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利用者のマニキュア

前の職場で担当だった利用者がマニキュアを塗ってきたそうだ。
それはきれいな桜色だったという。

 
私が担当だった頃はそんなことしなかったから
あぁ大人になったなぁと思った。

 
最後に会ったのは三年前だから
私が知っているよりももっと素敵になって
かわいいというよりもきれいになったのかもしれない。

できることも増えたのだろう。

 
それを隣で見ながら
一緒に年を重ねたかったな。 
 
 
 
働いていたあの頃
よく、もしもの話をしていた。

 
もしも利用者がデートができる日が来たなら
私と利用者のお母さんに付き添ってほしいらしい。

私の車には利用者が乗り
お母さんの車には彼氏を乗せ
一緒に温泉デートやキャンプデートがしたいらしい。

 
現地で二人がデート中には
少し離れたベンチで
私と利用者のお母さんは女子会をしている。

利用者のお母さんは得意の明太子おにぎりを握ってきて
私はこぶのおにぎりを握ってきて
交換して食べる。

 
そんな利用者の妄想や夢が
今となっては懐かしい。

 
あの頃、もしもそんなことができたら素敵だと思っていたけど
今は叶ったらいいなぁと思ってしまう。

 
会いたい。
利用者に会いたい。
あの笑顔をもう一度、隣で見たい。

 
この三年間
そう何度思っただろう。

 
 
だけど私は怖かった。
彼女は役割や区切りに厳格な方だから
“元”職員の私にはアッサリしているかもしれない。

そう思うと怖かった。

 
「ともかさんにもマニキュア見せたかったな。」

そう言っていたらしいけど
気持ちは同じだろうか。

 
あの頃と同じなのだろうか。

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