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エッセイ

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記事一覧

なんでも出来る人のできないこと@傾聴

たまたま傾聴をする機会を与えられて5年が経つ。
傾聴とは、他者の話をひたすら聴くことである。
なんのこっちゃ、でしょ?
私も、なんのこっちゃ、と思ったからそれを学習し経験し、それがなんなのかを、識りたいと思ったわけだ。

それ以来、傾聴の技術を研鑽するため続けてきた。
研修を受け、本を読み、仲間と議論し高めあい、聴いて聴いて聴きまくった。
聴いたことを元に、さらに議論し意見を闘わせた。
5年も経つ

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訃報@「家族だけで送る」

死んだのは弟。
突然だった。

昨夜、弟の連れ合いさんが訪ねてきた。
おそらく20年ぶりくらいにこの家に来たのではないか。
昔はよく来ていたが、姑、小姑に嫌な思いをさせらてれ以来疎遠になっていた。
その弟の連れ合いさんが立派に成人した息子二人をつれて突然訪ねてきた。

呼び鈴に応じて扉を開くと、玄関のまえに立っていた家族のなかに弟はいなかった。
なんとなく予感はした。
言いにくそうに言葉を絞りだし

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「キモぉ」「ウザっ」「キシょ」の一言で終わる人のこと@講演会

久々の講演会へいったのも現実逃避ということもあるけど、現実のアレコレに追われて思考が低下(アホ)になってきている気がしたから。
少しは本でも読んで、思索すれば良いと思うのだが、次々におきるハプニングに読書に集中できず、思索も霧散してしまう。
やがて疲れて諦めて思考停止になる。これが良くない。
講演会で講師という他者に一方的に喋ってもらったほうが集中できるかもしれない。
そのうえ考えるきっかけになれ

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「介護物語の美談」なんて書けない(6)自分の課題として向き合う

「悪いあの人、かわいそうなわたし」と言って、問題を矮小化して立ち止まることをアドラーは戒めた。
アドラーっていうより「嫌われる勇気」って本に書かれていたのだけどね。
ところが先週ワタシにも、「かわいそうなわたし」って感情が芽生えかけてしまったのだよ。
もっともワタシの場合「悪いあの人」はいないんだけどさ。
強いて言うなら「自然な衰弱と厳しい社会」といったとこ。
アドラーを持ち出さなくても「これから

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写真(傾聴)に宿られ、写真自身(傾聴自身)が語る

森の底を歩き突然立ち止まる。
いや、立ち止まらされる。

まさに問題はここから始まる。
立ち止まったのか、立ち止まらされたのか。
アタシの意思なのか、モデルの意思なのか…
それとも他の何かの仕業なのか。

目の前にはモデルが在る。
立ち止まったまま凝視する。
胸が高鳴る。(これはアタシ自身)

そしてフィアインダーを覗く。
背景と光を確認する。
左右と天地のアングルを探る。
露光とシャッタースピー

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自然写真は何かを語るのか?何が語るのか?@写真集完成に寄せて

自然写真は何かを語るのか?何が語るのか?@写真集完成に寄せて

今回の写真集を鑑賞していただいた友人から素敵なメールを頂きました。

>写真って語るんだな・・・

写真による表現者としては、とても嬉しい言葉です。
撮影しチョイスした写真たちが「語っている」と感じていただいた。
至福の喜びです。

考えてみれば写真による表現ってのは、かなり不自由かもしれません。
「絵」や「音楽」による表現は、個性的で自由な創造ができそうです。
「言葉」による表現は、さらに自由か

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表現とは「ただ在る」を「特別な在る」にすること@写真集完成によせて

表現とは「ただ在る」を「特別な在る」にすること@写真集完成によせて

やっと写真集が完成しましたので、記念エッセイでもお一つ(笑)

やっと完成しました。
今回は、初版の致命的な失敗でどうしたものか悩みつつも作り直しました。
そして完成しました。今度こそほんとの完成です。

致命的な失敗箇所を直すことは当然として、プリントの特性としてやや暗めになるころがわかりましたので、一枚づつフォトショップで微調整をし直しました。
さらには同じ写真ばかりでは面白くないので、最初の

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写真撮影のごとく人生を歩む@コメントのレスにかえて

前回のnoteで「写真集」をつくる「プロセス」について少し触れたらコメントを頂けた。
そのコメントは大したことないのだけど(爆!!怒られるぞ)、レスを書いているうちに妄想がヘビのごとく暴れ出し長文になってしまった。
ということを考えると、実は深いコメントだったのかもしれないな。
いずれにしろヘビ長のテキストは、すでにコメントのレスとしては成り立たなくなり、こいつ(←毒多蛇)は、自己満テキストに仕立

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写真集vol.2・・いよいよ

写真集vol.2・・いよいよ

写真選択とレイアウトをコツコツやってきたが。もう、これでもか!!っていうほど練り倒しので、正直飽きてきた。
どれぐらい飽きてきたかというと、もう発注しなくてもいいか、というぐらいまできた。
そんなことを考えると、あれこれ悩みながら写真を選び、レイアウトを考えているときが気持ちのピークなのかもしれない。

たとえば、みたことのない蝶に出会うために、あれこれ情報をあつめ、気温と空模様をみながら遠くまで

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決死の女神探訪

決死の女神探訪

春の女神とよばれる蝶がいる。
ギフチョウというアゲハのなかま。
いつもの森にもいたのだが、今ではほぼ絶滅状態なので他所にお邪魔する。
ここ何年か訪れ、確実に会えていた。
ただ、昨年は3.31で勇み足。
会うことは叶わなかった。
どうしようと少し悩んでいたのだけど、やはり会いに行くことにした。
425mという小山の山頂である。
正直にいえばプチ登山がだんだん厳しくなっている。
最後の急勾配ではノンス

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写真集vol.2を制作中

写真集vol.2を制作中

今、また写真集をつくってます。
第二弾です。

写真集は2年前に作製しました。
初めての2年前は、写真集をつくりながら、発表してしまったあとの弊害をいろいろ予想しました。

予想によると、写真集は売れまくり、写真集の舞台である「いつもの森」に人々があふれすぎて破壊され、やがて里山ブームとなり日本中の里山どころか、森という森、アマゾンさえも荒廃し砂漠化される。
その罪を感じた毒多は十字架を背負い、い

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「地雷ワード」にキレてしまった夜の追想@傾聴

あの夜、友人たちとの酒宴でワタシはキレました。

かなり酒を飲んでいたことは理由のひとつです。
これは間違いありません。
おそらく酔っていなければキレることも、そのまま席を立ち帰り去ることもなかったと思います。

リアルでは数少ない友人たちで、楽しい空気ではあったのだからシラフならありえない行動です。
今後のことを考えれば、気まずい空気を遺すべきでないことは考える以前の問題です。
後先の考えなくキ

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「介護物語の美談」なんて書けない(4)慣れか?諦めか?それとも

前回(3)から随分、時間が経った。
この間、介護から解放されたわけでも、問題が減少したわけでもない。
なにか書くことで、ププン、ププンプンという日常の追体験をしてしまい、また苛立ち苦しくなる気しかしなくて、あえて書く気がしなかった。
ところがどっこいの強迫観念。「テキスト芸人」としては、死ぬまで書きつづけてしまう、いちど書いたらもう止まらない誰か助けて赤いハイヒール♪状態というわけで、綴ることから

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あいつは黙って旅立った

ある日の午後、森のなかであいつは黙って旅立った。
あいつにはボクのアイデンティティを預けていたのに。
それらを背負ったまま、知らぬ間にボクの元から消えた。

たしかにボクはアイデンティティって奴を軽く扱っていた。
やれ虚構だ、やれ幻想だ、と馬鹿にしながら、あいつに背負わせていた。
あいつは何も不満を言わず黙々と背負っていた。

あいつがいないことに気づいたのは翌朝だった。
ボクは慌てふためいた。

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