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2023年10月の記事一覧

アナログ派の愉しみ/映画◎豊島圭介 監督『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』

「解放区」で戦わされた
伝説的な討論のドキュメンタリー

三島由紀夫が「楯の会」のメンバーをともなって陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地へ乱入し、割腹自決によって45年の人生を終えた前年の1969年(昭和44年)5月13日、東大駒場キャンパス900番教室で三島と全共闘の学生との2時間半におよぶ討論会が開かれた。それから半世紀が経ち、令和の世にいきなり出現した豊島圭介監督の『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の

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美しいフレーズが何小節かできたら、次へ移らず今あるものを展開すべきだ。ひたすら展開させるんだ。ーー作曲家ホール・オーヴァトンが弟子に語ったというこの言葉は含蓄に富んでいる。アマプラで観た「ジャズ・ロフト」という映画の中のひとコマ。そして、これは物を書くうえでも当てはまると思った。

#017 ガングロヤマンバ楢山節考

#017 ガングロヤマンバ楢山節考

 私が生きてきたのとは別の世界線でその昔、「ヤマンバ」と呼ばれるファッションの一大ムーブメントがあった。

 誰もがガングロでヤマンバだった訳ではなく、あくまで渋谷を中心としたニッチなカルチャーだったが、メディアが面白がって「理解不能なイマドキの若者」として象徴的に取り上げるものだから、その妖怪の知名度は全国区となった。

 実際のところ、他の地域ではヤマンバはおろかガングロすら希少だった。
でも

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#019 ありがとう

#019 ありがとう

これはやるぞと習慣づけて身につけた、自分ルールがある。

ルール:スーパーやコンビニのレジの人に、「ありがとう」を言う

それだけかよと思ったかもしれないが、私のようなコミュ障にとっては大変勇気のいることで、まさに一大決心というやつだ。

世の中には、イヤホンをつけたままレジに来て、無言で商品をスッと置き、目も合わせることなく金と交換して立ち去る、店員を機械扱いするかのような態度の人間がいる。

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#020 おっぱいが大きすぎる

#020 おっぱいが大きすぎる

私のことではない。

アニメやゲーム等のオタク界隈、特にスマホゲームの方角に向かって嘆いているのだ。

バランスのおかしなキャラクターが嫌いだ。
創作だからといって、そう好き勝手していい訳ではない。

綾波やアスカをいつから忘れた?

正直、他の要素が好みでも、おっぱいが大きすぎるとがっかりする。

男性好みの趣向に先鋭化されすぎたデザイン。

カワイイ女の子は大好物なのだが、世界が違う方向に進ん

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信じることの証明。

信じることの証明。

わたしのYouTube、「良子のキッチンTIME」をご視聴ありがとうございます。「りょうこの きっちん たいむ」と読みます。

これからも、どうぞよろしくお願いします。

YouTubeを始めて間もなく1年が経ちます。色々な人から、色々なことを言われます。肯定的なものが大半ですが、中には、「今さらYouTubeやってるの? そんなことをして意味あるの?」と言われたことがありました。

それは、わた

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雪の妖精

雪の妖精

「虫の知らせ」とは「なんとなく良くないことが起きそうな予感」のことだそうです。

良くないことかはわかりませんが、季節の移り変わりを告げる虫がいます。
「雪虫」(地域によって様々な呼び名があるらしい)です。
実はアブラムシの仲間。
場所によっては害虫として扱われたりもするのだとか。
10月中旬ごろ、体に綿のような物質をまとい移動します。
フワフワと移動するその姿は本当に雪が降ってきたのかと見間違え

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またいつかきっと会える

またいつかきっと会える

ふと、思い出す大切な人がいる。
2019年初夏の頃、叔母が急逝した、59歳だった。

叔母はその年代には珍しく生涯独身だった。60歳の3月に定年を迎えたら、旅行にたくさん行くんだと、とても楽しみにしていた。

叔母にはいつも自分の子供のように可愛がってもらっていた。会いに行くたびに、いろいろなものを買ってもらっていた。お小遣い、お誕生日お祝い、お年玉、入学祝い、卒業祝い、就職祝い、など節目節目に、

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わたしがエッセイを書く理由

わたしがエッセイを書く理由

病に倒れて手術をしたのは2014年のことだった。非情なもので、離婚をしてすぐの悲劇でもあった。
住まいである今の街は私の地元ではない。日本海側の小さな田舎町に住んでいたのだが、様々な事情で引っ越して来た。しかし、住まいを移してすぐに、元・夫の金銭問題などが理由で離婚せざるを得ない状況になったのであった。
そのようなわけで知り合いも友人もいない土地での大手術。けれども、これを越えれば元気な身体に戻れ

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海を眺めていた

海を眺めていた

 夏がやってきた。うだるような暑さ。蝉が騒がしい。その声に耳を澄ましていると、瞼の裏に海の景色が映る。この現象は毎年のことである。それは十六年前の房総半島、ある女性が隣にいたときの記憶である。

 プロのミュージシャンを目指していた二十歳の頃、頻繁に池袋駅の前で路上ライブを行っていた。もう辞めようかと思っていたとき、一人の女性が足を止めて熱心に聴いてくれた。それが彼女との初めての出会いである。

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