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神話論理4周目

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#哲学

人間の起源とは? -神話にみる”心”の存在分節・意識分節と、空海の『吽字義』の世界 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(14)

人間の起源とは? -神話にみる”心”の存在分節・意識分節と、空海の『吽字義』の世界 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(14)

区別されたものについての知能と
区別することについての智慧見えるとか、見えないとか

感覚できるとか、できないとか

あるとか、ないとか

そういうことを言えることを可能にしている、構造というか、アルゴリズムというか、流れというか、システムというか、なんとも言えないようなこと

”それ”を外から分節すると、もう”それ”ではなくなってしまうなにか

それに惹かれながらも、この感覚世界を”それ”の象徴

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”心”の意味分節システムを発生させる鍵は”両義的媒介項”にあり  -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(13)

”心”の意味分節システムを発生させる鍵は”両義的媒介項”にあり -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(13)

4歳になる下の子を保育園に送る途中のこと。犬が石畳の道を歩いていた。

犬の四本の足が、それぞれいそがしく宙に持ち上げられては石畳に降ろされる。そのとき、パタパタというか、パシパシというか、パラパラというか、冬の空気にぴったりな音がする。

その、わたしにとっては ”犬 の 足音” である音。

その音を聞いて、下の子がいう。

「足あとの、声がする!」



足跡の声
私: 犬 / の / 足

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深層意味論的神話分析「料理の火の起源」神話と理趣経における「平等」の概念 -区別されたもの/区別すること を区別する -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(12)

深層意味論的神話分析「料理の火の起源」神話と理趣経における「平等」の概念 -区別されたもの/区別すること を区別する -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(12)

* * * *

生のものと火を通したもの、新鮮なものと腐ったもの。こういった「経験的区別」が「概念の道具となり、さまざまな抽象的観念の抽出に使われ」る様を、さらにはその抽象的観念がつなぎ合わされて「命題」になる様を観察しようというのが、レヴィ=ストロース氏の『神話論理』の試みである。

生のもの / 火を通したもの
新鮮なもの / 腐ったもの
||
<<経験的区別>>

<<抽象的観念を抽出す

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深層意味論的神話分析「病の起源」神話 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(11)  --媒介項の活動を八極への分節として言語化する

深層意味論的神話分析「病の起源」神話 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(11)  --媒介項の活動を八極への分節として言語化する

前回までの記事はこちら↓

人間が動物に変身する?”媒介項”こそ、クロード・レヴィ=ストロース氏が『神話論理』で描き出す神話の論理の世界を読み解く鍵である。



神話では互いに異なり対立関係にあるはずの二極のあいだで、一方から他方への移動や、一方から他方への変身が語られる。ここで二項は対立関係の両極にあるものとして分離され区別・分節されながらも、同時に一つに結びつけられる。一つに結ばれるといっ

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レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(10) ”変身する媒介者”が世界を出現させる-空海の「心」と神話論理

レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(10) ”変身する媒介者”が世界を出現させる-空海の「心」と神話論理

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を意味分節理論の観点から”創造的”に濫読する試みの第10回目。

前回の記事はこちらです。

一連の記事はこちらでまとめて読むことができます。これまでの記事を続けて読まなくても、今回だけでもお楽しみいただけます。

前回、前々回と『神話論理』の冒頭に置かれた”基準神話”「コンゴウインコとその巣」から、いくつもの二項対立関係が付かず離れず、分かれつつ結ばれ

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深層意味論的神話分析「装身具と葬儀の起源」神話における、自然と文化のあいだを跨ぐことの象徴 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(9)

深層意味論的神話分析「装身具と葬儀の起源」神話における、自然と文化のあいだを跨ぐことの象徴 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(9)

(前回の記事(第8回)はこちら↓)

水の起源、装身具の起源レヴィ=ストロース氏の『神話論理I 生のものと火を通したもの』を意味分節理論として読む。

前回は『神話論理』の冒頭に置かれた”基準神話”「コンゴウインコとその巣」から、いくつもの二項対立関係が付かず離れず、分かれつつ結ばれる様子を抽出してみた。

今回はこれに続き、第二番目に掲載された神話「水と、装身具と、葬式の起源」を詳しく読んでみよ

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基準神話「鳥の巣あさり」の分節分析 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(8)

基準神話「鳥の巣あさり」の分節分析 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(8)

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を意味分節理論の観点から”創造的”に濫読する試みの第8回目。

一連の記事はこちらでまとめて読むことができます。
もちろん、これまでの記事を続けて読まなくても、今回だけでもお楽しみいただけます。

(前回の記事(第7回)はこちら↓)

コンゴウインコとその巣レヴィ=ストロース氏の『神話論理I 生のものと火を通したもの』の「序曲」につづき、いよいよ本論「主

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レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(7) 二項関係は四項関係であり四項関係は二重の四項関係つまり八項関係である

レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(7) 二項関係は四項関係であり四項関係は二重の四項関係つまり八項関係である

(前回の記事(第六回)はこちら↓)

レヴィ=ストロース氏の『神話論理I 生のものと火を通したもの』を深層意味論・意味分節理論として読む。今回は神話について”記述する”とはなにをすることかという話である。

神話、音楽、詩、絵画

神話に限らず、ある何かのことを別の何かで記述する場合、そこには八項関係が動いており、複数の八項関係だけがあり、八項関係たちの「外」はない。これが前回までの趣旨である。

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レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(6) 『神話論理』×空海『十住心論』 -言語の分節を多重化し、「心」の分節も多重化する

レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(6) 『神話論理』×空海『十住心論』 -言語の分節を多重化し、「心」の分節も多重化する

(前回の記事(第五回)はこちら↓)

三重のコード『神話論理I 生のものと火を通したもの』の序文に次の一節がある。

前回も少し触れたが、改めてコードが三重である点に注目して読もう。

一次的コード:言語のコード=分節システム

二次的コード:神話が語ることのコード=分節システム

三次的コード:二次的コードを設定するコード(神話の分節システムを発生させている分節システム)、と仮に言い換えておこう

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レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(5) 人類の思考の”底”〜ニ段重ねの四項関係としての「構造」

レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(5) 人類の思考の”底”〜ニ段重ねの四項関係としての「構造」

(前回の記事(第四回)はこちら↓)

前回は『神話論理I 生のものと火を通したもの』の「序曲」「I」を読みながら「神話は果てしなく続く」ということについて論じました。

「神話は果てしなく続く」というのはつまり、神話論理がとらえようとしている「構造」が、「始まり」と「終わり」の二項対立や、他のあれこれの二項対立の”どちらか”に振り分けられて止まってしまうような代物ではない、ということであり、神話論

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レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(2) 経験的区別を概念の道具とする

レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(2) 経験的区別を概念の道具とする

クロード・レヴィ=ストロース著『神話論理I 生のものと火を通したもの』(原題:Mythologiques - Le Cru et le cuit)は、「序曲」と銘打たれた文章から始まる。

この本については以前にも他の記事で取り上げたことがあるが、今回は細かく精読してみようということで、何年かかるかわからないが最初から順番に読んでみよう。

序曲の冒頭、私が個人的にも非常に気に入っており、ほとんど

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レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(1) 空海の曼荼羅-「心」と『神話論理』を並べて深層意味論として読む

レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(1) 空海の曼荼羅-「心」と『神話論理』を並べて深層意味論として読む

はじめに。空海の「心」と、「野生の思考」空海著『秘密曼荼羅十住心論』は、その名の通り「心」の十のあり方についての論として読むことができる。

『十住心論』を読む以前、私自身も現代人の素朴な常識に従って、”「心」のあり方は一つで、それは身体の脳神経か何かに還元して説明し尽くせるのではないか?”などというふうに考えていた。

しかし空海によれば、”心”の世界はもっと広大無辺である。

しかも、”心”は

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