タイサル!第9話「忘れ物確認ヨシ!調査時の装備について」
みなさんこんにちは、申請書提出前で死にかけの豊田です。
日記は3日と続けることができない私ですが、タイサルは第9話まで来ました!毎回色々と反響を寄せていただける皆様のおかけです、どうもありがとうございます。
さて、今週は調査時の装備についてのお話です。私が調査中にどんなものを持ち歩いているのか、簡単にご紹介します。
調査の持ち物:基本セット
調査時に何を持っていくかは、研究者によって違います。調査内容によっても、また、アシスタントが居るか居ないかによっても違います。私の場合はひとりですので、必要なものは全部自分で持っていきます。
これが私の調査基本セットです。
カメラを首からぶら下げ、ハンディカムを腰にセットし、フィールドノートやスマホなどの小物はベストのポケットに収納します。バックパックにはGPSをぶら下げ、中には水と非常時のお菓子の他、雨具や三脚、予備バッテリーなどをしまっています。虫除けスプレーとポイズンリムーバーも大事です。私の調査地ではダニはあまりいないし毒蛇もいないはずなのですが、蜂にはしょっちゅう刺されますし、やばいサソリもいるので、リムーバーがないと心配です。サルの頭数集計用のカウンターや、コンパス、非常用の笛、巻き尺なども持っています。
とにかく多量の汗をかくのでタオルは必須、水も2Lはあっという間に飲んでしまいます。ペットボトル半分くらいの水を凍らせ、出発前に水を足して、タオルにくるんでもっていきます。なにせ気温は35度以上が当たり前なので、調査中にずっと冷たい水が飲めるのはなかなかに幸せです。前日夜に凍らせるのを忘れた時の絶望感は、この世の終わりくらいのインパクトです。
その他、腰に枝切り鋏をホルダーに収めてもっています。森の中でヤブを移動する際に道を切り開いたり、棘のあるツル植物に絡まれて死にかけた時に使う用です。ポケットには作業用グローブも持っています。崖を登る際などに、素手では怪我をしてしまうためです。
私はズボンは必ずこのDickiesのダブルニーカーゴパンツと決めています。丈夫で破れないし、ポケットが深いので座っても中身が落ちません。サイドポケットも優秀で、DNA採取キットなどラクラク収納できます。もはやこのズボンなしでは調査など考えられないくらいです。
ちなみにこのズボンが好きすぎて普段もこれを履いています。くたびれてきたら調査着用に回します。常に5−6本は普段着用に持っていて毎日履いていますが、きっと他人から見たら区別はつかないでしょうね...毎日同じズボン履いてる、と思われていると思います(別に気にしないけど)。
足元は軽登山靴に、ゲイターを履いています。虫対策で足元はしっかりと覆って露出をなくします。
調査の持ち物:撮影機材
カメラは最も重要な調査道具のひとつです。私はメイン機にNikon D500、サブ機にD7100を使っています。レンズは、AF NIKKOR 80-200mm F2.8EDと、AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRを使っています。
AF NIKKOR 80-200mm F2.8EDは古い製品でフォーカシングも遅いし、とにかく重たいんですが、直進式ズーム機構が本当に使い勝手がいいので、好んで調査に使っています。構えている時にレンズをしっかりホールドしたままカメラ本体の向きを変えても倍率が変わらないし、感覚的にスイスイズームできたりするこの機構、新しいレンズでも復活してほしいなぁと思っています。
AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRは、400mm望遠を要する調査の時や、良い写真を撮ろうという日以外はあまり使いません。なにせお高いので、使うのに気が引けます。調査中、レンズは砂埃をかぶるし、崖に登る時は岩にガンガンぶつけるし、雨に降られれば濡れてしまいます。過酷な使い方をする場合は、80-200mm F2.8EDで撮影します。
コンデジはRICOHのWG-30を持っていました。サルが食べた果実や種子の残骸などを撮る時に望遠では手元が撮れないので一応もっています。接写が優秀なので重宝します。欲を言えばOLYMPUSのTGシリーズが欲しいのですが...
ビデオカメラは、4K画質のものを使います。圧倒的にきれいに撮影できるので、動画が持つ情報量も増え、資料的価値も上がります。藪の中に居るサルたちや、木に登って葉っぱを食べている場面などを撮る時はフォーカシングに苦労します。フォーカス調整を自動に任せていると使えないことが多いので、自分で調整できるリングなどを備えたモデルでないと調査には使えません。私は、SONYのAX-60と、PanasonicのWX-990Mを使っています。
こういった調査道具は高額なので揃えるのもけっこう大変なのですが、商売道具である以上、良いものを使わねばいい仕事はできません。撮影機材は科研費を使うと面倒なので、私の場合は貯金をはたいて購入してしまいます。私物の方が気が楽だというのもあります。
その他の便利グッズ
あると便利なグッズとして、目出し帽的なものがあります。
こんな感じの、帽子に布がついたみたいなものです。
かぶるとこんな感じになります。
タイ人がよく使っているもので、多分日焼け防止や、草刈り中の飛び石から顔を保護するなど、いろんな機能があるんだと思います。田舎の商店で買うと300円もしません。
初めて路上でこの帽子をかぶったタイ人がバイクで接近してきた時は、拉致されるのかと思った記憶があります。見るからに怪しく銀行強盗みたいな雰囲気です。顔が見えないために最初はサルたちにも警戒されてしまいます。でもこれをかぶっていると、目に集まってくるウザい虫を防ぐことができて、森の中でも結構快適です。
これはタイで売っているナタです。一本1000円くらいです。値段の割に質は悪く、2−3日も使うと切れ味が悪くなります。刃部分が簡単に柄からスポッと抜けて危ないので、買ってきたら電気ドリルで穴を開けて金属棒を通して刃と柄の接続部を補強します。普段持ち歩くには重いし邪魔なのですが、調査開始時の調査路開拓に使います。雨季にはあっという間に植物が茂って調査路が覆われてしまうので、週に一回は整備のためにもっていきます。
こんな感じで、調査内容や時期に合わせて、色んなものを持っていきます。
総重量が何キロになるのか量ったこともありませんが、なんだかんだで相当な重さになります。タイの猛暑の中、この装備を担いで、歩いても歩いてもサルに出会えない日は本当に消耗します。
小道具の大半は毎日使うものではないのですが、いざ!という時にないと、本当に悔しい思いをします。その瞬間にデータの質が決まるような場合は悔やんでも悔やみきれません。なので、毎日全部持って歩きます。
こういうものって、忘れた時に限って、必要になることが多いんですよね、気をつけないと。
次回はこんなに重たい機材もってどうすんの?ってことで、調査における撮影へのこだわりについて、お話しようと思います!
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