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#自然

悲しい服

くさばなや
どうぶつは
うつくしさだけで
いかりやしっとさえ
うつくしい
いかりやしっとを
ひょうげんするすべを
もっていないかあるいは
それほどもたないからだ

にんげんは
うつくしさのそとがわに
いくえにも
かたいきじの
ふくをきこんで
それをおとなといって
そのきじとは
いかりやしっとを
ちょくせつあらわさずに
けれどもないことにもできずに
ありとあらゆるほうほうで
せかいにばらまいたことに

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あんなに大地が

あんなに大地がうつくしければ
還ってきたこころがせき立てて
あなたはあなたをうつくしく

あんなに大地がうつくしければ
うしなったものが
もう還らないと思ったものが
気づけばそこにあって

あなたはあなたとして
あそこで土を踏み
わたしはわたしとして
ここで
生きられるのだろうか

ひとがたくさんいること
大地がみえないこと
くうきが汚れ
ひかりが遮られること
虫がいないこと

生きものと友達にな

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恐怖

闇は恐ろしい
何も見えないことで
そこにあるものを感じるから恐ろしい
たしかにそこにある、なにかが
恐ろしい

太陽が顔を出し
空が青く白み始めると
すこし落ち着くのだ
じき日が昇れば
なにもかもがすっかりよく見え
目に見えるもので感覚は埋め尽くされる
しかし目に見えないものはどこへも行かず
わたしが見えないだけなのだ

生存競争に勝ちすぎる者は
我儘とも言えるのではないか
やりたい放題、敵はなし

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宇宙

宇宙

わたしの宇宙は
あなたの宇宙を知らない
あなたの宇宙は
わたしの宇宙を知らない

わたしの宇宙は
あなたの宇宙を知りたくて
けれどわからなくて
腹を立ててもがいてる

けれど、それぞれに宇宙があって
それぞれに自然があって
それらはそれぞれ別の次元に存在していて
それだからみんな唯一無二で
それだから美しい

それならば
見つめ合う瞳とか
交わす言葉とか
触れ合う手と手とか
そんなものに
なんの意

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いのちってふしぎ

いのちってふしぎ
だって、みんな生きている
生きてるってふしぎ
木も花も草も
バッタもトンボも
にわとりもハトも、
お魚も犬も猫も牛もライオンも
みんな生きてて
そして死んでゆく
でもおしまいじゃなくて
また生まれる
みどりいろのばしょでは
それをみんな知っていて
とてもげんきでおおきくて
はいいろのばしょでは
みんな知らなくて少しつかれてる
それにやせてるし小さかったりする
死を知っているほうが

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自然

自然

子どものとき
草花を観察したこと
虫を追いかけたこと
ふと思い出す
人が主役でない世界に生きていた
あのころ
花に触れると
花になった気がした
虫を見つけると
いのちに触れた気がした

花も虫も
ここでは
耐えているのかもしれない
わたしたちと同じように
そして、観察しているのかもしれない
子どもと同じように

2022.12.29

夏

お日さまが
山の端へ落ちていくときの
あの
とうめいな空
ちらばった白い雲が
きんいろの光をすかして
かがやいている

いのちのたそがれどき
世界中の
やさしさを飲み込んだ
大きな空の波に
飛び込むように
風を切って走る
天国でいつか見るような
ちいさな雲が
いくつもいくつも
浮かんでいた

眠りに入る前の草木の香りと
湿っぽい稲のにおい
夏はいつも
夏とわかる前に
去っていく
去っていってはじめ

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朝の青

朝の青

日に日に
朝の青が
透き通ってきて
見上げる空は
なつかしい
こどくの
匂い
もう
冬なんだなぁ
低くつぶやく
どこへ
いくの
ことばは
遠くて近い
わたしたちの
ゆめのかげ
ふれたい
てをのばし
つかみたい
こころひらき
うちゅうのまんなかで
芯呼吸
みんなひとりで
さよならするときに
いつか
きっと聴く音楽
ひとつひとつ
つむいでいって
日に日に
わたしのこころの青が
透き通って
いけばいいの

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今宵よぞらの片隅で

今宵よぞらの片隅で

ほしのかげ
まつげのすきまから
きらり
つきのかげ
ゆめのすきまから
ふわり
今宵
よぞらの片隅で
うかんでいる
おもいで
ゆらり
人をおもうと
ほしがながれる
ねがいを
あのひとに
とどけて
よろこびを
みんなに
つたえて
いっしゅんの
ひかり
このよの
あまい
哀しみ


2021.12.15

冬

ひとはみな
自分だけの冬を
自分だけの寒さを
自分だけのおろかさを
その身に
その心に
そっと沈めて
母のような夜明けを夢見る

「春にて待つ」
その約束は
永遠に繰り返されるその記憶は
やむことのない
途絶えることのない
孤独と哀しみと引き替えに

歌をうたう
そのくちびるを
くちづけをする
そのくちびるを
かたく一文字に結ぶ
その長い季節を
ひとはなんと呼ぶのだろう

電飾で着飾られた
明るい

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秋

陽はまだ強いけれど
朝夕なんて風が涼しくなって
木々はもう
冬に備え出しているのだろうか
ひと足先に芳しい秋の香を放つ
それほど暑くなかったこの夏は
なんだか物足りなくて
名残惜しむように
陽射しが今頃やけに強くて
それでも
めぐるわたしたちの日々は
慌ただしく過ぎていくから
知らぬ間に
もう
なんて
いつも言って
本当は毎日、鮮やかに
変化があるのに
物言わぬ彼らと対話していれば
先回りして

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桜散るとき

桜散るとき

桜散るとき
わたしの心
ちりぢりにほどけて
小さな記憶たち
蕾の中へ
土の上へ
風にのって
お山のむこうへ
あなたに届いて
幼いわたしの
喜びとか
悲しみとかが
蕾の中や
土の上や
お山のむこうや
あなたの心で
生きるのかもしれない

桜散るとき
わたしの心
薄紅に染まって
わたしだけの心じゃない
みんなの心になるから
そのいっしゅん
わたし
透明になるのかな
記憶も
透明になって
過去から未来か

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春

みんなの祈りが届いてまた
小さな蕾膨らんだ
わたしよりも
いのちが喜んでいる
わたしが今より
いのちだったころは
わたしも
あんなふうに
光り輝いていたのかしら
人が真理を
理想だと切り捨ててしまうまえに
わたしは
人として
いのちであり続けたい
けれど喜びは
外からやってくる
わたしより
みんなが祈ったおかげだから

2021.02.22

まっさらなあさ

まっさらなあさ

朝がやってくる
あの、青と橙の透明な闇の辺りに
この身を沈めて
同じ色の呼吸をしたい

刻まれた時間のない世界は
いつまでも穢れないから
わたしたちがまだまっさらな頃に
からっぽのこころをいちばん正直な色に染めたい

嘘が溢れる世界で
綺麗なものが好きなんだねと
つまらなそうに言われるけれど
本当の美しさは誰の言葉にもならない
孤独で気高くて
そして誰の心にもあるもの

あの闇のようなもの
いま、

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