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移転前最後の買い物

私の職場はもうすぐで移転する。

毎週月曜日はお昼を買いに行く日なのだが
その日は今の建物で最後に行う買い物だった。

 
普段は徒歩で近隣のスーパーに行くが
挨拶がてら最後は
たまにしか行かない大型スーパーに買いに行くことにした。

 
その日は朝から雨だった。

普段は歩きで行くが
雨の日は車で行く。

 
「なぁなぁ、あそこに風船あんだよ。」

 
車内で利用者Aさんが話しかける。
その方は風船が大の苦手だ。

私は最近そこに行っていなかったため
風船があるか不明だった。

 
「そこはあまり見ないで急いでお弁当エリアに行くしかないわね。」

私と一緒に行った同僚が言う。

 
エスカレーターで食品エリアに向かう。
足早なAさんはサッサと行き
近くをうろちょろ、うろちょろした。

「お~い!風船ないぞ~!俺の勘違いだった。」

さっきまで不安げだったが
顔がパァッと明るくなる利用者。

かわいいなぁと思った。

 
確かに私がエスカレーターから見ても
風船は見当たらなかった。

 
みんなで食品エリアを歩く。
大型スーパーなだけあり
普段行くスーパーよりも品揃えがよくて目移りする。

 
だけど目移りするのは私であって
利用者はみんながみんなそうなわけではない。

 
その日、一緒に行った利用者はみんながみんな
行く前から何を買うか決めていた。

 
いつも買っているものがそこでは売っていなかったりして
ぐるぐるウロウロ探す。
大型スーパーならいいというわけではない。

ないならないで仕方ないと
どこかで折り合いをつけようと
時間をかけて一品一品見て歩く。

 
他の利用者の買い物が終わる頃
Aさんはとっくに駐車場に戻っていた。

私は立体駐車場が苦手で
どこに車があるかキョロキョロ探していたら
利用者Bさんが「こっちこっち。」と私らを案内するから頼もしい。

 
その日はどしゃ降りの雨で気持ちはどこか下がるけど
利用者とならば楽しい時間になる。

 
「移転先の買い物も楽しみだね。」

Bさんが言う。

 
しばらくはもうこの大型スーパーに買い物に来ることはない。
私は少し切なくなった。

いくつもの思い出がある大型スーパー。

 
終わりは始まり。

移転先の近くには私が行ったことがないスーパーがある。
きっとそこではまた
新たな出会いや刺激があるだろう。

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