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【病院で働くということ】・・・Vol.15:高齢医師の悲哀

「医師は何歳まで働けるのでしょうか?」

 一部の公的病院や大学病院などを除き、医師には決まった定年退職の年齢がないと思われます。
 開業医の先生には90歳近くでも毎日診療を行っている方もいますし、以前には100歳を超えて診療を続けておられた故・日野原重明先生もいらっしゃいました。
 
 ただ当然のごとく年齢を重ねれば診療の質はどんな高名な医師でも低下します。医師という国家資格は患者さんの診療に大きな影響を与えるものですので、年齢低下から来る診療の質の低下が認められた場合には周囲がきちんと対応すべきですし、患者さんに大きな迷惑がかからないようにするべきです。ただ、この見極めを自分自身でするのは意外に難しいのではないかと思います。
 
 仮に病院で高齢の医師が勤務している状況では、医師を含めた複数の医療スタッフがその医師の診療をサポートすることになり、徐々にミスが増えて診療の質の低下が明らかになる前に診療の制限や停止が検討されると思います。
 病院管理者はその医師の貢献度と診療の質の両方を鑑み、どこまで何をさせるのか、病院の信用低下につながらないようにコントロールをしなくてはいけません。
 
 個人医院など管理者である医師が自身以外にいない場合でも、多くの場合は自身の診療レベルをある程度把握していることが多いと思われ、機会を見て一線を退き、後任に道を譲る(もしくは診療を終了する)ことが一般的です。
 ただその機会を失ってしまったり、医師自身が診療レベルを誤認している可能性もあり、一緒に診療に携わる周囲のスタッフがどこまでそれに気づき対応をしていくかが非常に重要です。
 
 これまで診療レベルの低下した高齢医師の危なっかしい診療を何度か経験してきました。個人的には医師の定年を一律に決める必要はないものの、自動車の運転免許のような高齢者講習会や免許更新制も議論されても良いのではないかと思っています。
 もちろん決して若くはない自分も、今後年齢を重ねるに従い、きちんと周りの声には耳を傾け、かならず訪れる引退時期はしっかり見極めたいと思っています。


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