#短編小説
アイスピック【掌編】
「あなたは私を見捨てるのね」
母は憎しみを込めた目で私を睨むと、アイスピックを手に取った。
逃げなければいけない、のに、何故か、体中から力が抜けて、その場にへたり込んでしまった。立ち上がることも出来ない。声を上げることさえも。ただ、目を固く閉じることしか出来なかった。
悲鳴がした。私の声帯は閉じられたままだったから不思議に思い、目を開けた。
グレーの絨毯にどす黒い何かが飛び散っている。それ
チータラ食って生きててくれよ
先輩が死んだ。
一年ぶりに中谷からメッセージが届いていた。電車で何気なく確認したスマホの画面。タップしてメッセージを確認する。
「先輩死んだって」
悪い冗談かと思った。一年ぶりのメッセージがこれなんて、悪趣味すぎる。
「ご愁傷さまです」
そう返信する。
中谷から返信が届いたのは、帰宅してからだった。コンビニ弁当で適当に夕食を済ませ、入浴の準備をしていた時。通知音には気づいたが、メッセージ