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タイサル!第27話「思い出いっぱい!タイで購入したmy冷蔵庫の話」

ベタの稚魚の育成に大忙しな豊田です。タイは結局10月中の渡航規制解除には至らず、もう年内は完全に諦めレベルです。なのでせっせとベタの繁殖に勤しんでおります。

今週はもうひと組のペアのペアリングに成功し、産卵を確認しました。リビングのあちこちに稚魚の餌用のゾウリムシを培養するペットボトルを置きまくっているので、家族から冷ややかな視線が送られております。

稚魚の世話をするというより、もっぱら、ゾウリムシを培養しているだけのおじさんになっています。


さて、今週のタイサルは、調査地で買った冷蔵庫のお話です!

調査地の冷蔵庫

部屋にはもともと、小さな冷蔵庫が備え付けでありました。ホテルなどでよく見かける、小さな1ドアタイプのものです。

短期の調査であればこのサイズの冷蔵庫で十分事足りるわけですが、長期調査になってくると容量不足です。冷凍スペースもないため、食料の保存や調査中の冷たい飲み水確保が難しくなります。

というわけで、2015年に調査を開始した直後、真っ先に購入した文明の利器は、大きめの冷蔵庫だったわけです。


モデル選び

さっそくペッチャブリーの市街地まで移動し、タイのホームセンターHome Proに行って、冷蔵庫を探します。

当時、ホルモン分析のために糞サンプルを収集する可能性があった私にとって、調査地で試料の冷凍保存ができる設備があるというのは、研究の幅を広げる上で重要なアドバンテージでもありました。そこで、冷凍室が2室以上あるタイプを選んで、一室を糞サンプルの保管用にしようというアイデアもありました。

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しかしながら、そういう高機能・大容量タイプのモデルはお値段が一気に高くなるため、当時院生で私費で調査をしていた私にとってはとても買えるものではありませんでした。

あれこれ悩んだ挙げ句、糞サンプル保管というオプションは諦め、無難なSHARPの2ドア冷凍冷蔵庫を7000バーツで購入しました。

今から考えると、当然といえば当然です。いくらスペースが分かれているとはいえ、食料とうんちを同じ冷蔵庫内で保管しようという考えそのものが完全なるバグです。

研究のために調査地でサバイバル生活をしていると、合理化を追求しすぎる結果、こういった倫理的なバグがしょっちゅう起きてしまいます。このバグを修正しないまま日本に帰ってくると、日常生活で大きな問題を引き起こすことになるわけです...

この時の狂気の名残で、調査地の冷凍室の扉にはマジックで「食品専用 FOOD ONLY」と書かれています。コレを見るたびに、コレ以上バグってはいけないと戒める効果があります。

ちなみに現在は正常な思考を取り戻し、糞サンプル保管用にもう一台、うんち専用の冷凍庫を調査地に導入しようと考えています。トップ画像にあるような、上開きの大容量冷凍庫です。7000バーツも出せば、たぶんうんち収集調査2年分くらいはストックできるのでは、と思っています。


調査地に運び込むにも一苦労

さて、冷蔵庫を買ったは良いのですが、調査地まで運ばねばなりません。普通車でHome Proに来ていたので、自力で運ぶことは困難でした。

お店に聞いても、配達サービスはやっていないと言われてしまいました。多分ですが、調査地が店から遠い&場所がよくわからないということで、断られたのだと察しました。

しかしここはタイランド。なんとかする手段があるはずです。

というわけで少し店内をウロウロして、暇そうな店員を探します。そして、その人達に、車で出勤してきているか、車種はなにか聞いて回ります。

すると、ピックアップで出勤しているという暇そうな兄ちゃんを発見。早速、交渉開始です。

私「ピックアップで冷蔵庫を調査地まで運んでくれる?往復1時間くらい。1000バーツ払いますよ...」

店員「ダイ カッポン!(もちろんできます!!)」

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あっという間に交渉成立。そのお兄ちゃんは即答で了承してくれ、こっそり勤務を抜け出して、私の冷蔵庫を運んでくれることになりました。

この兄ちゃん、裏口からこっそりと出てくるのかと思いきや、私が買った冷蔵庫を堂々と正面出口から搬出し、そのまま自分の車に積み込みました。こういう度胸、見習いたいものです。

道中、15分ほど土砂降りのなかを走行する羽目になってしまい、調査地に着いた時には梱包のダンボールが溶けて冷蔵庫の一部が雨ざらしになっていました。

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雨に降られてもマイペンライ!「濡れてごめんね」の一言もなく、動作確認を待つでもなく、兄ちゃんは1000バーツを受け取ってさっさと帰っていきました。まぁ、ちゃんと動作したので良しとします。

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幾多の困難を乗り越え調査地にやってきたマイ冷蔵庫。

こうして大容量の冷凍冷蔵庫をゲットした私は、氷を作ることができるようになり、また大量の食料を安全に保管できるようになりました。生活の質が一気に向上しました。


2019年、マイ冷蔵庫、不調になる

2019年、調査地に戻ってきた時に、冷蔵庫が不調になっていることに気が付きました。何時間経っても一向に冷えないのです。冷凍室はちゃんと冷えるのに、冷蔵室がいつまで経っても生ぬるいままなのです。

私が留守の間、この冷蔵庫は調査地の職員さんたちが使っていました。ところが、いつから不調なのか、なにか原因を知らないか聞いても、誰も何も答えず...

結局、修理に出すという話になりました。

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地元の家電修理屋に持ち込まれたマイ冷蔵庫。このためにピックアップが出動してくれたので、この機を逃すまいと、お隣さんも洗濯機を持ち込みます。連れションならぬ連れ修理。

2週間ほど経って、修理が終わったとの連絡がありました。店主の話では、モーターだか何かを交換したということなのですが、パッと見てもどこを交換したのかわからず。なんなら外から見える範囲で私がこっそり印をつけておいた部品はそのまま。ホンマに修理したんかワレ!と言いたいところ、現場では確認しようがないため、言われるがまま1200バーツを支払い帰宅しました。


それでも一向に冷蔵庫が冷えず、おかしいなぁ、やっぱりあの修理屋、ヤブでぼったくられたんちゃうやろか?と思っていたある日。冷蔵庫の中をしげしげと眺めていると、ある事に気が付きました。

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この冷蔵庫には、こんな感じの調節レバーがついていました。

冷蔵庫が冷えへん!とパニクった初日、何も考えずにレバーを「MAXじゃ、オリャ!」と一番右までスライドさせたのですが、よくよく眺めていると、このレバーの意味するところは、単純に

「右がMAX、左がmin」

ではなく、

「右にスライドさせるほど冷凍室への冷風出力がMAX(冷蔵室への冷風出力がmin)になり、左にスライドさせるほど冷蔵室への冷風出力がMAX(冷凍室への冷風出力がmin)になります」

という意味なのでは?ということに気づいたのです!

なんじゃこの意味不明な調節レバーは!と思いつつも、レバーを「冷蔵庫へMAXじゃ、オリャ!」と左へスライドさせたところ、数時間後には無事冷蔵室がヒエヒエになりました。

結局調節レバーの問題やったんか!というオチなのですが、だとすると修理屋に払った1200バーツは何なんや?という話になります。結局この件、修理屋は「部品交換したから」の一点張りにつき泣き寝入りです。1200バーツもあれば1ヶ月は暮らせるのに...

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こういうムカつきイベントが発生するのも、タイ調査地の愉しみというか醍醐味というか、飽きずにやっていられる刺激みたいな、そんな感じです。


しかし、思い込みというのは恐ろしいものです。普通は出力調節レバーなど各室に1個ずつついているものだと思いこんでいた私は、こんな調節機構になっているとは思いもしませんでした。

調査終わりには飲むと頭が痛くなるほど冷え冷えのお茶が飲みたいし、調査に持っていく用のペットボトルは一晩でちゃんと凍って欲しいし、両方出力をMAXにしてくれ!と思ったのですが、そういうのはお高い機種を買ってくださいね、ってことでしょうか。レバーを真ん中にすればいいよ、って話なのですが、それってどっちも中途半端ってことでちょっと気に食わないですよね。性格の問題なのかもしれませんが、両方MAXであってほしいのです(わがまま)

こういう日本ではなかなか見ない規格や調節機構に戸惑うのは外国生活あるあるです。1200バーツは、勉強代ですね...

この冷蔵庫、調査が中断してからのこの1年半、鍵がかかった部屋に放置されています。一応庫内には防カビ・除湿剤を入れてはきましたが、最悪庫内はカビだらけ、配管あたりにはヤモリたちが住みつき卵産み放題、きっと大変なことになっているんだろうなぁと想像します。壊れてたら困るなぁ...


さて、次回はもう一つの家電「電子レンジ」のお話です。

なぜあの時冷蔵庫と一緒に電子レンジを買わなかったのか、と悔やまれる出来事が発生します...。

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タイサル!シリーズ過去の配信アーカイブはこちらから↓

連載コラム「タイでサル調査!研究奮闘記」配信開始のお知らせ
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n28a1dc0c9402
第1話「海外調査の生活拠点」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n985accf6fef3
第2話「調査地で楽しむタイ料理!食事編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5444528ab0bb
第3話「シャワーも命がけ!?お水事情その①」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5bcd9a17bc1
第4話「シャワーも命がけ!?お水事情その②」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7c4f68bf12d1
第5話「シャワーも命がけ!?お水事情その③」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n56d26d529251
第6話「泥水との激戦を終えて」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n375ca4ab7be2
第7話「調査生活のオトモ!タイの犬たち」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7968f75aea75
第8話「その日のことはその日のうちに!調査の1日のルーティンワーク」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfdac8fac1ec6
第9話「忘れ物確認ヨシ!調査時の装備について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n4fef7eb2e320
第10話「写真へのこだわり」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na4da37e13e8d
第11話「誰だ誰だかわからない!個体識別の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1648bde20bab
第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n24c3478ea661
第13話「サルたちの名前の付け方の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nb6a8e6119ced
第14話「タイの仏教文化とサルたちの関係について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9a7a6814730d
第15話「タンブン行為で私が心配していること」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd1360f5568af
第16話「タイ生活の必需品、プラクルアンとは?」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n6bcc5b875bb5

タイ南北調査特集はこちらから↓
第17話「南北調査シリーズ開始&YouTubeチャンネル開設のお知らせ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ncab1c13b6bf9
第18話「南部調査その①:Puckerを拝みに...キタブタオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5d3df0969439
第19話「南部調査その②:白いメガネが印象的!ダスキールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na32091a5b055
第20話「南部調査その③:見慣れたサルのはずなのに...ベニガオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n3488e5942c1a
第21話「南部調査その④:アナタどこにでもいるわね!カニクイザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n219720155be3
第22話「北部調査その①:黄金の赤ちゃんを求めて〜ファイヤールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndeb079c8825c
第23話「北部調査その②:ガイコツの隣でうんち拾い...アッサムモンキー編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/naf23f701a677
第24話「南北調査おまけ:噂のココナッツモンキーを求めて−モンキースクール編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfb50e551aa1a

第25話から調査地シリーズに戻ります↓
第25話「年に一度の風物詩!コウモリ集団飛翔の撮影秘話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n0b4911b372e2
第26話「気づけば部屋が虫だらけ!マレーンマオ大量発生の悲劇」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n264fade216ea

番外編の過去の配信アーカイブはこちらから↓
私論:「ココナッツモンキー」は動物虐待なのか?
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne6add28fc064
遺跡の街ロッブリーに住むカニクイザルの歴史
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1679cb4029b2

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Twitterはこちらです。ベニガオザルのみならず、これまで撮影してきたサルたちの写真を載せています。

イラストレーターのはなさわさんのサイトはこちらです。
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