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元消化器外科医・病院経営再建奮闘医 「病院で働くということ」By Dr.エリプス 病…

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元消化器外科医・病院経営再建奮闘医 「病院で働くということ」By Dr.エリプス 病院で働く意義・病院運営・人事労務について 現場・管理者 両方の立場でわかりやすく説明します。

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  • 「病院で働く」ということ・・・ Dr エリプス

    「病院で働く」こととはどういうことか。 外科医として25年以上を経過し、これから職業人として残された時間にできることはなんだろう、とふと考えました。 そこで、臨床の現場で実際に働いている人間が、どんなことを感じ、なにに楽しさや苦悩を感じ、どのように患者さんとコミュニケーションをとり、病院という組織で周囲と関係を気付きながら、どんなふうに働いているのかを、飾らない言葉で世間に発してみようと思い立ちました。 病院に勤務している医療関係者やこれから医療機関で働くことを目指して勉強している学生さん、病院受診をされる患者様、ただただ興味本位の方まで、「医者って(外科医って)こんなこと考えているんだ」「病院の仕事ってこんな感じか~」「うちの会社とはちがうなあ」なんて思っていただけるような内容にしていければと考えています。 週1回くらいのペースで更新していきます。 是非ご覧いただければ幸いです。

記事一覧

【追悼】元同僚・救急医の急逝に思う

また一人、若かりし日にお互いを切磋琢磨した仲間が亡くなった。 それも自分自身で人生のピリオドを打つという形で。 どうしようもない虚無感の中でこの文章を書いている。…

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【病院で働くということ】・・・Vol.16:若手スタッフの心が折れるとき

 病院のような忙しい職場で、過酷な環境下で働く若手スタッフが急に働けなくなってしまうことがあります。緊張の糸が切れるとか、最近では心が折れる、などと言われること…

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医師のキャリアアップを考える(卒後15年目くらいから30年目くらいまで)

 医師のキャリアアップについて、これまで研修医~卒後5年目くらいまで、そして専攻医~卒後15年目くらいまでの期間について書いてきました。 今回はそれ以降の卒後15年目…

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13日前
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【病院で働くということ】・・・Vol.15:高齢医師の悲哀

「医師は何歳まで働けるのでしょうか?」  一部の公的病院や大学病院などを除き、医師には決まった定年退職の年齢がないと思われます。  開業医の先生には90歳近くでも…

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2週間前
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【病院で働くということ】・・・Vol.14:どうして消化器外科医になった?

「どうして外科医になろうと思ったのですか?」 と時々聞かれます。 質問の相手が医療者と非医療者では多少答え方は変わってきますが、基本的には 「手術という治療手段…

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3週間前
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入院中の看護師との会話で大切なことを教えます

 皆さんが病気などで病院に入院するとおそらく医師よりもずっと身近に感じる存在は看護師さんではないでしょうか。  看護師は医師の指示のもと、様々な医療行為(点滴…

Dr.エリプス
1か月前
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【病院で働くということ】・・・Vol.13:不平・不満ばかりのひととの付き合い方

 現状に不平が多く、周囲に不満ばかりぶつける人、周りにいませんか。 そういう人のほとんどが自分で問題を解決できない人だと思います。  自身に問題解決能力がないこと…

Dr.エリプス
1か月前
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【病院で働くということ】・・・Vol.12:ゲームと鏡視下手術

 自分が小学生であった40年以上前のこと、任天堂から初代ファミリーコンピューターが発売された。その後、スーパーファミコンが発売されて大ヒット。多くの子供たちがゲー…

Dr.エリプス
1か月前
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医師のキャリアアップを考える(専攻医~卒後15年目くらいまで)

 医師のキャリアアップについて、前回は研修医~卒後5年目くらいまでの期間について書きました。今回は専攻医といわれる時期の後半(卒後5年目前後)から15年目くらいまで…

Dr.エリプス
1か月前
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【病院で働くということ】・・・Vol.11:医師によるパワハラの土壌

 医師の医療現場によるパワハラ行為はパワハラという言葉が世の中に診とする前からあったと聞いています。医療現場における「働き方改革」と比べると影が薄いですが、とて…

Dr.エリプス
2か月前
5

【病院で働くということ】・・・Vol.10:寝起きが良いことは医療者としての才能

 もともと眠りが浅い体質からなのか、夜間の電話呼び出しが常時あるからなのか、夜中であっても物音にすぐに反応できます。夜間の地震にはほぼ気付くし、携帯の呼び出し音…

Dr.エリプス
2か月前
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医師との会話で大切なことを教えます

「お医者さんと話をするのは緊張する、何を聞いたらいいか分からない」 という声をよく聞きます。  間違ったことは聞いちゃいけない、素人が勝手な判断はしてはいけない、…

Dr.エリプス
2か月前
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【病院で働くということ】・・・Vol.9:つらい時ほど笑顔で

 だれでもつらい時、しんどい時はあります。イライラもするし、むかつきます。でも自分の心の中はどうであれ、それを隠して無理矢理にでも笑顔でいる方が結果的に周りも自…

Dr.エリプス
2か月前
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【病院で働くということ】・・・Vol.8:外科医が苦しむとき

 外科医が最も苦しいと感じる時、それは予想外の合併症が起こった時なのではないでしょうか。  想定通りに行かないことは外科医という診療科を選んだ医師は少なからず経…

Dr.エリプス
2か月前
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医師のキャリアアップを考える(研修医~卒後5年目くらいまで)

 医師は医学部を卒業して国家試験に合格し、臨床研修医になった瞬間から医師としてのキャリア形成が始まります。ここでいうキャリアとは臨床医としての経験を積んでいくこ…

Dr.エリプス
2か月前
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【病院で働くということ】・・・Vol.7:病床稼働率を気にする経営者

民間病院にありがちであるが、病床稼働率が下がってくると経営陣がソワソワし始める。経営サイドから現場に向け、「入院患者を増やして」だの、「救急車断るな」などと指令…

Dr.エリプス
3か月前
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【追悼】元同僚・救急医の急逝に思う

【追悼】元同僚・救急医の急逝に思う

また一人、若かりし日にお互いを切磋琢磨した仲間が亡くなった。
それも自分自身で人生のピリオドを打つという形で。
どうしようもない虚無感の中でこの文章を書いている。

彼とは同じ病院に赴任して出会った。共にそろそろ中堅医師として周囲から認められつつあった頃であり、自信と不安が混在する精神状態のまま激務をこなしていた。

彼とは外科医と救急医という立場の違いはあれ、救急診療に全力を注いでいた時代の盟

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【病院で働くということ】・・・Vol.16:若手スタッフの心が折れるとき

【病院で働くということ】・・・Vol.16:若手スタッフの心が折れるとき

 病院のような忙しい職場で、過酷な環境下で働く若手スタッフが急に働けなくなってしまうことがあります。緊張の糸が切れるとか、最近では心が折れる、などと言われることがありますが、果たしてどんなときでしょうか。

 長時間勤務が続き過剰なストレス環境に身を置かざるを得なくなると、心身ともに徐々に不調になっていきます。それだけで精神的に大きな負荷がかかっている状態といえるのですが、さらにストレスによる不

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医師のキャリアアップを考える(卒後15年目くらいから30年目くらいまで)

医師のキャリアアップを考える(卒後15年目くらいから30年目くらいまで)

 医師のキャリアアップについて、これまで研修医~卒後5年目くらいまで、そして専攻医~卒後15年目くらいまでの期間について書いてきました。
今回はそれ以降の卒後15年目くらいから30年目くらいまでの医師としてのキャリアアップについて書きたいと思います(まさしく私の世代です)。

 既に取得するべき専門医や認定医・資格は取り終え、各施設において指導的な立場であったり、主要メンバーとしての活躍が期待さ

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【病院で働くということ】・・・Vol.15:高齢医師の悲哀

【病院で働くということ】・・・Vol.15:高齢医師の悲哀

「医師は何歳まで働けるのでしょうか?」

 一部の公的病院や大学病院などを除き、医師には決まった定年退職の年齢がないと思われます。
 開業医の先生には90歳近くでも毎日診療を行っている方もいますし、以前には100歳を超えて診療を続けておられた故・日野原重明先生もいらっしゃいました。

 ただ当然のごとく年齢を重ねれば診療の質はどんな高名な医師でも低下します。医師という国家資格は患者さんの診療に大

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【病院で働くということ】・・・Vol.14:どうして消化器外科医になった?

【病院で働くということ】・・・Vol.14:どうして消化器外科医になった?

「どうして外科医になろうと思ったのですか?」
と時々聞かれます。

質問の相手が医療者と非医療者では多少答え方は変わってきますが、基本的には

「手術という治療手段をつかって患者さんの病気やケガを治すのは、外科医にしかできないから」

といった答えをしています。

学生時代に様々な診療科で実習をして、手術が業務のなかに入っている診療科は治療に診療の重心があり、病気を治す医者になる、と勝手に思い

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入院中の看護師との会話で大切なことを教えます

入院中の看護師との会話で大切なことを教えます

 皆さんが病気などで病院に入院するとおそらく医師よりもずっと身近に感じる存在は看護師さんではないでしょうか。

 看護師は医師の指示のもと、様々な医療行為(点滴や採血・看護処置など)を行うだけでなく、入院中に必要な生活の補助(着替え・入浴や清拭・トイレの介助など)まで行うことになるため、必然的に入院中に関わる機会も多くなります。

入院患者さんからは、
「こんなこと看護師さんにお願いしていいん

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【病院で働くということ】・・・Vol.13:不平・不満ばかりのひととの付き合い方

【病院で働くということ】・・・Vol.13:不平・不満ばかりのひととの付き合い方

 現状に不平が多く、周囲に不満ばかりぶつける人、周りにいませんか。
そういう人のほとんどが自分で問題を解決できない人だと思います。
 自身に問題解決能力がないことはもちろん、その方法を探す努力も持ち得ない人です。

 誰もが自分に降りかかる問題や課題のすべてを自分ひとりで解決はできません。仮に周囲に不満を聞いてもらって周囲の助けにより解決につながることはあっても、多くの不平・不満は単なる愚痴で終わ

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【病院で働くということ】・・・Vol.12:ゲームと鏡視下手術

【病院で働くということ】・・・Vol.12:ゲームと鏡視下手術

 自分が小学生であった40年以上前のこと、任天堂から初代ファミリーコンピューターが発売された。その後、スーパーファミコンが発売されて大ヒット。多くの子供たちがゲームに夢中になっている中で、自分はあまりはまらなかった。親にねだっても買ってくれなかったこともあるが、友達に行けば遊ぶことができたし、それなりに楽しかった思い出はあるのだが、実はそれほど夢中になった記憶がない。

 大学を卒業し研修医にな

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医師のキャリアアップを考える(専攻医~卒後15年目くらいまで)

医師のキャリアアップを考える(専攻医~卒後15年目くらいまで)

 医師のキャリアアップについて、前回は研修医~卒後5年目くらいまでの期間について書きました。今回は専攻医といわれる時期の後半(卒後5年目前後)から15年目くらいまでの医師としてのキャリアアップの考え方を書きたいと思います。

 医師として臨床経験5年目くらいになると、専門とする領域の疾患は一通り経験し、早ければ専門医取得が視野に入ってきます。診療科によっては「一人前」な臨床医として周囲から認めら

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【病院で働くということ】・・・Vol.11:医師によるパワハラの土壌

【病院で働くということ】・・・Vol.11:医師によるパワハラの土壌

 医師の医療現場によるパワハラ行為はパワハラという言葉が世の中に診とする前からあったと聞いています。医療現場における「働き方改革」と比べると影が薄いですが、とても大きな問題です。

 以前のブログでも書きましたが、多くの職種が働く病院という組織は、事業の形態としては「業務集約型」事業です。
 一方で売上である診療報酬の大半は、医師が行う診療行為により発生しているという現実があります。
 そこに医師

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【病院で働くということ】・・・Vol.10:寝起きが良いことは医療者としての才能

【病院で働くということ】・・・Vol.10:寝起きが良いことは医療者としての才能

 もともと眠りが浅い体質からなのか、夜間の電話呼び出しが常時あるからなのか、夜中であっても物音にすぐに反応できます。夜間の地震にはほぼ気付くし、携帯の呼び出し音は2コール目には出られます(携帯を取り落として出られなくなることはあるけど)。

「え、先生起きてたんですか?」

と電話越しに言われるくらい普通に電話に出るので相手はびっくりするらしいです。

 まあ、あくまでも返事をはっきりしているだけ

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医師との会話で大切なことを教えます

医師との会話で大切なことを教えます

「お医者さんと話をするのは緊張する、何を聞いたらいいか分からない」
という声をよく聞きます。
 間違ったことは聞いちゃいけない、素人が勝手な判断はしてはいけない、というプレッシャーもあるかもしれなません。

 医師も人間なので、疲れている時も機嫌が良くないこともあります。でも基本的に目の前の患者の訴えはきちんと聞く意志をもっているので、会話の冒頭から患者さんやご家族のお話を否定することはないと思い

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【病院で働くということ】・・・Vol.9:つらい時ほど笑顔で

【病院で働くということ】・・・Vol.9:つらい時ほど笑顔で

 だれでもつらい時、しんどい時はあります。イライラもするし、むかつきます。でも自分の心の中はどうであれ、それを隠して無理矢理にでも笑顔でいる方が結果的に周りも自分自身も気分が良くなることに気がつきました。

 これまで私も「先生の元気そうな笑顔につらいときに救われました」と言われたこともあります(自分としては、結構しんどかった時期もありましたけれど)。

 病院を受診される患者さんは、こちらの

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【病院で働くということ】・・・Vol.8:外科医が苦しむとき

【病院で働くということ】・・・Vol.8:外科医が苦しむとき

 外科医が最も苦しいと感じる時、それは予想外の合併症が起こった時なのではないでしょうか。
 想定通りに行かないことは外科医という診療科を選んだ医師は少なからず経験するはずですが、当初の想定以上の患者さんの病状悪化や、患者本人・ご家族からの結果が良くないことに対する叱責は精神的には非常に堪えます。

 もちろん治療前には様々なリスクを想定し、患者さんやご家族へその説明も行い、十分理解をしてもらってか

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医師のキャリアアップを考える(研修医~卒後5年目くらいまで)

医師のキャリアアップを考える(研修医~卒後5年目くらいまで)

 医師は医学部を卒業して国家試験に合格し、臨床研修医になった瞬間から医師としてのキャリア形成が始まります。ここでいうキャリアとは臨床医としての経験を積んでいくことを指し、研究・学位取得などのアカデミックキャリアのことではありません(こちらの話は別の機会にしたいと思います)。

 まず医師になって5年間は通常研修医・専攻医として臨床医としての研鑽を積むことになります。ここで大切なことは、とにかくた

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【病院で働くということ】・・・Vol.7:病床稼働率を気にする経営者

【病院で働くということ】・・・Vol.7:病床稼働率を気にする経営者

民間病院にありがちであるが、病床稼働率が下がってくると経営陣がソワソワし始める。経営サイドから現場に向け、「入院患者を増やして」だの、「救急車断るな」などと指令が出ることがある。

現場の言い分としては、ベッド状況に関わらず緊急の患者は受け入れているし、そもそも病床稼働率に合わせて入院の適応基準は変わらないということ。

ベッド稼働率が病院経営に大きなインパクトを与えることは理解するが、空床を目

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