。 そこから、自分は必要とされないと 思い込み、 誰かから必要とされたら、 何でもする子にな

 読書日記|今日のごちそう

 今回橋本紡さんの小説を拝読しました。料理にまつわる短編が、沢山掲載されています。中にはほろっとする話もあって、短時間で読み終えました。ざっくりいうと料理や食事と恋愛や家族の問題を絡めた作品でしょうか。  どうしようもない恋愛も、元気が出るお話もバリエーションは豊富。収録されている話が多すぎて、たまに似た話が続いたのがちょっと気になりました。それを差し引いても満足な読書タイムでした。  私は元気が出る話が好きなので、どうしてもそういうテイストの話の余韻がずっと残っています

大好きな本を語る オマージュ

「好きな本は何?」 この質問に、「美術館で買った本でもいい?」と変化球で答えても良いでしょうか? 1,その本は謎 本というものは、奥深いものです。 今回私が皆様に語りたいのは、とある美術館で買った本です。それは、ある本の「オマージュ」作品の絵本だそうです。 「オマージュ作品」。 また新たな大好きが出来ました。 ですので、、、 またも、語ります!! 2,大好きな本 オマージュ それでは発表します。 私が好きな謎の絵本は、、、 『EDNE』 junaida

【最近読んだ本】自分だけの「東野圭吾ミニフェア」など

9月から読んだ本の記録を残していなかったので、ざっくりと覚書き程度に書いておこうと思う。 まずは、東野圭吾作品から。 久しく読んでいなかったが、5月に『ブラックショーマンと名もなき町の殺人』を読んで、やっぱり面白いなと思った。それから最近、連続して作品を読んだ。ここ3~4年に発刊された比較的新しいものばかりだ。 いわば、自分だけの「東野圭吾ミニフェア」。 最近読んだクスノキのシリーズは、ミステリーというより「ほっこり」系。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』のように、ややファンタジー要

河合隼雄さん

私に得意科目があったとしたら きっとたぶん 得意科目は 「悩むこと」 だったと思います 本当には今起こっていない事を心配して 縦にしたり横にしたりあれこれ 終わった事をあれこれ パンみたいにこねちゃって 先の事を考え 心配しすぎて 困っている 困っている自分に困っている 悩む事にずいぶん熱心だったから 今年 note をはじめてから色んな事を思い出します 好だった音楽、好きだった小説、好きだった絵の事、好きだった洋服の事 ともかく「好きな事」

料理エッセイに浮かぶ風景

 懐かしくて、温かい。井上荒野さんのエッセイを読んで、久々にしんみりした気分。特にお雑煮にまつわるエッセイで、幼少期の思い出がふっと湧き上がってきました。  井上さんのご実家は博多式のお雑煮だったとの記述から、我が家のお雑煮史について、いくばくかの思いをはせて・・・。私は九州出身ですから井上さんのお家と近い雑煮かと思ったら、随分違うもの。  お雑煮ってバリエーションが豊富で、フォーマルなようで実はプライベートな食べ物だと思う。最も家庭の匂いが出やすい料理。小さい頃の思い出

訃報 | せなけいこさん

 今朝の新聞で、絵本作家のせなけいこさんが亡くなったことを知りました。  甥っ子と姪っ子が小さかった頃、せなけいこさんの絵本を読み聞かせしたことがあります。今でも私の家には、せなけいこさんの絵本があります。  せなけいこさんの息子さんは、私の大好きな言語学者の黒田龍之助さんです。  せなけいこさんと黒田龍之助さんのことは、それぞれ別々に存じ上げていました。  黒田龍之助さんの語学エッセイを読んでいるうちに、どのような環境で育てられた人なのだろう?、と少し気になって調べた

若林正恭さん「ナナメの夕暮れ」を読んで

このエッセイ本の中に書かれていたことと同じように思っていたことがたくさんあって、ぶんぶん首を縦に振りながら、くすりとしたり、ほろりとしたりしながら一気に読み終えた。 私は、社会に馴染めずにいた時期があった。今は表面上は馴染んでいる……と思いたい。 「今の私は本当の自分じゃない」とずっと自分にバッテンをつけていたし、本当の自分はどこだどこだ?とずっと探していたし、周りのみんなが味方ではないように感じていた。 みんなが平気で出来ているように見えることが、自分には全然出来ない。

癒してくれたのは優しいエッセイたちだった。

病み上がりや持病の調子が悪いとき、 ああしんどいなぁ…とため息がもれてしまう、 そんなときは心がほっこりするエッセイが読みたくなる。 今日はそんなエッセイ2冊を紹介します。 以前書いたことがあるのですが、 わたしはほとんどエッセイというものを 読んだことがなかったんです。 数冊くらいで、最後に読んだのは 壇蜜さんの壇蜜日記の1だったかな。 そこで去年からnoteで記事を書き始めたことで、 色んな方のエッセイを読んでみようかな?と ふと思い始め、1番最初に選んだのが こ

「つらい真実 虚構の特攻隊神話」を読むー戦中派で特攻隊に自分も行くのが当然と考えていた筆者がたどり着いたのは、腐敗し官僚化した軍隊の姿でした

 帰還を望めない体当たり攻撃。その第一陣の海軍の「敷島隊」「大和隊」が初めて出撃し、大和隊の予備士官久納好爭中尉(法政大出身)が第一号の特攻(戦果無し)をしたのは2024年からみて80年前の10月21日のことでした。その攻撃方法自体は、時として日本を含む各国で他に生還の手段がない状況下、自発的に行われることはありました。しかし、作戦レベルで大量に生還不可能な攻撃方法を実施したのは、太平洋戦争当時の日本だけでした。  筆者の小沢郁郎氏は、まえがきで「六歳で満州事変、一二歳で日

くま読書 私の身体を生きる

たまに、テーマとして書きにくいことをがんばって書いてみようと思う時がある。 書きにくいことは「死」であったり 「性」の話でもあったりする。 なぜ書きにくいのかというと、書きことばに落とし込むためにある種の慎重さが必要だからだ。 慎重に書かなければいけないのに、なぜ書きたいのかというと 自分が真面目に考えたい気持ちがあるからこそ、であって。 誰しもが抱えているからこそ、でもある。 私は、蔦屋書店で見かけてからずっと気になっていた、ある一冊の本を拝読した。 読後は私

【思考は現実化する 下】 読書#143

みなさん、いつもお世話になっております! 本日は、私の投稿の軸とする一つ「本」「読書」に関して書かせていただきます。 自己紹介に書いたマイルールを守りながら、私の大好きな本について書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします! 今回は、世界的ベストセラー! テーマは、タイトル通りものごとを現実化するための ”思考” だと考えます。 ヘッダーは、真染さんの作品を使わせていただきました! ありがとうございます!! 目次 基本情報ナポレオン・ヒル (著) きこ書