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「病院で働く」ということ・・・ Dr エリプス

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「病院で働く」こととはどういうことか。 外科医として25年以上を経過し、これから職業人として残された時間にできることはなんだろう、とふと考えました。 そこで、臨床の現場で実際に…
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【病院で働くということ】・・・Vol.29:勤務医が歳をとって感じた自分のカラダのこと

今回は少し自分自身のことを書いてみようかと思います。 現在私は地方の小規模病院で病院管理者をやっておりますが、1年前までは市中の中規模病院で消化器外科医をやっておりました。 研修医の頃から外科医に憧れ、そのまま四半世紀を外科医として過ごし多い時で年間300例近い手術(半分以上は執刀医として)に携わってきました。 外科医を辞めた理由はいくつかありますが、やはり年齢的にキツくなったことは大きな要因です。 これについて少し振り返ってみたいと思います。   年齢による変化 40代

医師のキャリアアップを考える:女性医師のこれから

女性医師の現状 現在医師になる世代はほぼ男女比は同数と言えるのではないでしょうか。 当然女性医師数は過去20年でも右肩上がりです。   その女性医師がどのような診療科を選択するか、これは男性医師にも同じことが言えると思いますが、それぞれの興味やライフプランの中でどのような専門領域を選んでいくのか、私自身その傾向を注意深くみています。   診療科の選択とライフプラン 以前より女性は妊娠・出産・子育てがあるため医師としてのキャリアには障害となると言われていましたが、もはやそ

【病院で働くということ】・・・Vol.28:外科医という仕事と求められる適性

「外科医」という仕事 外科医という仕事にはいろいろな業務があります。 一般的に言われるのは「手術」を仕事の中心に据えた業務ですが、 私自身は内視鏡もやるし、病棟業務や健診業務、 さらには小規模病院に異動した現在では、内科疾患全般を診療する通常外来も行います。 手術という侵襲を伴う治療を行う以上、患者さんの術前・術後の状態管理は厳密に行う必要があります。 また患者さんやご家族からの信頼を得るためには多くの時間をかけて準備を行い治療内容の説明を行うだけでなく、治療後の経過も

「ありがとう」のひとことの効果

ありがとうの効果 医療の現場は常に患者さんの健康と命を預かり、 医療サービスという使命もあって緊張を強いられます。 程度の差はあれ、忙しさとは常に向き合っていかなければ いけない職場であることは間違いありません。   そんな張り詰めた職場の雰囲気であっても、 働く人たちの周囲への心配りや、心持ちで環境は大きく変わります。   どんなに忙しい現場にあっても 「ありがとう」 「お陰で助かった」 と言われると、 お互いの気持ちがほぐれ、ほっとする一瞬が得られることは だれも

【病院で働くということ】・・・Vol.27:業績目標は病院経営に必要か?

【病院経営における業績目標】 公立の病院ではあまりなじみがないかもしれませんが、民間の医療法人や病院では月単位や年間の売上目標などが診療科・部門・医師ごとにそれぞれ設定されることがあります。 私は以前勤めていた中規模病院で診療科の責任者だっこともあり、経営陣から年度初めに売上目標を(やや一方的に)設定されていました。 しかし、このような業績目標は病院や介護施設にはそぐわない印象があります。 【病院における業績目標の意義】 病院の収入である診療報酬は国が定めた公定価格

【病院で働くということ】・・・Vol.26:意志を貫くこと、周りの意見を聞くこと、のジレンマ

2つのジレンマ 「目標に向かって自分の意志を貫きなさい」   と言われる でもそれをやりつづけていると   「周りからの忠告に耳を傾けなさい」   と言われることもある   どちらも正しいことですが、時によって相反する状況になり得ます。 自分の意志を必死に貫こうとすれば、周りと衝突することもあり 周りの声を聞こうとすれば、自分の意志を曲げないといけないこともある ということです。   独自のスタイルを貫き通せるのは一部の特殊な人だけかもしれません。 それでも 周りの

医師のキャリアアップを考える:番外編2・専門医取得の意義

今回は医師のキャリア形成の中での専門医を取得することの意義を書いてみたいと思います。   医療現場での専門医が持つ意味 専門医とは自身が専門とする領域を標榜する意味でその名称から明確なものではありますが、取得した専門領域における診療能力を万人が認めた、とまで言えるものではありません。 私を含めた医療人の感覚は 「学会が認定した教育施設で、専門医として経験すべき最低限の症例数・治療経験を積み、忙しい合間を縫って必要最小限の学会発表や論文執筆をし、癖のある上司(多種多様、と

【病院で働くということ】・・・Vol.25:医師の採用と入職

良い医師の採用は病院にとって生命線  病院にとって、患者に優しく、病院の評判を高める医師を採用し、多くの患者さんの診療を行ってもらうことは非常に重要なことであり、医師を採用することはその病院の命運を左右すると言っても過言ではありません。    医師が病院に入職する場合、大学の医局からの派遣や人材派遣業者(この場合は医師に特化した会社)、その病院関係者からの紹介をうける場合などが多く、医師が自身で病院に自分を売り込んで入職するケースは比較的少ないと思います(もちろん一部にはい

【病院で働くということ】・・・Vol.24:病院を退職する人に思うこと

病院スタッフの退職 病院という組織は(病院だけではないかもしれませんが)、非常に入退職の多いところです。 一年中人の出入りはありますが、特に3月・9月は人事異動の季節であり、どこの病院でも退職者は多いのではないでしょうか。     退職する人の理由や事情 退職するにはそれなりの理由や事情があります。 職場の雰囲気や業務内容・人間関係がうまくいかずに退職する人 自分のキャリアをさらに高めるために転職する人 家族の都合で転居や転職となる人などなど。   それでも私は退職予

【病院で働くということ】・・・Vol.23:その人がいないと回らない現場はどうなのか

その人がいると出来る業務 その人がいないと出来ない業務    言葉としては同じようですが、実際にはかなり違います。  特定の人のみが出来る業務は、その人がいなければ出来ないことを意味しますが、職種により業務内容が異なることを指すわけではなく、同じ職種であっても特定の人しか行えない業務がある場合に問題となります。  業務の属人性と関係性があるといわれています。   業務の属人性とは  特定の業務が個々の従業員の特定のスキル・知識・経験に強く依存している状態を業務の属人性が

医師のキャリアアップを考える:番外編・大学院進学について

 医師の中で大学院に進学し、博士号を取得する人はどのくらいいるでしょうか。  少し古いデータにはなりますが、50歳以上の医師で医学博士号(以降、学位)を取得しているのは約6割という報告があります(現在は少し減っているかもしれません)。  一方で医師のうち3割は学位取得にまったく興味がないという調査結果もあります。  ちなみに私は学位を取得しておりません。   大学院進学の方法と進学経緯  医局において教授もしくは指導医から大学院進学を勧められるケース、自分の意志で大学院を

【病院で働くということ】・・・Vol.22:医師としての能力の見せ方

自分の持っているスキルや能力(概ね医師としての)をどのようにアピールするか、をよく考えます。 アメリカでは医療ドラマなどを見ていても「私出来ますっ!」って積極的アピールをすることが多いと思いますが、やはり日本人には馴染まない印象ですね。   一概には言えませんが、 「俺は出来る医者」 アピールをする人に本当に優秀な医師はいないのではないか、と思っています。 「私、失敗しないので…」 という有名なセリフが某ドラマではありますが、 そんなセリフを現場で聞いたことありませんし

【病院で働くということ】・・・Vol.21:がんの告知とその後の治療

 今は3人に1人が悪性腫瘍で亡くなる時代です。もしがんにかかっても治療によって完治し、その後に心筋梗塞で亡くなったら死因は「心筋梗塞」で統計処理されますから、「がん」に罹患する人はもっと多くなるはず。  「がん」はもはやみなさんのすぐそばにある身近な病気です。   がんの告知  私が医師になった約30年前はまだ患者さんご本人へは「がん」の告知は憚られる風潮が少し残っていたような気がします。  たとえ根治手術が可能な病態・進行度でも、一度ご家族に話をして了解を得てから本人へ

医師の働き方改革について思うこと

医師の働き方改革が始まって約5ヶ月。 導入前後にはニュースやSNS上にも多くの意見が出ていましたが、少し穏やかになったでしょうか。 現場の医師は様々な意見を持ちながらも、現状になんとか順応しているものと推察します。   医師の働き方改革とは  そもそもこの働き方改革とは、医師の時間外勤務による負担を軽減し、過重労働による医療ミスなど医療安全面を考慮し始まったものです。  ただ医師の地域偏在など社会保障制度そのものや医師業務のタスクシフトをどうするかなど論点がたくさんある中