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大学3年生。人生の迷子。ことばが好き。

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大学3年生。人生の迷子。ことばが好き。

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記事一覧

他人

六畳半の穴の中に、感情をしまいきれるわけがない 雨が線を引く いっそ僕を悲しみでひたひたにしてほしいね その時は嘲笑って、僕の悲しみを悲しまないで 今夜くらいはね。…

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2か月前

"私"の見ている世界

"私を動かしている私は、本当に存在しているのか?" 小学4年生くらいのある時期、私はこの考えに囚われていた。 自分という人間を動かしている意志は、自分のものなんだろ…

chie
4か月前
2

よくわからない夢

水中を歩く牛たち 無意識に避けてる棘に触れた日の夢 誰もが、綺麗でない思い出をたくさん抱えて生きている。 その時の自分をどんなに切り離して考えても、一度は深く潜…

chie
5か月前
3

大学生が精神を病んで、諦めることの大切さを学んだ話。

最近、ひとは何かを諦めながら自分を見つけていくんだな、と実感した大学三年生です。 まあ、完璧な人間なんかいないから、当たり前なんだけれど。 そんなことがまるで分か…

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5か月前
7

夜を歩く。

街灯を頼りに夜を歩くとき そこに理由を持たない自由 一人暮らしでよかったなぁ、と感じるのは、夜に散歩をするとき。 この小さな部屋では感情を扱いきれなくなって、 ジ…

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9か月前
6

散歩。

左手の温度が伝わる間に 追い越してくメッセージ・トレイン 私はよく、恋人と散歩をする。 駒場にある家から、渋谷か、池尻大橋か、下北沢かに目的地を決めて、二人でゆ…

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9か月前
2

うた。

昼過ぎにやっと動ける君にあて 僕は夜明けにうたを書きおく 家から出られなくなって、大学に行かなくなって、一ヶ月。 友達に連れられて病院へ行き、薬をもらい、少し良…

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9か月前
5

残り香、

君のことなんか忘れたはずだった Paul Smithのカタログの風船 「またね。じゃないか、ばいばい。」 君がそう言ってから四ヶ月が経つ。 四ヶ月も経った。君のことなんか、…

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9か月前
1

空。

土手を行く自転車 感覚の薄れた耳から青へのグラデーション しばらく家から出ていなかった。 何もかも嫌になって、6畳半の部屋の隅で、天井を見つめていた。 実家からの…

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9か月前
3

深夜ドライブ

コンビニの配送トラックを待って アクセルを踏む 君と夜の中へ 日付が変わる頃、君から連絡があった。 「今からドライブしない?」きっと何か話したいことがあるんだろう…

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9か月前
3

ささやかな喜び

メモ帳に溜まった言の葉の屑を 綿毛を飛ばすみたいに、夜に 思いついたこと、考えたことをスマホのメモ帳に打ち込んでおく。 しばらくすると、捨て置かれているそれらの…

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9か月前
1

リアルとは...

どうにでも描ける世界に、どうしても描けないもの 飛翔であるとか 全部思うようになればいいのになぁ。 何でも描ける世界、リアルを描かない世界、重力なんて存在しない…

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9か月前
2

君とカフェで、 <短歌>

"いつもの"を頼んだ君に追いついて 「スモール、アイスの、カフェラテひとつ」 私の恋人は、カフェでアイスココアしか頼まない。 夏でも冬でも、サンマルクでもドトール…

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9か月前
9

決別。

もう、君の時間はねじれの関係にある 目が合った気がしていた初夏の サークルを辞めた。 大学一年の時から毎週末参加していたオーケストラのサークル。夏はあんなに熱心…

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9か月前
1

渋谷駅で <短歌>

交差点を見下ろす通路の端っこで 人混みを撮る人を見る僕 私は通学に井の頭線を利用している。大学からの帰り道、渋谷駅の改札を出て銀座線に乗り換えようとした時、ある…

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9か月前
4

銀杏...<短歌>

鼻先に迫る銀杏、 行き場なく敷き詰められて 犬を労う この時期は無気力になる。 駒場キャンパスを歩いていると、銀杏の匂いが億劫さを引き立てる。それでも室内に閉じ…

chie
9か月前
1
他人

他人

六畳半の穴の中に、感情をしまいきれるわけがない
雨が線を引く
いっそ僕を悲しみでひたひたにしてほしいね
その時は嘲笑って、僕の悲しみを悲しまないで
今夜くらいはね。

嘘しかつけない、護岸ブロックが本体と化した心じゃ
誰も愛せないんだ
家庭環境の話はずるいよ、そうやって僕を責めるのか
甘ったれの哲学者がって。
被害者になれない僕はさ、
悩む弱さを責めるところから始めるよ

怒ったことがないなんて、

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"私"の見ている世界

"私"の見ている世界

"私を動かしている私は、本当に存在しているのか?"
小学4年生くらいのある時期、私はこの考えに囚われていた。

自分という人間を動かしている意志は、自分のものなんだろうか。今こうやって考えている私の、本当に本当に一人ぽっちの決断なのか。
そんな孤独があり得るんだろうか。心細すぎやしないか?
それじゃあ私が次の瞬間からその決断を放棄し続けたとしたら、私の体は一体どうなってしまうのか。

結局そんな気

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よくわからない夢

よくわからない夢

水中を歩く牛たち

無意識に避けてる棘に触れた日の夢

誰もが、綺麗でない思い出をたくさん抱えて生きている。
その時の自分をどんなに切り離して考えても、一度は深く潜ってしまったから、今の自分と無関係なはずがない。忘れられるはずがない。

きっと深い傷になるだろう。一生忘れられないだろう。
この予兆は、生活の大部分においては外れているけれど、本質では当たっている。
生活の根幹となっていたものがある日

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大学生が精神を病んで、諦めることの大切さを学んだ話。

大学生が精神を病んで、諦めることの大切さを学んだ話。

最近、ひとは何かを諦めながら自分を見つけていくんだな、と実感した大学三年生です。
まあ、完璧な人間なんかいないから、当たり前なんだけれど。
そんなことがまるで分からなかった1年前の私がここに至るまで、どんな経過を辿ったのか書いてみたいと思います。

大学入学

公立の高校でそこそこ成績の良かった私は、国立大学に進学しました。
辛いことや悩みは当時の私なりには色々あったけれど、大した挫折を経験するわ

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夜を歩く。

夜を歩く。

街灯を頼りに夜を歩くとき

そこに理由を持たない自由

一人暮らしでよかったなぁ、と感じるのは、夜に散歩をするとき。
この小さな部屋では感情を扱いきれなくなって、
ジャケットを羽織って、ポケットにスマホをしまって、夜へ歩き出す。
何も考えずに、ただ知っている道の、知らない側面を歩く。
そこに理由は存在しなくていい。
途中でコンビニに寄るかもしれないけれど、コンビニに行くことが目的じゃない。

別に

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散歩。

散歩。

左手の温度が伝わる間に

追い越してくメッセージ・トレイン

私はよく、恋人と散歩をする。
駒場にある家から、渋谷か、池尻大橋か、下北沢かに目的地を決めて、二人でゆっくり歩いていく。大抵は本屋さんを見るか、カフェで少し話すかして、また家まで戻ってくる。時間によっては、一、二杯飲んで帰ってくることもある。
歩いている間、私たちはその時思いついたいろいろなことを話して、小さな幸せを噛み締める。
そこで

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うた。

うた。

昼過ぎにやっと動ける君にあて

僕は夜明けにうたを書きおく

家から出られなくなって、大学に行かなくなって、一ヶ月。
友達に連れられて病院へ行き、薬をもらい、少し良くなった。
親に連絡して、実家に帰ってきて、休んだ。

良くなった。今まで通りの日常が送れる体力は戻ったはずなのに、それでも空虚だった。今までと同じことができるようになったところで、それが何だと思った。
本当に、心底どうでもいいことばか

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残り香、

残り香、

君のことなんか忘れたはずだった

Paul Smithのカタログの風船

「またね。じゃないか、ばいばい。」
君がそう言ってから四ヶ月が経つ。
四ヶ月も経った。君のことなんか、忘れたはずだった。そんな頃になって、君の記憶は突然日常の中に割り込んできたのだ。

前髪を切ろうと思って、古紙の山から一枚取ろうとした時、下にあった冊子状のものが一緒に落ちてきた。
フルカラーの表紙。リボンで括られたスニーカ

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空。

空。

土手を行く自転車

感覚の薄れた耳から青へのグラデーション

しばらく家から出ていなかった。
何もかも嫌になって、6畳半の部屋の隅で、天井を見つめていた。
実家からの連絡。
どうせ帰って来いということだろうと放置していたが、このまま何も生み出さずに寝ているだけなのなら、帰ってやらないこともないと思った。
「明日帰ります。」
とだけ送って、久しぶりにシャワーを浴びた。

翌日、馴染みの駅まで新幹線と

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深夜ドライブ

深夜ドライブ

コンビニの配送トラックを待って

アクセルを踏む 君と夜の中へ

日付が変わる頃、君から連絡があった。
「今からドライブしない?」きっと何か話したいことがあるんだろう。いいよと返すと、私は上着を羽織って玄関先まで出た。
しばらくして、シルバーの車がやってきて停まる。助手席に乗り込むと、君は困った様子で言った。
「これじゃ通れないな。」
コンビニの前に配送トラックが停まって、商品を運び込んでいた。私

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ささやかな喜び

ささやかな喜び

メモ帳に溜まった言の葉の屑を

綿毛を飛ばすみたいに、夜に

思いついたこと、考えたことをスマホのメモ帳に打ち込んでおく。
しばらくすると、捨て置かれているそれらの脆い言葉たちを集めて、ささやかな伝言として飛ばしたくなる夜がくる。
まるで息を吹きかけた綿毛が華やかに舞い、新たな生命への期待を背負って飛んでいくように。

次の日がくる。
昨晩の熱はもうどこかへ行ってしまって、命を吹き込んだはずの伝言

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リアルとは...

リアルとは...

どうにでも描ける世界に、どうしても描けないもの

飛翔であるとか

全部思うようになればいいのになぁ。

何でも描ける世界、リアルを描かない世界、重力なんて存在しない世界。
そこでは「飛ぶ」ことが意味を持たない。
意味を持たないどころではない、それは単に「宙に浮いている」だけなのだから。
何の気なしにぴょんと跳んだ人がそのまま落ちてこないのと、飛行機が空へ飛んでいくのは同じこと。そこに「飛翔」とし

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君とカフェで、 <短歌>

君とカフェで、 <短歌>

"いつもの"を頼んだ君に追いついて

「スモール、アイスの、カフェラテひとつ」

私の恋人は、カフェでアイスココアしか頼まない。
夏でも冬でも、サンマルクでもドトールでも、初めて入るところでも。
店に入ると、メニューを見る動作もなくカウンターに直行してしまうから、私は少し焦って追いかける。その場で考えるのは苦手だから、特に飲みたいわけでもないのに、アイスカフェラテを注文してしまう。
そんな日常を短

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決別。

決別。

もう、君の時間はねじれの関係にある

目が合った気がしていた初夏の

サークルを辞めた。
大学一年の時から毎週末参加していたオーケストラのサークル。夏はあんなに熱心に練習していたのに、秋が来る頃には体調不良を理由に辞めてしまった。
休日にキャンパスを歩いていると、楽器を練習している音が聴こえる。少し前まで、私にとってもこの時間は練習時間だった。不思議な感覚。
これから先、私と彼らの時間が交わること

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渋谷駅で <短歌>

渋谷駅で <短歌>

交差点を見下ろす通路の端っこで

人混みを撮る人を見る僕

私は通学に井の頭線を利用している。大学からの帰り道、渋谷駅の改札を出て銀座線に乗り換えようとした時、ある光景が目に止まった。

激混みのエスカレーターを通り過ぎた左手、ガラス張りの壁に沿ってカメラを構える人たち。彼らが見つめているのは渋谷スクランブル交差点だ。一体スクランブル交差点の何が彼らをこんなにも惹きつけるのか、それは本人たちにしか

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銀杏...<短歌>

銀杏...<短歌>

鼻先に迫る銀杏、

行き場なく敷き詰められて

犬を労う

この時期は無気力になる。
駒場キャンパスを歩いていると、銀杏の匂いが億劫さを引き立てる。それでも室内に閉じこもるよりかは外に出た方がいくらかマシな気がして、ベンチに腰掛けてみる。
すると向こう側から、大きな犬を二匹連れたマダムが歩いてくる。どうしてマダムは大きな犬を連れているのだろうか。そしてどうして大学のキャンパスは大抵、犬の散歩コース

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