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一日体験実習

特別支援学校の学生が
うちの施設に一日体験にやってきた。

 
大きな声や争いが苦手だというその方は
自己紹介の時間になると
緊張して隠れてしまった。
頭隠して尻隠さずなその人は
まさにみんなにお尻だけ見せていた。

 
みんなの前で姿さえ見せられない体験の方は珍しい。

 
だが
その30分後、作業をしながら
その人の話し声や笑い声が隣部屋からたくさん聞こえた。

これがあの人の声!

と、みんなで目を合わせた。
さっきまでとは異なり
よくしゃべっていた。

 
作業後、その人は室内をうろうろしていた。
独り言を言ったり、歌を歌っていた。
本当によく話す。どうやら施設に慣れてきたらしい。

 
独り言を言うその人に

「〇〇さん、熱測っていいですか?」

と尋ねると 
独り言をやめ、うろうろするのをやめ
おでこを見せた。

 
私はその潔い切り替わりが面白かった。

 
利用者らは見知らぬ体験者に
興味津々。

 
ある利用者が話しかけると
普通に話していてビックリした。

 
実習生や一日体験の方はほとんど職員と話すし
利用者の方と会話ができる方は少ない方だからだ。
会話ができるレベルならば、最初の挨拶はもっとよくできているものだ。

 
ユニークな利用者が愉快な動きをすると
その学生はひたすらに真似した。
真似できない動きになると
 
「さすが先輩!かっこいい!」

と言っていた。

 
友達がいるといないとでは違う。
とても活き活きとして、たくさん話す。
人懐っこいかわいい学生だと思った。

 
お昼も楽しそうに話しながら完食し
作業もよく頑張っていた。

 
資料では作業能力は低く
多動ではなく、独り言も言わない印象だったから
実際に全く違って驚いた。

こういうことはよくある。
どちらかといえば
資料より実際はできない率が高い。

 
「また来ますね。」

そう言ってご家族と帰っていった。

 
 
一日体験をした特別支援学校の学生は
今度五日間の実習や二週間実習がある。
そして卒業後に進路を決めなければいけない。

一日体験は楽しく過ごせたかな。

どうか今日の一日が今後の糧になるといい。
本人やご家族の自信や希望になるといい。

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