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読書感想文 東北在住

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記事一覧

三島由紀夫レター教室 | 三島由紀夫

オザケンのエッセイが書かれた帯が読みたくて。 全編手紙のやりとりのお話。 氷ママ子と山トビ夫の小粋な関係がよい。ヤキが回ったとか幻滅したとか、お互い「らしくない…

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6日前
8

オールアラウンドユー | 木下龍也

目にした瞬間に込み上げてきた。 そう、そういうタイプの犬だった。 いつもクールなのにときおり見せる笑顔のような口角で。 ついてきてる?とでも言いたげに。 賢くて頼も…

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3週間前
3

虎のたましい人魚の涙 | くどうれいん

震災に対する気持ちにはグラデーションがある。 ガタガタに割れた道路を車のおなかをこすりながらハンドルを固く握りしめて、やっとの思いで帰ってきた私と。 買い出しに出…

aki
3週間前
2

イワンのばかと杜子春

ある日、満島ひかりさんが『イワンのばか』を紹介していた。 またある日、バイク川崎バイクさんが『杜子春』を紹介していた。 本紹介、大好物です。 『イワンのばか』 悪…

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1か月前
4

今年の夢十夜

我が家の夢十夜。 去年は一輪だけスッと佇んでいたのだが、今年は五輪に増えた。 ここ数年、庭の整理をすすめている。なるべく手をかけない庭にしたい。なのでこのまま増え…

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1か月前
1

短くて恐ろしいフィルの時代 | ジョージ・ソーンダーズ

〈内ホーナー国〉〈外ホーナー国〉のバチバチ領土問題。ガラクタ機械おもちゃたちのいっちょ前でチグハグな言動に笑っていたのに、気づくと笑いごとではなくなって。不穏な…

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1か月前

君たちはどう生きるか | 吉野源三郎

叔父さんの示唆をヒントに、中学生のコペル君が自分で答えを見つけだしていくお話。 コペル君に起こる出来事は、多かれ少なかれ我々大人は経験してきている。 今の自分な…

aki
1か月前
3

山頭火句集【700句・イラスト付】|久永堂書店編|夏の部

とっくにというか、いつからというか、夏が始まっていた2024。 麻婆豆腐定食を待ちながら山頭火。 折れた桜の枝を蜘蛛の巣取り棒にしている我が家。破っても破ってもすぐ…

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2か月前
3

掌の小説|紅梅|川端康成

【居酒屋たなごころ】 お題 ー 川端康成『紅梅』(掌の小説より) ※お題を肴にあーでもないこーでもないと読み解くお遊びです。 ※ネタバレしておりますし、シンミリもし…

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2か月前
1

掌の小説 | 心中 | 川端康成

【居酒屋たなごころ】 お題 ー 川端康成『心中』(掌の小説より) ※お題を肴にあーでもないこーでもないと読み解くお遊びです。名探偵を気取っています。 ※激しくネタバ…

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2か月前
8

掌の小説 | 朝の爪 | 川端康成

【居酒屋たなごころ】 お題 ー 川端康成『朝の爪』(掌の小説より) ※お題を肴にあーでもないこーでもないと読み解くお遊びです。迸る愛でグダグダくだを巻いています。 …

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2か月前
5

掌の小説 | 川端康成

最高におもしろい本をみつけた。 北海道旅行の帰りは読書をする前提であえての新幹線。旅のお供は何にしようとウキウキワクワク悩みに悩んで、掌編小説を手にとった。初め…

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2か月前
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星の王子さま|サン=テグジュペリ

星の王子さまはいくつもの出版社から出ているけれど、キラキラ箔押しの新潮文庫が一番好き。 読んだのはずいぶん前だが、ふと気になって再読。 6つの星とかヘビとかキツ…

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3か月前
10

ヘッセの読書術|ヘルマン・ヘッセ

ヘッセはずっと「自己を見つめよ」と説く。 『ロゴスと巻貝(小津夜景)』でこの詩に出会い、『デミアン』『シッダールタ』を経てやっとここに戻ってきた。 再びこの詩と…

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3か月前
6

流浪の月|凪良ゆう

これは叫びだ。 ずっとずっと叫んでいる。 「小児性愛者」と偽ったほうがまだ生きられると思った文。 彼は沈黙を選んだ。 当事者ではない世間が、家族でさえ、どれだけ叫…

aki
4か月前
6

ロゴスと巻貝|トークイベント

『ロゴスと巻貝』刊行記念イベント。 どうやら私は哲学を学んでいる方のお話が好きらしい。 自分にはない角度からの目線がおもしろい。 それに加えてゆったりとしたトーン…

aki
4か月前
4
三島由紀夫レター教室 | 三島由紀夫

三島由紀夫レター教室 | 三島由紀夫

オザケンのエッセイが書かれた帯が読みたくて。

全編手紙のやりとりのお話。

氷ママ子と山トビ夫の小粋な関係がよい。ヤキが回ったとか幻滅したとか、お互い「らしくない」と思ったら遠慮なしに言い合えるのは信頼の裏返し。

マナーもエチケットもない若造へのかっこいい返し。

かと思えば。

一晩考えて心情が変わった様は悪女とは言いきれないかわいらしさでよい。

丸トラ一の存在がなんとも愉快だ。大人二人が

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オールアラウンドユー | 木下龍也

オールアラウンドユー | 木下龍也

目にした瞬間に込み上げてきた。
そう、そういうタイプの犬だった。
いつもクールなのにときおり見せる笑顔のような口角で。
ついてきてる?とでも言いたげに。
賢くて頼もしくてかっこいい犬だった。

まるで『あなたのための短歌集』のように、私のための短歌だと思った。
一瞬のうちにあの光景がよみがえる。

ああ、恋しい。
母ちゃんはまだあなたに会いたくてしかたがないのよ。

虎のたましい人魚の涙 | くどうれいん

虎のたましい人魚の涙 | くどうれいん

震災に対する気持ちにはグラデーションがある。
ガタガタに割れた道路を車のおなかをこすりながらハンドルを固く握りしめて、やっとの思いで帰ってきた私と。
買い出しに出た隣県のテレビの津波映像に驚き、家族を探しに行って、戻って、必要なものをかき集めてまた行った夫。
親戚四人の名前が震災慰霊碑に彫られている夫がお墓に手を合わせる気持ちは、私とはぜんぜん違う。

気になっていたくどうれいんをついに読んだ。

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イワンのばかと杜子春

イワンのばかと杜子春

ある日、満島ひかりさんが『イワンのばか』を紹介していた。
またある日、バイク川崎バイクさんが『杜子春』を紹介していた。
本紹介、大好物です。

『イワンのばか』
悪魔があの手この手で陥れようとするが、イワンは兵も金もいらない。 朝晩コツコツ働いて暮らし、「そうか、よしよし」と悪魔にさえ分け与える。 なにを奪われてもかまわない。また実直に働くだけ。 悪魔お手上げ、という話。

イワンはすごい。これな

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今年の夢十夜

今年の夢十夜

我が家の夢十夜。
去年は一輪だけスッと佇んでいたのだが、今年は五輪に増えた。
ここ数年、庭の整理をすすめている。なるべく手をかけない庭にしたい。なのでこのまま増えてくると困るのだが、まあ、今年は大目にみましょうか。
今日もまた暑くなるぞという朝、固い蕾が清々しいのだもの。

この夢十夜を堪能するために、庭木をもっとコンパクトにしよう。
暑いから、少しずつ。

短くて恐ろしいフィルの時代 | ジョージ・ソーンダーズ

短くて恐ろしいフィルの時代 | ジョージ・ソーンダーズ

〈内ホーナー国〉〈外ホーナー国〉のバチバチ領土問題。ガラクタ機械おもちゃたちのいっちょ前でチグハグな言動に笑っていたのに、気づくと笑いごとではなくなって。不穏な空気に眉をひそめたところに〈大ケラー国〉のほのぼのお茶会行進ににっこり。なんてかわいいのだこの国は。

現代とは違う世界を読みたい気分で手にとった。
NHK理想的本箱で気になって積読していたもの。映像の帯で表現されたガラクタ機械の国の◯△□

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君たちはどう生きるか | 吉野源三郎

君たちはどう生きるか | 吉野源三郎

叔父さんの示唆をヒントに、中学生のコペル君が自分で答えを見つけだしていくお話。

コペル君に起こる出来事は、多かれ少なかれ我々大人は経験してきている。
今の自分ならどうする?模範解答ではなく、実際に行動できる?

『六 雪の日の出来事』
上級生に目をつけられた友を守ると仲間と約束したのに、いざとなったら怖くて飛び出すことができなかったコペル君。後ろめたさで、やられた仲間のもとにかけ寄ることもできな

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山頭火句集【700句・イラスト付】|久永堂書店編|夏の部

山頭火句集【700句・イラスト付】|久永堂書店編|夏の部

とっくにというか、いつからというか、夏が始まっていた2024。
麻婆豆腐定食を待ちながら山頭火。

折れた桜の枝を蜘蛛の巣取り棒にしている我が家。破っても破ってもすぐ張られるのだけど、朝露を纏ってキラキラ浮かび上がる模様はレースのように美しい。
それはそれとしてなんで歩くところに張るのかな、と今日も桜の枝でくるくる巻き取る。

蝉の声が被さって追い立てられているよう。ひらがなだけだとくぎりがあいま

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掌の小説|紅梅|川端康成

掌の小説|紅梅|川端康成

【居酒屋たなごころ】
お題 ー 川端康成『紅梅』(掌の小説より)

※お題を肴にあーでもないこーでもないと読み解くお遊びです。
※ネタバレしておりますし、シンミリもしてます。

どこの家でも繰り広げられるだろう年を重ねた両親の言い争い。なごやかに思い出話をしていたはずなのに、いつの間にかお互いの思い違いを指摘し合って空気がピリつく。

我が家も父はロマンチスト、母はリアリスト。「そうだっけ?」とぴ

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掌の小説 | 心中 | 川端康成

掌の小説 | 心中 | 川端康成

【居酒屋たなごころ】
お題 ー 川端康成『心中』(掌の小説より)

※お題を肴にあーでもないこーでもないと読み解くお遊びです。名探偵を気取っています。
※激しくネタバレしておりますし、推理が大ハズレの可能性も大です。

たった2ページと2行の世界。
心霊的・神秘的と評されておりますが、本当にそうだろうか。
どの角度から覗いたらクリアな景色が見えるのか、ぐるぐる考える。
私はこれをミステリーの角度で

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掌の小説 | 朝の爪 | 川端康成

掌の小説 | 朝の爪 | 川端康成

【居酒屋たなごころ】
お題 ー 川端康成『朝の爪』(掌の小説より)

※お題を肴にあーでもないこーでもないと読み解くお遊びです。迸る愛でグダグダくだを巻いています。
※完全にネタバレしておりますし、思い込み強めなのでご注意ください。

掌編小説のあらすじってほぼ本編になってしまうことに気付いて地味に困る。

それにしても意味不明でしょう。唐突に足の爪を切るって。私も一読して「わけわからん」と放り出

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掌の小説 | 川端康成

掌の小説 | 川端康成

最高におもしろい本をみつけた。

北海道旅行の帰りは読書をする前提であえての新幹線。旅のお供は何にしようとウキウキワクワク悩みに悩んで、掌編小説を手にとった。初めての川端康成。
バリエーション豊かな122編。どこかで聞いた「文豪の一筆書き」が決め手となる。

ひそかに楽しみにしていた青函トンネルは気付いたら通り過ぎていて、在来線に乗り換えても吊り革を諦めてページをめくる。腕にくいこむお土産袋。

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星の王子さま|サン=テグジュペリ

星の王子さま|サン=テグジュペリ

星の王子さまはいくつもの出版社から出ているけれど、キラキラ箔押しの新潮文庫が一番好き。

読んだのはずいぶん前だが、ふと気になって再読。

6つの星とかヘビとかキツネとか当時はわけわからんと斜め読みしたのに。沁みる。沁みてくる。
あの頃は私もきっと王子さまに「おとなって変だ」と思われてたんだろうな。

はかないものは目の前から消えてしまうのよ。そういうものこそ書き留めないと人は忘れてしまう。

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ヘッセの読書術|ヘルマン・ヘッセ

ヘッセの読書術|ヘルマン・ヘッセ

ヘッセはずっと「自己を見つめよ」と説く。

『ロゴスと巻貝(小津夜景)』でこの詩に出会い、『デミアン』『シッダールタ』を経てやっとここに戻ってきた。
再びこの詩と向き合う。
はじめて出会ったときと違うのは「きみ自身」の言葉の重み。
この重さを重さとして感じさせずに、変わらず優しい。

作者や書物に盲目的になってはいけない。
書物はあくまで出発点であり、刺激となるものである。
世界を解釈してもらうた

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流浪の月|凪良ゆう

流浪の月|凪良ゆう

これは叫びだ。
ずっとずっと叫んでいる。

「小児性愛者」と偽ったほうがまだ生きられると思った文。
彼は沈黙を選んだ。

当事者ではない世間が、家族でさえ、どれだけ叫んでも二人の声は届かなかった。
自分とは遠い人の話だとなぜ思うのか。
自分の隣にいるこの優しい人がそうなのかもしれないのに。
ならせめて、自分がその人と接してきてどう感じていたのかを信じてほしい。
それだけが真実だと小さな梨花ちゃんが

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ロゴスと巻貝|トークイベント

ロゴスと巻貝|トークイベント

『ロゴスと巻貝』刊行記念イベント。

どうやら私は哲学を学んでいる方のお話が好きらしい。
自分にはない角度からの目線がおもしろい。
それに加えてゆったりとしたトーン、ロジカルな思考、中立的な立ち位置。
考えて話す間、反射的に受け答えしないところなど、御三方とも共通してとても好ましい。

個人的メモのごくごく一部。
カウンセリングのような、私にとっての大事な言葉はしまっておく。

うれしい気持ちを爆

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