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【短編小説】望み行き有人タクシー【所要時間:5分】
12時10分。間に合うはず。
スマホを片手に、遠くに小さく見える空のタクシーに向けて手を振る。
仕事はまだ少し残っているが、午前中特有の集中力のおかげで、移動中にノートパソコンを少し触れば終えてしまえるほどには片付いていた。ドレスはタクシーの中で着替えればいい。ここ十年でタクシーの無人運転化が進んでくれて本当に助かった。化粧も車内で直してしまおう。
私はこれから、親友の結婚式に向かう。一年間既読
【二次創作小説】リンス/オレンジスパイニクラブ
「一本ちょうだい」
ミキの言葉ですべてわかった気がした。
乾かしていないミキのロングヘアーが朝日を受けて不健康そうに光る。
「煙草吸う人だっけ」
俺がそう言うとミキは気まずそうな顔をして「たまにね」と言った。成長期の真っ只中からヘビースモーカーだったタケルが煙草の重さを変えたのも、タケルとミキが俺の前であまり喋らなくなって随分経つのも、全部がミキの一言で繋がってしまった。まあ今までも、わかりたく