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タイサル!第35話「11月といえば!タイの恒例行事、ロイクラトンの話」

ポンコツ研究員の豊田です。今週から日本モンキーセンターで骨格標本の計測作業が始まりました。園内をうろつく怪しいヒゲ男がいたら私かもしれません。

打ち合わせのついでに久々にカメラをもって園内を散策しましたが、腕の筋力がすっかり弱くなってしまっていて、望遠レンズを支える腕がプルプルして衝撃を受けました。これは筋トレをせねばならない...

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リスザルの島にて。JMCのリスザルの島とワオランドは撮影の練習にはもってこいのロケーション。特にリスザルの島は、陽の光の当たり具合とかが森の中の環境に近いので、設定の感を取り戻すには最適です。被写体が小さく、かつ樹上性が強いので、逆光には苦しめられますが...

さて、先週はバタバタしていて更新を逃してしまったタイサルですが、実は先々週?の金曜日、満月の日はタイの恒例行事・ロイクラトンの日でした。更新しそびれてしまいましたが、せっかくなのでロイクラトンのお話をします。


ロイクラトンとは?

ロイクラトンは、タイで最も美しいお祭りとも言われる、灯篭流しの行事です。旧暦12月の満月の夜に、クラトンと呼ばれる灯籠を川に流し、川の女神プラ・メー・コンカーへ感謝の気持ちを捧げ、自らを清める行事とされています。

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こちらは調査地のおばさんから毎朝恒例の画像として送られてきたもの。この女性が流しているものが、クラトンです。

YouTubeでこんな紹介動画を見つけました。

クラトンは、バナナの木の茎を土台に、バナナの葉を折ったパーツで装飾します。蘭などの花を添えて、ろうそくと線香を挿します。これを川に流すという、コンセプト自体はとても優美なお祭りです。

クラトンの作り方は、こんな感じ。

自作する人はほとんどいないと思いますが、小学校とかでは授業でクラトン作りを経験するようです。

ロイクラトンは数あるお祭りの中でも大きな行事のひとつなので、バンコクなどでは川沿いに人がたくさん来ます。あまりに人がたくさん来るので、クラトンを流す場所がなくなるため、大きい柄杓みたいなもので川に流したり、川に流してくれる担当の人がいるところに行ってクラトンを託したり(笑)、川沿いに設置されたウォータースライダーみたいなものから流したりと、様々な方式がとられたりします。

本来は優美な行事のはずですが、これだけ沢山の人が来る場所でクラトンを流すと、あちこちで引っかかって滞留し、たまに転覆したりして、きれいに流れていく様子を眺めることはまずできません。おまけに、ちょっと下流あたりに船が停まっていて、流れてくるクラトンを「ゴミ」として回収している現場を見てしまったりします。そんなの風情もへったくれもないなぁと思うのですが、そこはマイペンライ精神。タイ人の皆さんは、きれいなクラトンを買って川に流しさえすればOKというおおらかさで、行事を楽しんでいるようです。


調査地周辺のロイクラトン祭り

私の調査地のような田舎にもロイクラトン祭りはやってきます。地元の市場に行くと、たくさんのクラトンが売られていたりします。

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これは、ロイクラトン祭りのために地元の小学生が制作したクラトンの売り場。お値段は1個20バーツから。売上金は小学校に寄付されるということだったで、私は高めの60バーツのクラトンを購入。

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うーん、きれいですなぁ!


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近くの誰もいない水路でロイした私のクラトン。途中まで優雅に水面を漂っていましたが、本流に差し掛かった途端ものすごい速度で流され、余韻もクソもなくあっという間に消え去りました...

僕のクラトン...泣


調査地の溜池にも...

ロイクラトンの日は調査地の池にクラトンを流しに来る人もいます。そんなところでやっても、流れなんかないからただ浮いているだけだし、ただの汚い池なので水の女神さんなんかいないし、というかそれ、僕のシャワーの水なんですけど...

なーんて屁理屈を考えている私を他所に、本人たちはとっても楽しそう。確かに、人の多いところへ行くよりも、誰もいないところで家族みんなでゆっくり流して、いつまでも浮かんでいるクラトンを見て子どもが喜んでいるのを眺めている方が、よっぽど幸せかもなぁ、と思ったりするわけです。


近年のクラトン

ロイクラトンは伝統行事なのですが、ごみ問題という点から見ると、確かにまぁ結構な環境破壊行為と言われても仕方がないです。この日だけで凄まじい数のクラトンが一斉に川を経て最終的には海に放出されるからです。

殆どはバナナなどの植物素材でできているため、最終的に分解されはするんでしょうが、ろうそくは燃え尽きる前に水に濡れて消えてしまうのがほとんど。おまけにきれいな葉っぱの装飾も、よく見るとバチバチにホチキスや針が使われています。こんな小さな金属片を大量に海に流すのは、確かに良くないことかもしれません...。下流で回収されてしまうのも、仕方ありませんね。

最近は、パン生地でできたクラトンも販売されています。パン生地でできたクラトンは、確かに水に浮くし、ゴミにならずにそのままお魚さんたちの食べ物になります。ホチキスも使わなくて済むし、環境への配慮という点では良い取り組みですね。

でも、パン生地クラトンは見た目があまりよろしくないんですよね。当たり前ですが、パンなので焼けばふっくらしてしまうし、細かな装飾性は一切ありません。

年に一度のロイクラトン祭りには、きれいで豪華なクラトンをもって、川沿いでインスタ映えする写真を撮りたい、という気持ちも、わからなくもないです。そこらへんは、みんなの意識の変化と合意が不可欠ですね。

個人的には、クラトンは流してしまうにはもったいないので、造花か何かでできたレプリカがあれば家に飾っておきたいなぁと思ったりするわけですが。だれか、レジンとかプラスチックで小さいキーホルダーとか作ってないかなぁ...



タイにいると、調査地のような田舎でもいろんな行事を経験できます。観光地でのお祭りよりも、こうした地方の田舎で経験するお祭りのほうが、より伝統的で、趣もあるのかなぁと思ったりします。

ちなみに、ロイクラトンの時期になるとショッピングモールの催し物会場とかでは高頻度で「ロイクラトンの歌」が流れます。

ローイ ローイクラトン♪ローイ ローイクラトン♪

っていうのを聞くと、クラトンがずらーっと並んだ催し物会場を思い出して、懐かしい気持ちになります。

来年のロイクラトン祭りは、タイで楽しめたらいいなぁと思います...


次回のタイサル!は、調査地の山に眠る黄金の仏様のお話です!

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タイサル!シリーズ過去の配信アーカイブはこちらから↓

連載コラム「タイでサル調査!研究奮闘記」配信開始のお知らせ
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n28a1dc0c9402
第1話「海外調査の生活拠点」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n985accf6fef3
第2話「調査地で楽しむタイ料理!食事編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5444528ab0bb
第3話「シャワーも命がけ!?お水事情その①」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5bcd9a17bc1
第4話「シャワーも命がけ!?お水事情その②」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7c4f68bf12d1
第5話「シャワーも命がけ!?お水事情その③」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n56d26d529251
第6話「泥水との激戦を終えて」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n375ca4ab7be2
第7話「調査生活のオトモ!タイの犬たち」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7968f75aea75
第8話「その日のことはその日のうちに!調査の1日のルーティンワーク」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfdac8fac1ec6
第9話「忘れ物確認ヨシ!調査時の装備について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n4fef7eb2e320
第10話「写真へのこだわり」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na4da37e13e8d
第11話「誰だ誰だかわからない!個体識別の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1648bde20bab
第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n24c3478ea661
第13話「サルたちの名前の付け方の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nb6a8e6119ced
第14話「タイの仏教文化とサルたちの関係について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9a7a6814730d
第15話「タンブン行為で私が心配していること」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd1360f5568af
第16話「タイ生活の必需品、プラクルアンとは?」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n6bcc5b875bb5

タイ南北調査特集はこちらから↓
第17話「南北調査シリーズ開始&YouTubeチャンネル開設のお知らせ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ncab1c13b6bf9
第18話「南部調査その①:Puckerを拝みに...キタブタオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5d3df0969439
第19話「南部調査その②:白いメガネが印象的!ダスキールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na32091a5b055
第20話「南部調査その③:見慣れたサルのはずなのに...ベニガオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n3488e5942c1a
第21話「南部調査その④:アナタどこにでもいるわね!カニクイザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n219720155be3
第22話「北部調査その①:黄金の赤ちゃんを求めて〜ファイヤールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndeb079c8825c
第23話「北部調査その②:ガイコツの隣でうんち拾い...アッサムモンキー編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/naf23f701a677
第24話「南北調査おまけ:噂のココナッツモンキーを求めて−モンキースクール編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfb50e551aa1a

第25話から調査地シリーズに戻ります↓
第25話「年に一度の風物詩!コウモリ集団飛翔の撮影秘話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n0b4911b372e2
第26話「気づけば部屋が虫だらけ!マレーンマオ大量発生の悲劇」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n264fade216ea
第27話「思い出いっぱい!タイで購入したmy冷蔵庫の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n071966d6f39a
第28話「クリスマスにひとりで死にかけた話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nead29459b1db
第29話「調査地での同居人・チンチョッとの日々のあれこれ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nab48db873ca1
第30話「30回更新記念:タイサル!シリーズの振り返りと今後について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd7f4df7fdc46
第31話「雨の日の定番!カエルの唐揚げができるまで」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n46e0aa051425
第32話「ベニガオザルの噂の真相」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndde380f51a93
第33話「担当イラストレーターさんとnoteコラボやオリジナルグッズ誕生について対談してみた」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n2d34def8697b
第34話「調査地を思い出すタイの歌ー独断と偏見で選ぶ私的25選」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n95cddb7e6dfb

番外編の過去の配信アーカイブはこちらから↓
私論:「ココナッツモンキー」は動物虐待なのか?
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne6add28fc064
遺跡の街ロッブリーに住むカニクイザルの歴史
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1679cb4029b2

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