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お日さまが
山の端へ落ちていくときの
あの
とうめいな空
ちらばった白い雲が
きんいろの光をすかして
かがやいている

いのちのたそがれどき
世界中の
やさしさを飲み込んだ
大きな空の波に
飛び込むように
風を切って走る
天国でいつか見るような
ちいさな雲が
いくつもいくつも
浮かんでいた

眠りに入る前の草木の香りと
湿っぽい稲のにおい
夏はいつも
夏とわかる前に
去っていく
去っていってはじめて気づく
ああ、夏だったと

わたしの身体が
心が
もう、何年
季節に追い付かなくなったろう
生活に追いつくことだけを
考えているうちに

今年も川は冷たくて
山は涼しくて
夏はもうあと少しというのに
わたしの心はまだ
いつまでも暑い夏を待ち望んでいる

いくつもの飛行機雲が 
あしたの方へと伸びている
きっと未来は
まだまだたくさんある
こどもの頃のように
いのちはずっと旅をする
いつまでもこの空を泳いでいけるような
そんな気がした
八月のおわり

2022.08.19

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