タイサル!第39話「謹賀新年!2021年の振り返り&調査地で過ごした年越しの思い出」
みなさま、新年あけましておめでとうございます。
本年もゆるゆるとタイサルを更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今年こそ、良い年になるといいですねぇ...(遠い目)
今年最初の更新ということですので、ざっと2021年を振り返りつつ、タイの田舎のお正月がどんな雰囲気なのかをご紹介したいと思います。
2021年の振り返り
1月:長年の夢だったアクアリウム水槽を立ち上げる。人生初の職務質問を受ける。
2月:ベタを飼い始める。noteでなんかやろうと思い始める。自作写真集を作る。
3月:アクアリウムの水草がいい感じに。グッピーやプラティたちの大繁殖スタート。ミジンコ培養を始める。APEXをはじめる。
4月:noteが始動。日本科学協会から2020年度の笹川科学研究奨励賞をいただく。タイ渡航を計画していたが断念。申請書作成に追われる。
5月:タイが感染症危険レベル3になり調査再開が絶望的に。申請書作成にウンザリし転職活動開始。自称写真家としての個人ウェブサイト開設。
6月:とりあえず忙しかった。論文1本アクセプト。
7月:調査再開の目処が絶たず絶望して真剣に転職活動。数年ぶりに髭を剃り髪をさっぱり切る。ワクチンの職域接種、所属先で僕だけ外されて不貞腐れる。
8月:パスポートの更新。エアコンの壊れた研究室で暑い夏を過ごす。8月末にワクチン1回目にたどり着く。
9月:31歳になる。ベタの繁殖に成功する。骨計測研究を計画するも諸々の壁にぶつかり悶々とする。タイ10月開国アナウウンスで渡航再開を期待する。特別研究員PD採用内定。
10月:タイ開国が翌月に流れて絶望する。アクアリウムの水草がモジャモジャのジャングルになったため一旦リセット。研究所改変騒動で暗い気持ちに。
11月:タイ開国するも渡航許可下りず不貞腐れる。ヨーロッパのマカク研究者たちのシンポで招待講演。JMCでのお仕事を始める。
12月:年明けのタイ渡航に最後の希望を託し、ひたすら骨を計測しまくる。海外学振採用内定。
年明け:オミクロンのせいで2月の渡航が危うい←イマココ
...というわけでどう考えても明るくなりようがない話題ですが、2021年も2020年に続き研究的には最悪の一年でした。調査に行けそうになって期待してはダメになり、行けるようになっても学内規定で許可が降りず、一喜一憂の繰り返しで、正直なところ研究へのモチベーションは完全になくなってしまいました。ゼロどころかマイナスに振れた時期もあり、真剣に転職を考えました。先が一向に見えず任期だけ食いつぶす毎日にウンザリしていました。失業するわけではないのだけれど、研究が完全にストップした2年間。半殺しのような状態が続き、私のみならず、海外を拠点とする研究者の皆さんは同じように苦しんだのではないかと思います。特に私の場合、学位を取って5年以内のポスドク期間、一番海外調査をやりやすい時期に直撃を食らってしまったために、研究者キャリアとしては致命傷をとっくに通り越して、もう手遅れ感が出始めています。
研究以外では、2020年よりは充実していた気がします。特にこのnoteでのタイサル配信を始めたのが大きな変化でした。連載をきっかけにいろいろな縁がつながったこともあり、アクションを起こして良かったと思っています。ただ、徒然に調査地生活の話ばかり書いていてマンネリ化してきた感があるので、今年は少し飽きない工夫を模索せねばならないなと考えています。その試みの一環がYouTuberだったのですが、素材があっという間に尽きた&編集作業が鬼、ということで、とても大変だとわかりました。基礎的な動画編集技術を身につけることができたのは、このご時世でプラスだったと思います。
2022年度はかろうじて特別研究員PDと海外特別研究員という2つの選択肢から将来を選べるチャンスに恵まれたので、なんとか、研究へのモチベーションを蘇生させたいと思います。蘇生させられるかどうかわかりませんが、とりあえずがんばります。ダメそうならもう研究職を辞めて取り合えずタイへ移住し、1年くらいお寺で出家します。サルがいるお寺で出家して、人生立て直します。
2022年は、そんな年にしたいと思います!
タイのお正月
さて、私の2021年は脇に置いておいて、本題のタイでの新年の様子のお話です。
私は2015年と2016年の2度、タイの調査地で年越しをしたことがあります。
実はタイでは、1月1日の新年というのはあんまり重要ではありません。一応クリスマスから年越しにかけては、仕事の関係先などに贈り物を送る行事がありますが、町に活気が溢れるお祭り騒ぎ、という感じではありません。
年末からショッピングモールやスーパーで並び始める贈り物。だいたい見れば価格帯が想像できてしまうため、品選びには気を遣います。私も年末は調査地の園長さんのところへ贈り物を持って挨拶に行きますが、だいたい2000バーツのカゴ+ウイスキー1本と決めています。
僕の好きなS&Pというお菓子屋さんの新年お祝いビスケットセット。缶カンのイラストがかわいいのでいつもおみやげに買ってきます。
年末年始は一応お休みとなるので、地元の商店はまとめ買い需要で大忙し。
こんな感じでどことなくソワソワした雰囲気にはなりますが、特に大きなお祭りがあるというわけではありません。バンコクのおハイソな人たちが集まるデパートとか、外国人が多い観光地では、カウントダウンをやったり色んなイベントがあったりして大騒ぎだと思いますが、田舎はなんてことありません。
大晦日の夜も調査地の部屋で仕事をしていると、日付が変わった瞬間に遠〜〜〜くのペッチャブリーの中心街あたりで花火が2−3発打ち上げられるのがかすかに見えるくらいです。
スマホ写真を見返すと、2016年の年越しは未開封の黒よかいち、とっておきの残波の黒、調査地では超御馳走のかにみそ缶詰でひとり寂しく年越しをやっていたみたいです。ちなみに調査写真を見ると、大晦日の31日の夕方、調査中に枯木が私の背後に倒れてくるという事件が起きているようです。私の立ち位置があと数m違っていれば、多分天国逝きだったと思います...。なんて大晦日だ!てな感じでヤケ酒していたのかも...
タイと日本では2時間の時差があるので、日本で「あけましておめでとー!」とやっている時間はタイではまだ夜10時です。なので、友達からあけおめLINEが来ても「まだ10時だから」と斜に構えて新年を祝わない、というのが定例です。
別に何かあるわけでも何でもない、なーんて事ない年越しです。
変わることと言えば、1月1日の朝の挨拶は「サワディーピーマイカップ(新年おめでとう)」になるくらいです。
というのも、タイでは1月1日よりも2月初旬頃にある旧正月の方が大事だからです。旧正月は調査地のような田舎でも結構大きなイベントをやったりします。月餅というお菓子がたくさん売られるようになり、チャイナドレスっぽい服がいっぱい売られるようになったりします。スーパーでも「新年快楽」「大吉大利」「万事如意」といった文字の書かれた垂れ幕や記念品がたくさん登場します。
1月の大きな行事「こどもの日」
実は1月は新年よりも盛り上がる行事があります。それがタイの「こどもの日」です。1月の第2土曜日がタイの「こどもの日」。各地で子ども向けのお祭りやイベントが開催され、屋台もたくさん出て大盛況となります。タイ語ではวันเด็ก(ワン・デック)と言います。今年は1月8日でした。
なにやらビンゴみたいな感じで景品が次々と配られるゲーム。子どもより親の方が必死。
小学生向けにタイ軍もPR活動。日本でこんなことをやったら大騒ぎになるでしょうね...
こんなファンシーな会場に、何故か調査着でカメラを抱えた私も出席させられるのです。朝イチで職員のおじさんがバイクでやってきて、「さ、行くぞ!」と拉致されるのです。私は最初、新年の挨拶にお役所に行くのかと思ったのですが、着いた先がこんな子どもが走り回っているようなド派手な会場で、びっくりした記憶があります。
まーた謎イベントか、と思うかもしれませんが、僕がこんなイベントに連れていかれるのには、一応理由があります。実は保護区を管理する野生動物局の事務所も地元のこどもの日イベントに協賛していて、屋台を出していたりします。こういうイベント会場には、普段出会えないお偉い役人さんがいたり、地元の有名な権力者が集まっていたりします。そういう人たちに、私を紹介するために、朝から拉致されるのです。
実は調査地のおじさんは、こういうイベントに私を連れて行くのが大好きでした。行く先々で「日本からサルの調査に来た研究者や!ワシが面倒見とるんや!」と自慢げに紹介して周っていました。私は綱で引き回されている犬のごとく、あちこちで紹介され、握手を求められてはよくわからない会話に巻き込まれ、写真を撮られまくるのでした。でもそのおかげで、町のあちこちに知り合いができて、良くしてくれる人がたくさんできたのでした。おじさんサマサマです。
今では新年早々に朝っぱらから拉致されると、「あー、ワンデックか...」とピンとくるわけです。だいたい午前中はあちこちで挨拶回り、その後屋台でお昼ごはんを食べて、昼頃に帰還、というのがこどもの日のスケジュールです。
ちなみに、タイのこどもの日には、自分の子どもの頃の写真をSNSにあげるのが流行りです(少なくとも数年前までは...)
というわけで、私の子どもの頃の写真です。
生まれた時から多くの生き物たちに囲まれ、彼らに命の大切さを教えてもらいました。
来週はいよいよ、調査地の奇蟲シリーズ第2弾を解禁しようかなぁと思っています...!
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タイサル!シリーズ過去の配信アーカイブはこちらから↓
連載コラム「タイでサル調査!研究奮闘記」配信開始のお知らせ
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n28a1dc0c9402
第1話「海外調査の生活拠点」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n985accf6fef3
第2話「調査地で楽しむタイ料理!食事編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5444528ab0bb
第3話「シャワーも命がけ!?お水事情その①」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5bcd9a17bc1
第4話「シャワーも命がけ!?お水事情その②」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7c4f68bf12d1
第5話「シャワーも命がけ!?お水事情その③」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n56d26d529251
第6話「泥水との激戦を終えて」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n375ca4ab7be2
第7話「調査生活のオトモ!タイの犬たち」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7968f75aea75
第8話「その日のことはその日のうちに!調査の1日のルーティンワーク」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfdac8fac1ec6
第9話「忘れ物確認ヨシ!調査時の装備について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n4fef7eb2e320
第10話「写真へのこだわり」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na4da37e13e8d
第11話「誰だ誰だかわからない!個体識別の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1648bde20bab
第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n24c3478ea661
第13話「サルたちの名前の付け方の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nb6a8e6119ced
第14話「タイの仏教文化とサルたちの関係について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9a7a6814730d
第15話「タンブン行為で私が心配していること」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd1360f5568af
第16話「タイ生活の必需品、プラクルアンとは?」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n6bcc5b875bb5
タイ南北調査特集はこちらから↓
第17話「南北調査シリーズ開始&YouTubeチャンネル開設のお知らせ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ncab1c13b6bf9
第18話「南部調査その①:Puckerを拝みに...キタブタオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5d3df0969439
第19話「南部調査その②:白いメガネが印象的!ダスキールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na32091a5b055
第20話「南部調査その③:見慣れたサルのはずなのに...ベニガオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n3488e5942c1a
第21話「南部調査その④:アナタどこにでもいるわね!カニクイザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n219720155be3
第22話「北部調査その①:黄金の赤ちゃんを求めて〜ファイヤールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndeb079c8825c
第23話「北部調査その②:ガイコツの隣でうんち拾い...アッサムモンキー編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/naf23f701a677
第24話「南北調査おまけ:噂のココナッツモンキーを求めて−モンキースクール編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfb50e551aa1a
第25話から調査地シリーズに戻ります↓
第25話「年に一度の風物詩!コウモリ集団飛翔の撮影秘話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n0b4911b372e2
第26話「気づけば部屋が虫だらけ!マレーンマオ大量発生の悲劇」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n264fade216ea
第27話「思い出いっぱい!タイで購入したmy冷蔵庫の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n071966d6f39a
第28話「クリスマスにひとりで死にかけた話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nead29459b1db
第29話「調査地での同居人・チンチョッとの日々のあれこれ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nab48db873ca1
第30話「30回更新記念:タイサル!シリーズの振り返りと今後について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd7f4df7fdc46
第31話「雨の日の定番!カエルの唐揚げができるまで」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n46e0aa051425
第32話「ベニガオザルの噂の真相」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndde380f51a93
第33話「担当イラストレーターさんとnoteコラボやオリジナルグッズ誕生について対談してみた」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n2d34def8697b
第34話「調査地を思い出すタイの歌ー独断と偏見で選ぶ私的25選」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n95cddb7e6dfb
第35話「11月といえば!タイの恒例行事、ロイクラトンの話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n2999bc1434a5
第36話「調査地の山に眠る黄金の仏陀像を拝みに行った話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5f6521ee811
第37話「第2の調査地開拓なるか!?お隣さんの視察調査の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n913898fb06a2
第38話「あくびシリーズの隠れミッション:ベニガオさんの犬歯サイズを記録せよ!」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne3dcefbabb72
番外編の過去の配信アーカイブはこちらから↓
私論:「ココナッツモンキー」は動物虐待なのか?
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne6add28fc064
遺跡の街ロッブリーに住むカニクイザルの歴史
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1679cb4029b2
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個人ホームページを開設しました。こちらからどうぞ。
Twitterはこちらです。ベニガオザルのみならず、これまで撮影してきたサルたちの写真を載せています。
イラストレーターのはなさわさんのサイトはこちらです。
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