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タイサル!第19話「南部調査その②:白いメガネが印象的!ダスキールトン編」

こんにちは、タイ国内での感染者数増加のニュースを見るたびに調査再開が遠のいていくのをただただ眺めている日々であります。感染者数が増加するに従って私の研究モチベがどんどん下がっていきます...そんな死にかけの底辺研究員の豊田です。

さて、今週は南部チュンポーン県での調査の続きです。キタブタオザルに続いて、今度はダスキールトンのお話です。

今回のYouTube動画はこちらです↓
https://youtu.be/bFVVmDGyzYI

いざ、ダスキーとお目見え!

ダスキールトンの調査地のお寺は、キタブタオザルの調査地のお寺から車で20分くらいの距離にありました。というわけで、チュンポーン県内での滞在期間中はほぼ代わり映えしない範囲内でのみの移動でした。

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お寺に近づくにつれて、ルトン横断注意の看板を見かけるようになります。

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こちらが調査地のWat Tham Khao Plu。切り立った岩山の麓にあるお寺です。ダスキー調査時は毎日雨が降っていました。このお寺の地面、なぜかツルツル滑るんですよね...ここでは何度も転びかけました。

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階段を登っていくと、なぜかそこにはクジラ?の骨が...たまにタイのお寺でこういう洞窟の中にクジラの骨を見つけることがあるのですが、なにか意味があるのでしょうか。

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境内にあるダスキールトンの説明が書かれた石碑。結構お金をかけて制作されているみたいです。横断注意の道路標識と同じ柄なので、もしかしたら標識もお寺の関係者の方が設置されているのかもしれません。


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こちらがダスキールトン。お寺のあちこちにいました。

目の周りと口元が白いのが特徴です。上の石碑の写真を見ていただくと気がつくと思いますが、そこでの表記は「Spectacled Langur」という表記になっています。直訳するとメガネラングール、別和名のシロマブタザルに該当するような名前です。タイ人も「メガネザル」と言ったりします。

メガネザルって言うと、別の種類なんですけどね...

ダスキールトンは実は結構レアなサルで、マレー半島にしか生息していません。タイ中部以南からマレーシアにかけてのエリアで見ることができます。

タイではダスキールトンを見ることができる有名なスポットが幾つかあります。私の調査地があるペッチャブリー県にあるケンクラチャン国立公園にもいます。観光で気軽に立ち寄れる場所として有名な場所では、プラチュアップキリカーン県にあるプラチュアップ歴史公園です。タイ空軍基地の敷地内にある観光地らしいのですが、そこでもダスキールトンを見ることができるそうです。

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せっせとしっぽのお手入れをしています。こう見えて体は結構大きいのですが、きれいなグレーの毛でモフモフしているのでかわいいですね。

実はこの顔と外見からは想像できないような声で鳴きます。結構低い声で「ガッガッ」と鳴いたりします。また朝夕にはオスが猫のさかり声みたいな音声を発するらしく、調査中も数回、その声を聞きました。初めて聞いたときは一体何事か!?と思ったくらい、奇妙な声でした。録音しようと思ったのですが失敗に終わったので、気になるひとはネットで調べてみてください。

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お寺には餌やり場が入り口と寺奥の2箇所くらいあって、主にバナナが与えられていました。

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葉っぱ喰いのサルたちだけあって普段はずっと木の上で休んでいます。お寺の境内に出てきてバナナを食べたら、後はまた木の上に登ってダラダラ過ごします。写真を撮ってもこんな感じばかり。アフリカの熱帯雨林で念願の野生アビシニアコロブスを目の前に惨敗した記憶が蘇ります。


しかしここはお寺@タイランド!

ツルツル滑る階段を登れば、高さを稼ぐことができます。そして今回は400mm望遠もあります。撮影ポイントさえ把握すれば、バッチリ余裕でございました。

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餌場付近でぐーたらするダスキールトン。


うんち拾い

私の任務はうんち拾いです。

そしてルトンではこのうんち拾いの難易度がマカクの比にならないのです。

そもそも樹上性なので、基本ずっと高いところにいます。地面をウロウロしていることはほぼありません。なので、うんちは樹上から降ってきます。うんちが降ってくると「ピターーン!」という音がするので、「新鮮なうんち」はわかります。でも地面に叩きつけられて潰れてしまうので、肝心の中身を取ることができない場合がほとんどです。

なので、餌やり場付近に待機し、比較的低い場所から、下がコンクリでない場所に落ちた、レアうんちを待つしかありません。

ここでは調査中6個しか採れませんでしたが、採れただけマシでした。

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調査をさせてもらったお礼と、うんちをくれて写真まで撮らせてくれたサルたちに感謝を込めて、最終日にお金を寄付し、チュンポーン県での調査を終えたのでした。


***うんち拾いの裏技:タンブンの活用***

自分の研究ならまだしも、他の人から任された調査で「うんちが採れませんでした」は通用しません。何が何でもうんちをゲットして帰らなければならないのです。そこで、確実にうんちをゲットするための最終手段は必ず用意しておかなくてはなりません。その方法をここでご紹介します。

うんち拾いにはコツがあります。私は学部・修士とニホンザルの糞サンプルを拾いまくっていた時期がありました。修士研究では144日間の調査で746個のうんちを集めました(修論より)。

サルたちがうんちをする確率が高いタイミングは、ケンカの時です。誰かとケンカになってびっくりしたり緊張したりする時が狙い目です。こうしたうんちを「ビックリうんち」と呼びます(僕が勝手に呼んでるだけだったらごめんなさい)。

今回の調査のように、見知らぬ所で、短期間で、効率よくうんちを集めるには、このビックリうんちを狙うのが有効です。

というわけで、最終手段は、「餌をまく」というのが手っ取り早い方法になります。餌まきのタイミングはみんな興奮し、軽い小競り合いみたいなケンカが頻発しやすいので、ビックリうんちがたくさん採れます。今回のような調査では、もしもうんちが採れなかった時のために、なにかサルにあげられるものを用意しておく必要があるのです。

チュンポーン県ではあちこちに焼きバナナの屋台があり、その関係でバナナを売っているお店がたくさんありました。なので、調査期間中は毎朝、路上に点在するお店でバナナを仕入れていました。

「とりあえずたくさんください」とお店の人に頼むと、最初は怪しまれます。お店によっては数房並んでいるだけのところもあるので、「これ全部ください」と頼むことになります。明らかにタイ人ではない私がバナナを大量に買い付けに来るので、理由を聞かれます。

「サルたちにあげるんです」と答えると、あるお店で、「お代はいらないから、私の代わりにタンブンしてきてね」と言われ、ちょっと熟れ過ぎて売れなくなったバナナをたくさん無料で託されたことがありました。お店の人にはすっかり”タンブン日本人”として認知され、毎朝来るように言われ、行くとすでにタンブン用のバナナセットが用意されるようになっていました。

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写真はタンブン用のバナナをもらった時のもの。チュンポーン県滞在中毎日お世話になりました。タイ人のタンブン精神、本当にすごいなぁと実感する出会いでした。

こうしてバナナやさんの善行を背負い、お寺でバナナをまき、私はその対価としてうんちを得ていたわけであります。

こうして無事にキタブタオザルとダスキールトンからうんちをゲットした私は、チュンポーン県を後にし、更に南下、ナコンシータマラート県に向かったのでした。

次週は南部のベニガオさんのお話です!

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タイサル!シリーズ過去の配信アーカイブはこちらから↓

連載コラム「タイでサル調査!研究奮闘記」配信開始のお知らせ
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n28a1dc0c9402
第1話「海外調査の生活拠点」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n985accf6fef3
第2話「調査地で楽しむタイ料理!食事編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5444528ab0bb
第3話「シャワーも命がけ!?お水事情その①」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5bcd9a17bc1
第4話「シャワーも命がけ!?お水事情その②」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7c4f68bf12d1
第5話「シャワーも命がけ!?お水事情その③」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n56d26d529251
第6話「泥水との激戦を終えて」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n375ca4ab7be2
第7話「調査生活のオトモ!タイの犬たち」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7968f75aea75
第8話「その日のことはその日のうちに!調査の1日のルーティンワーク」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfdac8fac1ec6
第9話「忘れ物確認ヨシ!調査時の装備について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n4fef7eb2e320
第10話「写真へのこだわり」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na4da37e13e8d
第11話「誰だ誰だかわからない!個体識別の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1648bde20bab
第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n24c3478ea661
第13話「サルたちの名前の付け方の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nb6a8e6119ced
第14話「タイの仏教文化とサルたちの関係について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9a7a6814730d
第15話「タンブン行為で私が心配していること」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd1360f5568af
第16話「タイ生活の必需品、プラクルアンとは?」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n6bcc5b875bb5

タイ南北調査特集はこちらから↓
第17話「南北調査シリーズ開始&YouTubeチャンネル開設のお知らせ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ncab1c13b6bf9
第18話「南部調査その①:Puckerを拝みに...キタブタオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5d3df0969439


番外編の過去の配信アーカイブはこちらから↓
私論:「ココナッツモンキー」は動物虐待なのか?
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne6add28fc064
遺跡の街ロッブリーに住むカニクイザルの歴史
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1679cb4029b2

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