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福祉の仕事

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#利用者

利用者の反応

利用者の反応

リーダーが退職を発表した際
想像以上に利用者は不安定にならなかった。

多少泣いたり、落ち込んだ人はいたが
ほとんどの人は実感がわからないのか、大きな変化はなかった。

 
保護者にしてもそうだ。
一部の方が落ち込んだりはしたが、想像以上にサラッとしたものだった。

 
私は驚いた。

リーダーが辞めるというのに、利用者も保護者もなんと割り切っているのだろうか。
私以上にリーダーと長い付き合いなの

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飛び石と車椅子

飛び石と車椅子

職場が移転し
飛び石を通らないと玄関に辿り着けなくなった。

 
それの一番大きな影響を受けているのは車椅子の利用者だ。
体重が私より30kg以上ある。
車椅子自体も重さは15~20kgくらいある。

 
駐車場から敷地内に行くところは段差があるし
車椅子の車輪は片方しか飛び石に乗らない。

 
だから飛び石の横にマットを引く工夫をした。

 
 
移転して初めて
私はその方の送迎担当になった。

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話せなくなった日

話せなくなった日

利用者の滑舌が悪くなった。

 
保護者は「薬の飲み合わせが原因かもしれませんね。」と言い
しばらく様子を見ることになった。

 
様子を見ても滑舌は悪いままで
それどころか
今までできていたことができなくなった。

 
文字が書けない。
書けはするのだが、大きさや形が著しく崩れた。

ゴミをゴミ箱に入れるやり方も分からない。
今まではできたのに。

洗濯機に洗濯物を入れられない。
今まではできた

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一緒にテレビを見た日

一緒にテレビを見た日

朝、利用者の家に迎えに行くと
いつものようにテレビを見ていた。

 
ほとんど一人暮らしのその人は
職員が来るまで部屋でテレビを見て待っている。

自宅には段差があり
身体障害があるため
一人で玄関から外には出られない。

 
その日もテレビを見ていた。
私も迎えに行った際、何気なくテレビを見ていた。
その利用者の検温をしている間、少しだけ時間があるのだ。

 
すると、私の好きなアーティストがテ

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別グループでポスティングに行った人

別グループでポスティングに行った人

その日のポスティングは
利用者AさんとBさんと一緒だった。

 
私はAさんに担当のチラシとユニフォーム、名札を渡した。
Aさんは嬉しそうに受け取った。Aさんはポスティング作業が好きなのだ。

 
Bさんは「ポスティングに行きたくない。」と不穏だった。
物を投げ、蹴り、叩き
気持ちがなかなか切り替わらなかった。

 
ハァ、とため息を吐きたくなる。

Bさんの朝の送迎時も
不穏な状態で大変だったの

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移転前最後の買い物

移転前最後の買い物

私の職場はもうすぐで移転する。

毎週月曜日はお昼を買いに行く日なのだが
その日は今の建物で最後に行う買い物だった。

 
普段は徒歩で近隣のスーパーに行くが
挨拶がてら最後は
たまにしか行かない大型スーパーに買いに行くことにした。

 
その日は朝から雨だった。

普段は歩きで行くが
雨の日は車で行く。

 
「なぁなぁ、あそこに風船あんだよ。」

 
車内で利用者Aさんが話しかける。
その方は

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昼食はカマ

昼食はカマ

私の職場の施設では
毎週一回、スーパーやコンビニに行き、昼食を買っている。

予算は600円だ。
コンビニでの買い物はものによっては厳しい。

 
以前、ある利用者がさんまを一尾買って丸ごと食べた時は驚いたが
それから一ヶ月もしない内にカマを買った。カマである。

なかなか個性的な昼食だ。

 
その利用者はムシャムシャと心底美味しそうに食べた。
ペロリと平らげた。

 
私はカマを食べたことがな

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今年度最後の販売

今年度最後の販売

私は障害者福祉施設で働いている。

私の施設ではアクセサリーなどを作り、販売している。

 
今年初めての販売場所は
まだできて半年も経っていない新しい場所だった。

 
そこで福祉施設の全国大会があるらしい。
研究を発表したり、それを聞いたりするようだ。

 
新しい場所で分かりにくかったので私は下見に行き
その後、利用者2人と出掛けた。
本来は3人の予定だったが、1人都合が悪くなってしまった。

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利用者のマニキュア

利用者のマニキュア

前の職場で担当だった利用者がマニキュアを塗ってきたそうだ。
それはきれいな桜色だったという。

 
私が担当だった頃はそんなことしなかったから
あぁ大人になったなぁと思った。

 
最後に会ったのは三年前だから
私が知っているよりももっと素敵になって
かわいいというよりもきれいになったのかもしれない。

できることも増えたのだろう。

 
それを隣で見ながら
一緒に年を重ねたかったな。 
 
 

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療育手帳再判定

療育手帳再判定

利用者が療育手帳の再判定のため
検査を受けた。

以前は七歳くらいの知能指数だったが
今回は七歳十ヶ月くらいだったらしい。

 
でもそれは成長したとは限らない。
結果は体調や集中力や環境、ストレス等にも左右される。

 
 
利用者は大雑把に言えば
三つの区分に分けられる。

最重度の利用者は生後間もない赤ちゃんくらいの知能指数。
重度は幼稚園児くらいの知能指数。
軽度は小学生くらいの知能指数。

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フレンチトーストが食べたい

フレンチトーストが食べたい

私の施設は毎週月曜日に昼食を買いに行く。
お金のやりくりやカロリーを学ぶ。

 
ある日
 
「フレンチトースト食べたい。」

と、利用者が言った。

 
私の職場は菓子パンを食べることが禁止されている。

「フレンチトーストは…甘いからダメかなぁ。」

私は申し訳なさそうに伝える。

 
それならば、と食パン三枚入りをチョイスする。
確かに甘くはない。金額も高くない。

 
だが、量は多いし

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利用者とケンカした日

利用者とケンカした日

朝から利用者が不穏だった。
いや、正確に言えばこの一週間…この一ヶ月…いやその前から
ほぼ毎日不穏だった。

そしてほぼ毎日私が対応している。

 
その日は朝から激しかった。
送迎車から降ろせるレベルじゃない。

降りたい利用者と降ろすわけにはいかない私。

利用者は苛々したのだろう。

私にピンバッジの針を突き刺そうとした。
何度も何度も、目を狙った。

 
私は本気で怒った。

他の職員は何

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最後の手紙

最後の手紙

今度利用者が退所することになった。
退所日に利用者はもう施設に来ない。正確には、来れない。

 
退所をする利用者は
退所発表前にしばらく休むか、休みがちなケースも多い。

 
その利用者もしばらく休んでおり
もうすでに何人かから、何回か尋ねられていたくらいだから
誰一人驚いたり、泣いたりはしなかった。

 
私自身も退所予定は数ヶ月前に聞いていたため
涙は出なかった。

最初、退所予定を聞いた時

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一日体験実習

一日体験実習

特別支援学校の学生が
うちの施設に一日体験にやってきた。

 
大きな声や争いが苦手だというその方は
自己紹介の時間になると
緊張して隠れてしまった。
頭隠して尻隠さずなその人は
まさにみんなにお尻だけ見せていた。

 
みんなの前で姿さえ見せられない体験の方は珍しい。

 
だが
その30分後、作業をしながら
その人の話し声や笑い声が隣部屋からたくさん聞こえた。

これがあの人の声!

と、みん

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