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タイサル!第23話「北部調査その②:ガイコツの隣でうんち拾い...アッサムモンキー編」

みなさんこんにちは、ようやくワクチン一回目の接種にたどり着いた周回遅れの豊田です。身の回りの人たちは、先月初旬には大学の職域接種で一斉にワクチンを打ち始めていたわけなのですが、私は対象から外されたので岐阜市の接種券を待っていて、ようやく昨日、一回目を打ち終えました。

このままのスケジュールでいくと10月にワクチン二回目接種後2週間という完璧なタイミング。タイが10月に国境を開けてくれれば、あまり心配せずに渡航できそうなのですが、果たして...

さてさて、今週は北部調査のその②、チェンライ県のアッサムモンキーのお話です。

今週のYouTube動画はこちらです。
https://youtu.be/n8hL_tgFVMI
人が多い有名な観光地だけあって、背景に人の声が入りまくりという音響的には非常に残念な感じなのですが、良い映像は比較的たくさん撮れたほうです。

動画ではなるべくキャプションや吹き込みを排除した映像で編集しているのですが、せっかくチャンネルを開設したので、いつか視聴者さんと動画を見ながらその時のエピソードとかサルの解説をやるライブをやってみたいですね。私がまだYouTubeの機能をフルに使いこなせていないので、やり方がわからないのですが...


アッサムモンキーの住む地獄へ...

ルーイ県を後にした私は、ドンムアン空港で飛行機を乗り継ぎ、チェンライ空港にやってきました。

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チェンライ空港で早速レンタカーを手配し、アッサムモンキーの住むお寺を目指します。

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こちらがその目的地、Wat Tham Pla Maesai。県北部にあり、ミャンマーとの国境に近い場所です。

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このお寺、地獄寺として有名な場所らしく、地獄に落ちた人たちの像がたくさんありました。おばけみたいな像やガイコツがあちこちにあり、異様な雰囲気です。当時、地獄寺というものの面白さを知らなかった私は、なんか怖いし、こういうオバケ系は苦手なので、異様な像たちの写真を撮っていませんでした。今から振り返ると残念...

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池の上で自転車を漕いでいる謎のガイコツ...ほんま謎...というか怖すぎ...

中には10バーツ入れると歌って踊りだす奇妙な像まで...音質の悪さと像の劣化具合からホラー感満載。

こんなガイコツやら餓鬼像の横でうんち集めせなあかんのかい!と絶望していました。


地獄の使い!?アッサムモンキーとご対面

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さっそくお寺に入るとサルたちとご対面。この面構えである。昼間から公園で酒飲んでクダ巻いているオッサンかのようなデブオス。苦戦を強いられそうな予感...

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子ザルたちに因縁をつけられている私。日常的に観光客からエサをもらっているサルたちは人間にすごく慣れていて、気づくと足を引っ張られたりカメラの三脚によじ登っていたり...あらゆる妨害工作を受けて撮影は難航しました。でも、子ザルはやっぱりかわいいですね。ベンチでグータラしているようなオトナにはなってほしくないです。

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アッサムモンキーは、ネパール、ブータン、インド、ミャンマー、中国、ベトナム、ラオスあたりの山岳地域と、結構広範に生息しています。実はヒガシアッサムモンキーとニシアッサムモンキーの2亜種に分類されているようです。タイにいるのはヒガシアッサムモンキーの方。アカゲザルに似ていますが、もっと大型で顔も大きく、ちょっと赤いかな、という印象。そして、ベニガオさんのように、顔に薄っすらとまだら模様があるようにも見えます。

アッサムモンキーは、チベットモンキーと並んでベニガオザルと近縁種。大型のマカクで、社会交渉など行動面でも類似点が結構あります。ネパールを中心にアッサムモンキーを研究している日本人の研究者もいます。

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この調査地には、お寺の境内(池周辺エリア)と、急峻な階段を登った先にある洞窟エリアの2箇所に、2群ほどいるようでした。この階段がめちゃくちゃ急で、かつ雨季なこともあり階段が苔むしていてツルツル滑るんです...高所恐怖症の私はココでもまた足をプルプルさせながら手すりにつかまりやっとのことで洞窟エリアにたどり着くことができました。

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手すりにしがみついてプルプルしている私に接近してくるオトナのオス。しかも手すりを伝ってやってくる...もうダメかと覚悟を決めたものの、とりあえず写真を撮るあたり、タダでは死なない精神。


うんち拾い

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観光名所でもあるこのお寺には、サルたちにエサをやることができます。池の横にあるこの小屋でピーナッツを買うことが出来るため、びっくりうんち作戦が実行可能。滞在期間中、大量のピーナッツを購入してこの小屋の売上に貢献したのは私です。

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ヤバいオスにズボンの裾を掴まれ逃げられず、ピーナツを差し出す情けないサル学者の図。ピーナツを買ってバケツを受け取った瞬間、あっという間にサルたちに取り囲まれてしまいます。とにかくたくさん買って、瞬時に周囲にばらまかねばなりません。

もはや調査というより、サルのうんちを金で買ってきたと言っても過言ではない有様ですが、ミッションは無事にコンプリートしました。


黄金の三角地帯で見た貧富の差

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ミャンマーとの国境に近いメーサイ。調査地のお寺からちょっと移動すると国境です。

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この小さな川にかかった橋を渡ればもうそこはミャンマー。日本のような島国の人間としては、こんな簡単に国境を超えられるということに驚きます。

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国境での検問。この年の10月から、日本国籍の場合はVISAなしでミャンマーに入国できるようになっていたらしいのですが、私がいた時はまだ入国できず。まぁ調査旅程にも入っていないので、どのみち入国はできなかったのですが、悔しかったのでゲート前で記念撮影。


そんなある日の夜、ホテル近くのレストランでご飯を食べていた時のこと。

急に、見るからに貧しそうな服装の女性がお店に入ってきて、涙ながらに店員さんに何かを訴え始めました。どうやら、ミャンマーからの密入国者で、仕事がなく子どもたちを食べさせていけないため、ここで働かせてほしいと訴えているようでした。お店の人も困った様子で、不法就労になるからと断っていました。

その時、周囲にいた他のお客さんたちが一斉にその女性に駆け寄り、次々とお金を渡しました。お店の店員さんも、家族の人数分の夕食を用意し、その女性に無料であげていました。その光景を見て、私は胸が熱くなったのを、今でも覚えています。

バンコクでは、お金稼ぎの一環として路上で物乞いをやっている人を見かけます。みんながみんな偽モノではないと思いますが、多くの人は素通りです。

でもここはミャンマーとの国境地域。貧困から脱するため、タイでの収入を求めてやってくる、本当に困っている人たちがたくさんいるという現実。密入国という違法な手段での入国にも関わらず、そういう人たちに、とっさにお金を寄付できるタイ人の道徳的倫理観。

仏教的な行動規範が、ここでは貧者にとっての最後のセーフティネットになっているのだと痛感し、色々と考えさせられる出来事でした。

とっさに何もできなかった私は、チェンライ最終日にそのお店の店員さんに、また同じような人が来た時の食費に充ててくださいとお金を渡すことくらいしかできませんでした。


そんなこんなで、調査や研究以外にも、まだまだ人間として学ぶべきこと、知るべき現実があるのだという、当たり前のことを突きつけられた、チェンライでの旅でした。

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ちなみに本場のカオソーイはしっかりと堪能してきました。


地獄寺について

タイ南北調査を含めてあれこれいろんなモンキーテンプルを訪れた中で、今回初めて意識した「地獄寺」。よく考えれば、プラクルアンを求めて訪れたお寺の中にも、怖い像があるお寺ってあった気がするし、像がなくても壁画ならあったお寺がいくつもあったなぁ...なんて思い出すと、今まで結構面白いものを見逃し続けてきたのだと気づきます。

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というわけで、タイでお寺巡りをする機会のある方はぜひ、地獄寺研究家・椋橋さんの著書「タイの地獄寺」を読んでおくことをおすすめします。仏教における地獄の説明から、タイにおける地獄寺の解説まで、情報が詰まっています。これを事前に読んでおけば、意味不明な怖いガイコツにもちゃんと意味を見出すことができます。私もチェンライに行く前にこの本と出会いたかった...そしたらもっと写真撮ってきたのに...


さて、次回は、ちょっと旅程がさかのぼりますが、南部で移動の道中に立ち寄ったモンキースクールのお話を書きます。

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タイサル!シリーズ過去の配信アーカイブはこちらから↓

連載コラム「タイでサル調査!研究奮闘記」配信開始のお知らせ
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n28a1dc0c9402
第1話「海外調査の生活拠点」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n985accf6fef3
第2話「調査地で楽しむタイ料理!食事編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5444528ab0bb
第3話「シャワーも命がけ!?お水事情その①」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5bcd9a17bc1
第4話「シャワーも命がけ!?お水事情その②」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7c4f68bf12d1
第5話「シャワーも命がけ!?お水事情その③」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n56d26d529251
第6話「泥水との激戦を終えて」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n375ca4ab7be2
第7話「調査生活のオトモ!タイの犬たち」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7968f75aea75
第8話「その日のことはその日のうちに!調査の1日のルーティンワーク」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfdac8fac1ec6
第9話「忘れ物確認ヨシ!調査時の装備について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n4fef7eb2e320
第10話「写真へのこだわり」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na4da37e13e8d
第11話「誰だ誰だかわからない!個体識別の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1648bde20bab
第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n24c3478ea661
第13話「サルたちの名前の付け方の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nb6a8e6119ced
第14話「タイの仏教文化とサルたちの関係について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9a7a6814730d
第15話「タンブン行為で私が心配していること」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd1360f5568af
第16話「タイ生活の必需品、プラクルアンとは?」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n6bcc5b875bb5

タイ南北調査特集はこちらから↓
第17話「南北調査シリーズ開始&YouTubeチャンネル開設のお知らせ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ncab1c13b6bf9
第18話「南部調査その①:Puckerを拝みに...キタブタオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5d3df0969439
第19話「南部調査その②:白いメガネが印象的!ダスキールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na32091a5b055
第20話「南部調査その③:見慣れたサルのはずなのに...ベニガオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n3488e5942c1a
第21話「南部調査その④:アナタどこにでもいるわね!カニクイザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n219720155be3
第22話「北部調査その①:黄金の赤ちゃんを求めて〜ファイヤールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndeb079c8825c

番外編の過去の配信アーカイブはこちらから↓
私論:「ココナッツモンキー」は動物虐待なのか?
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne6add28fc064
遺跡の街ロッブリーに住むカニクイザルの歴史
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1679cb4029b2

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個人ホームページを開設しました。こちらからどうぞ。
Twitterはこちらです。ベニガオザルのみならず、これまで撮影してきたサルたちの写真を載せています。

イラストレーターのはなさわさんのサイトはこちらです。
こちらもあわせて御覧ください。





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