見出し画像

飛び石と車椅子

職場が移転し
飛び石を通らないと玄関に辿り着けなくなった。

 
それの一番大きな影響を受けているのは車椅子の利用者だ。
体重が私より30kg以上ある。
車椅子自体も重さは15~20kgくらいある。

 
駐車場から敷地内に行くところは段差があるし
車椅子の車輪は片方しか飛び石に乗らない。

 
だから飛び石の横にマットを引く工夫をした。

 
 
移転して初めて
私はその方の送迎担当になった。

 
晴れていたのでまだよかった。
敷地は雨が降るとすぐにグジャグジャになり
車輪はかなり派手に汚れる。

 
その方は他施設と併用利用をしているから
雨の日は設備が整った他の施設の利用日だとホッとする自分がいる。

 
移転してからその方の迎え場所までむしろ時間はかからなくなったが
その利用者が降りやすいように送迎車を上手く停めるのが一苦労だった。
何回も切り返さなければならない。

 
その後、噂の段差の前に到着した。
車椅子をウィリー状にして
段差に乗り上げる。

なんとか乗った。フゥ、と一息。

 
その後、車椅子を押した。
飛び石だ。
マットを敷いていても
下は木の根っこ等があり、ガタガタする。

押すのも一苦労だ。

 
玄関は段差があるので
簡易スロープを取りつけ
今度はそこを一気に押す。

簡易スロープを駆け上がるのが一番キツかった。

息が切れる。

 
その後は利用者に杖で立っていてもらい
その間に一気に車椅子を拭き
利用者が乗りやすい位置に車椅子を置き、利用者が乗り、それで完了となる。

つ、疲れた。

 
私はグッタリした。
何故車椅子の方がいるのに飛び石なのだろうか。

そう思うが
その理由はよく分かっている。

 
障害者施設は建てることをなかなか近隣の方に許されない。
障害者施設はなかなか中古物件を使うことを許されない。

 
この飛び石こそが
移転がいかに大変かを物語っている。

ここしか借りられなかったからだ。

 
だからやるしかない。
私がここで働く選択をするならば。

私の脳裏に蘇る。

 
施設は玄関がフラットで屋根下にあった。
スロープもあった。
玄関マットや古いバスタオルを引いて、そこを何回か車椅子を引いたり押したりしたら
汚れなんてそれくらいで落ちた。

前の職場はそういった環境面では恵まれた。

 
 
仕事は全てが思い通りにはいかない。
結局は全てが、やるか辞めるかの二択なのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?