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ポエトリー・ドッグス/斉藤 倫
「このバーでは、詩を、お出ししているのです」
いぬのマスターのおまかせで31篇の詩が酔わせてくれる。
途中から予感はしていた。
これはまずい。
涙があふれて困る。
これはよくない。
もふもふのおててで出されるお酒で私も酔いたい。
おじいちゃんになっていくきみは本当にかわいかったよって。
あーってため息をついた女性は、まるで私。
何故エリーズは語らなかったのか? /森博嗣
W及びWWシリーズは、ずっと人間の定理を問いかけている。
はじめはウォーカロンと人間の違いはなにか。
ヴァーチャルやAIが日常になり、人工臓器や人工細胞の入れ替えでとんでもなく長生きができる世界を描くことで、人間とはなにか、心とはなにか、生きるとはなにかをこちらに問い続けている。
森博嗣作品は哲学だ。
私が死ぬときはきれいに後始末をしてこの世を去りたい。
子孫がいないから、夫が死んだら私の家族は
夜を乗り越える/又吉直樹
文豪の作品を少しずつ読むようになったのはここ数年のこと。
だから今が良きタイミングだった。
純文学は感想文を書かせたら刺さるところがみんなバラバラになる、とどこかで聞いて震えた。
同じ人でも年齢で異なる。
だから一冊の本を生涯大事に持つことができるのか。
作品を風呂敷だとして、広げた風呂敷の模様が美しかった、そんな感想でもいいのだ。
私にとって宮沢賢治の作品は「はぁぁぁ美しい……」と抱きしめるも
議論の余地しかない*Photograph index/森博嗣
森博嗣自身が撮影した写真に、小説からの引用とメッセージをクロスさせた本作品。
巻末にPhotograph indexとして、写真にタイトルがつけられている。
引用文とはまったく関係ない、写真としてのタイトル。
これ、よくよくみると、写真で大喜利してますね。
一番気に入ったのは、『時間の残量』というページのハカリ?温度計?の写真。
Photograph indexには『近影』とある。
よーくみると、
議論の余地しかない/森博嗣
S&M、Vシリーズなど、これまでの作品から抜き取った珠玉の言葉たち。
引用元のタイトルを見ただけでしびれる。
そんな人向けのフォトエッセィ。
動機なんてさして重要ではない、と発言したのは犀川先生だっただろうか。
被害者が、世間が、納得するためだけに必要なのだと。
ミステリィばかり読んでいた当時の私は少なからずショックを受けた。
納得できる理由があれば、安心するのか?
多様性に対応したトイレ問題
悪童日記/アゴタ・クリストフ
読了後の儀式、タイトルと向き合う。
原題の直訳は「大きなノートブック」だそうだが、『悪童日記』と意訳されている。
この子らの賢さ、したたかさ、逞しさ、大人顔負けの物言いは、ホームアローンのケビン少年と重なる。
双子のケビン少年。
これは質が悪い。
でもこの子たち、なんか憎めないんだな。
最初から最後まで「ぼくら」で語られるこの子たちの作文(日記)。
ぼくらには、ゆるぎないルールと正義がある。