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【病院で働くということ】・・・Vol.12:ゲームと鏡視下手術

 自分が小学生であった40年以上前のこと、任天堂から初代ファミリーコンピューターが発売された。その後、スーパーファミコンが発売されて大ヒット。多くの子供たちがゲームに夢中になっている中で、自分はあまりはまらなかった。親にねだっても買ってくれなかったこともあるが、友達に行けば遊ぶことができたし、それなりに楽しかった思い出はあるのだが、実はそれほど夢中になった記憶がない。
 
 大学を卒業し研修医になった頃に消化器外科の領域にも腹腔鏡手術が導入され、いまではロボット支援手術といった高度先進医療も出現し、体腔内にスコープ(カメラ)と手術器具を挿入して手術を行う鏡視下手術は主流となった。
 
 自分が鏡視下手術を始める頃、子供時代にゲームに慣れ親しんだ同世代より手技が劣ってしまうのではないか、といった不安があった。モニター画面を通して3次元のものを2次元で映された術野で思い通りの操作をするのは、ゲームに夢中になっていた世代の方が得意なのではないか、と。
 
 結果的にはまったくその心配は杞憂に終わり、これまで数多くの鏡視下手術を上級医師の指導のもと、経験を積んでからは同僚や部下たちと担当させていただいた。結局は解剖学的な知識と経験から得た技術の習得が手術には大きく影響していたということだった。
 
 これまで一緒に手術に入った若い先生たちに繰り返して伝えてきたのは、
 
「手術は事前のイメージトレーニングと基本技術の反復練習、そして終わった後の振り返りが大切」ということ。
 
 後で気付いたが、これは競技スポーツの指導者が言うことと同じ。学生時代から野球やサッカーやラグビーを夢中になってやってきた経験の方が、ゲームで得られる2次元の感覚よりも手術には好影響だったかもしれない、と今では思っている。


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