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三島由紀夫レター教室 | 三島由紀夫

オザケンのエッセイが書かれた帯が読みたくて。

全編手紙のやりとりのお話。

-山トビ夫より氷ママ子への手紙-
内心は、本当の解決など求めていはしませんし、また何かの解決を暗示されても、それを心から承服したりはしません。
かれらはただ、告白したり主張したりすることの露出狂的な喜びだけでそうするのです。手紙を出してしまえば七割方満足しているのです。(略)
こういう人たちは、自分で火をつけて、それから、その火事場見物に熱狂するというタイプの人間で、何かをやってのけて、その結果を、こんどは安全な場所からゆっくり見物したいのです。

身の上相談の手紙

氷ママ子と山トビ夫の小粋な関係がよい。ヤキが回ったとか幻滅したとか、お互い「らしくない」と思ったら遠慮なしに言い合えるのは信頼の裏返し。

-氷ママ子より丸トラ一への手紙-
人間はいくつになっても感傷を心の底に秘めているものですが、感傷というのはGパンみたいなもので、十代の子にしか似合わないから、年をとると、はく勇気がなくなるだけのことです。

心中を誘う手紙

マナーもエチケットもない若造へのかっこいい返し。

かと思えば。

-氷ママ子より丸トラ一への電報-
クタバッテシマエ
-氷ママ子より丸トラ一への電報(次の日)-
ハナシアリスグコイ

離婚騒動をめぐる手紙

一晩考えて心情が変わった様は悪女とは言いきれないかわいらしさでよい。

丸トラ一の存在がなんとも愉快だ。大人二人が彼にはなぜか本音を吐露し、よくわからない立ち回りで結果的に全方位丸くおさまる。報酬ありき。
最初の登場から考えたら、皆から感謝されることになるとはとうてい思えない。本人は食欲とテレビ欲だけの人間なのに。

どうぞ、どうぞ、ほうっておいてください。(略)僕はこれで十分幸福なのですから。他人の幸福なんて、絶対にだれにもわかりっこないのですから。

悪男悪女の仲なおりの手紙

おそらく本作のテーマはこれ。

手紙を書くときには、相手はまったくこちらに関心がない、という前提で書きはじめなければいけません。

作者から読者への手紙

読者からの自分本意な手紙によほど辟易したもよう。時代を超えて現代のSNSにも通じるマナーである。
太宰治『恥』のあの子に教えて暴走を止めてあげたいとちょっと思った。

それにしても三島由紀夫の登場人物はひょうきんな名前が多い。今作もなかなかだが、私のお気に入りは『命売ります』の羽仁男はにお