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元消化器外科医・病院経営再建奮闘医 「病院で働くということ」By Dr.エリプス 病…

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元消化器外科医・病院経営再建奮闘医 「病院で働くということ」By Dr.エリプス 病院で働く意義・病院運営・人事労務について 現場・管理者 両方の立場でわかりやすく説明します。

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  • 「病院で働く」ということ・・・ Dr エリプス

    「病院で働く」こととはどういうことか。 外科医として25年以上を経過し、これから職業人として残された時間にできることはなんだろう、とふと考えました。 そこで、臨床の現場で実際に働いている人間が、どんなことを感じ、なにに楽しさや苦悩を感じ、どのように患者さんとコミュニケーションをとり、病院という組織で周囲と関係を気付きながら、どんなふうに働いているのかを、飾らない言葉で世間に発してみようと思い立ちました。 病院に勤務している医療関係者やこれから医療機関で働くことを目指して勉強している学生さん、病院受診をされる患者様、ただただ興味本位の方まで、「医者って(外科医って)こんなこと考えているんだ」「病院の仕事ってこんな感じか~」「うちの会社とはちがうなあ」なんて思っていただけるような内容にしていければと考えています。 週1回くらいのペースで更新していきます。 是非ご覧いただければ幸いです。

最近の記事

【病院で働くということ】・・・Vol.15:高齢医師の悲哀

「医師は何歳まで働けるのでしょうか?」  一部の公的病院や大学病院などを除き、医師には決まった定年退職の年齢がないと思われます。  開業医の先生には90歳近くでも毎日診療を行っている方もいますし、以前には100歳を超えて診療を続けておられた故・日野原重明先生もいらっしゃいました。  ただ当然のごとく年齢を重ねれば診療の質はどんな高名な医師でも低下します。医師という国家資格は患者さんの診療に大きな影響を与えるものですので、年齢低下から来る診療の質の低下が認められた場合には

    • 【病院で働くということ】・・・Vol.14:どうして消化器外科医になった?

      「どうして外科医になろうと思ったのですか?」 と時々聞かれます。 質問の相手が医療者と非医療者では多少答え方は変わってきますが、基本的には 「手術という治療手段をつかって患者さんの病気やケガを治すのは、外科医にしかできないから」 といった答えをしています。 学生時代に様々な診療科で実習をして、手術が業務のなかに入っている診療科は治療に診療の重心があり、病気を治す医者になる、と勝手に思い込んでいた自分に合っている気がしました。 特に消化器外科では消化管を吻合する

      • 入院中の看護師との会話で大切なことを教えます

         皆さんが病気などで病院に入院するとおそらく医師よりもずっと身近に感じる存在は看護師さんではないでしょうか。  看護師は医師の指示のもと、様々な医療行為(点滴や採血・看護処置など)を行うだけでなく、入院中に必要な生活の補助(着替え・入浴や清拭・トイレの介助など)まで行うことになるため、必然的に入院中に関わる機会も多くなります。 入院患者さんからは、 「こんなこと看護師さんにお願いしていいんだろうか」 「忙しそうで呼べない」 ということも聞きます。 確かに急性期の入退院

        • 【病院で働くということ】・・・Vol.13:不平・不満ばかりのひととの付き合い方

           現状に不平が多く、周囲に不満ばかりぶつける人、周りにいませんか。 そういう人のほとんどが自分で問題を解決できない人だと思います。  自身に問題解決能力がないことはもちろん、その方法を探す努力も持ち得ない人です。  誰もが自分に降りかかる問題や課題のすべてを自分ひとりで解決はできません。仮に周囲に不満を聞いてもらって周囲の助けにより解決につながることはあっても、多くの不平・不満は単なる愚痴で終わることが多く、それを受け止める人は相応のエネルギーを奪われます。  管理者や上

        【病院で働くということ】・・・Vol.15:高齢医師の悲哀

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        • 「病院で働く」ということ・・・ Dr エリプス
          18本

        記事

          【病院で働くということ】・・・Vol.12:ゲームと鏡視下手術

           自分が小学生であった40年以上前のこと、任天堂から初代ファミリーコンピューターが発売された。その後、スーパーファミコンが発売されて大ヒット。多くの子供たちがゲームに夢中になっている中で、自分はあまりはまらなかった。親にねだっても買ってくれなかったこともあるが、友達に行けば遊ぶことができたし、それなりに楽しかった思い出はあるのだが、実はそれほど夢中になった記憶がない。  大学を卒業し研修医になった頃に消化器外科の領域にも腹腔鏡手術が導入され、いまではロボット支援手術といっ

          【病院で働くということ】・・・Vol.12:ゲームと鏡視下手術

          医師のキャリアアップを考える(専攻医~卒後15年目くらいまで)

           医師のキャリアアップについて、前回は研修医~卒後5年目くらいまでの期間について書きました。今回は専攻医といわれる時期の後半(卒後5年目前後)から15年目くらいまでの医師としてのキャリアアップの考え方を書きたいと思います。  医師として臨床経験5年目くらいになると、専門とする領域の疾患は一通り経験し、早ければ専門医取得が視野に入ってきます。診療科によっては「一人前」な臨床医として周囲から認められつつある時期かもしれません。  しかし実際のところ、自分一人ですべての症例の治

          医師のキャリアアップを考える(専攻医~卒後15年目くらいまで)

          【病院で働くということ】・・・Vol.11:医師によるパワハラの土壌

           医師の医療現場によるパワハラ行為はパワハラという言葉が世の中に診とする前からあったと聞いています。医療現場における「働き方改革」と比べると影が薄いですが、とても大きな問題です。  以前のブログでも書きましたが、多くの職種が働く病院という組織は、事業の形態としては「業務集約型」事業です。  一方で売上である診療報酬の大半は、医師が行う診療行為により発生しているという現実があります。  そこに医師が他のすべての職種の上に立っているという医師側の勝手な誤解を生み、現場にひずみを

          【病院で働くということ】・・・Vol.11:医師によるパワハラの土壌

          【病院で働くということ】・・・Vol.10:寝起きが良いことは医療者としての才能

           もともと眠りが浅い体質からなのか、夜間の電話呼び出しが常時あるからなのか、夜中であっても物音にすぐに反応できます。夜間の地震にはほぼ気付くし、携帯の呼び出し音は2コール目には出られます(携帯を取り落として出られなくなることはあるけど)。 「え、先生起きてたんですか?」 と電話越しに言われるくらい普通に電話に出るので相手はびっくりするらしいです。  まあ、あくまでも返事をはっきりしているだけで頭が覚醒しているわけではないので、話の前半の内容が理解できず、もう一度聞き直し

          【病院で働くということ】・・・Vol.10:寝起きが良いことは医療者としての才能

          医師との会話で大切なことを教えます

          「お医者さんと話をするのは緊張する、何を聞いたらいいか分からない」 という声をよく聞きます。  間違ったことは聞いちゃいけない、素人が勝手な判断はしてはいけない、というプレッシャーもあるかもしれなません。  医師も人間なので、疲れている時も機嫌が良くないこともあります。でも基本的に目の前の患者の訴えはきちんと聞く意志をもっているので、会話の冒頭から患者さんやご家族のお話を否定することはないと思います。  今一番つらいことは何か、いつから症状があるのか、これまでの経過はどだっ

          医師との会話で大切なことを教えます

          【病院で働くということ】・・・Vol.9:つらい時ほど笑顔で

           だれでもつらい時、しんどい時はあります。イライラもするし、むかつきます。でも自分の心の中はどうであれ、それを隠して無理矢理にでも笑顔でいる方が結果的に周りも自分自身も気分が良くなることに気がつきました。  これまで私も「先生の元気そうな笑顔につらいときに救われました」と言われたこともあります(自分としては、結構しんどかった時期もありましたけれど)。  病院を受診される患者さんは、こちらの気分や精神状態なんて全く関係なく診察を受けられているわけで、不機嫌モード・疲労感

          【病院で働くということ】・・・Vol.9:つらい時ほど笑顔で

          【病院で働くということ】・・・Vol.8:外科医が苦しむとき

           外科医が最も苦しいと感じる時、それは予想外の合併症が起こった時なのではないでしょうか。  想定通りに行かないことは外科医という診療科を選んだ医師は少なからず経験するはずですが、当初の想定以上の患者さんの病状悪化や、患者本人・ご家族からの結果が良くないことに対する叱責は精神的には非常に堪えます。  もちろん治療前には様々なリスクを想定し、患者さんやご家族へその説明も行い、十分理解をしてもらってから治療に入るわけですが、それでも治療後の合併症はある一定の割合で起こりますし、予

          【病院で働くということ】・・・Vol.8:外科医が苦しむとき

          医師のキャリアアップを考える(研修医~卒後5年目くらいまで)

           医師は医学部を卒業して国家試験に合格し、臨床研修医になった瞬間から医師としてのキャリア形成が始まります。ここでいうキャリアとは臨床医としての経験を積んでいくことを指し、研究・学位取得などのアカデミックキャリアのことではありません(こちらの話は別の機会にしたいと思います)。  まず医師になって5年間は通常研修医・専攻医として臨床医としての研鑽を積むことになります。ここで大切なことは、とにかくたくさんの症例を経験し、臨床感覚を鋭くしていくこと。特に初期臨床研修医として勤務が

          医師のキャリアアップを考える(研修医~卒後5年目くらいまで)

          【病院で働くということ】・・・Vol.7:病床稼働率を気にする経営者

          民間病院にありがちであるが、病床稼働率が下がってくると経営陣がソワソワし始める。経営サイドから現場に向け、「入院患者を増やして」だの、「救急車断るな」などと指令が出ることがある。 現場の言い分としては、ベッド状況に関わらず緊急の患者は受け入れているし、そもそも病床稼働率に合わせて入院の適応基準は変わらないということ。 ベッド稼働率が病院経営に大きなインパクトを与えることは理解するが、空床を目立たなくするため、経過良好な早期退院希望患者にも退院を延期させる、など本末転倒の

          【病院で働くということ】・・・Vol.7:病床稼働率を気にする経営者

          「病院で働くということ」・・・Vol.6 医師に対する評価

          医師は病院内外で、様々な方法・角度から評価を受けます。 患者さんやその家族はもちろん、ともに働くコメディカルスタッフ、雇用主である経営者、同僚・上司(指導医)・部下である医師などからです。 その評価はかならずしも一致するわけではなく、 「あの先生は患者さんの受けはいいのに、看護師には嫌われている」とか、「あの先生は経営者からは高評価なのに、現場スタッフには不人気」などさまざまな形で評価されています。 そもそも人が人を評価すること自体どんな業界でも難しいことですし、その評

          「病院で働くということ」・・・Vol.6 医師に対する評価

          「病院で働くということ」・・・Vol.5:理解できない相手と

          病院内で働いていると、どうしても理解できない考えや行動をする人がいます。 なぜそこでそんなことを言う? なぜそういう振る舞いをする?  などなど。 多くはその人の行動が自分の予想・期待通りではないことに起因していると思いますが、やはり理解不能は人との関係はストレスですよね。 その人の置かれた立場や社会的背景やこれまでの言動から、 「まあそういう人なんだろうなあ」 という想像がつけばいいのですが 時には想像を超える理不尽な行動で周囲に悪影響を及ぼす人もいます。

          「病院で働くということ」・・・Vol.5:理解できない相手と

          なくなっていい病院なんてない。

          病院経営を取り巻く環境はは依然厳しい状況が続いています。各種調査では全国の病院の7割は赤字経営と言われており、地方・公立病院ではその傾向が顕著です。 日本の病院の約7割、診療所では8割が民間(個人・医療法人)であり、経営悪化は即事業停止、すなわち閉院につながります。2021年の医療機関の休廃業・解散・倒産件数は600件に上り、2016年以降も増え続けています(帝国データバンクより)。 医療機関が診療を休止する理由はさまざまですが、少子高齢化や地方での過疎化による診療圏の人口減

          なくなっていい病院なんてない。