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エッセイ・コラム

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2023年8月の記事一覧

報道とは、社会の日記をつけること

報道とは、社会の日記をつけること

「8月ジャーナリズム」という言葉がある。
毎年8月になると堰を切ったように平和や戦争に関わる報道が目立つようになることを指す言葉だ。ともすると「毎年毎年、また同じようなことやってるよ」というマンネリ感を揶揄するニュアンスもある。

確かに、物心ついたころから漫然とテレビを見ていると、8月の夏休みには決まって戦争や平和に関わる報道が流れていた。子供からみて別段面白いものでもなかったが、どのチャンネル

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初めてのハンガリー語の旋律はもう聞こえない

初めてのハンガリー語の旋律はもう聞こえない

ハンガリーのブダペシュトで開催されていた世界陸上が終わった。

ハンガリーという国は私にとって少し特別な国である。というのも、わたしは大学の時分外国語学部に所属しており、英語やフランス語などのメジャーで将来使えそうな言語を学ぶわけでもなく、ハンガリー語というマイナー言語を学んでいたのである。

ハンガリー語が特に役に立つタイミングは就職してから一回もないが、今ではそういうものこそが教養であると割り

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感謝はあふれるもの

感謝はあふれるもの

以前奥さんのお父さんと話をしていたときに子供の話になったことがあった。私にも娘が生まれたこともあり「だれしもあんな感じで大きくなるんですねえ」というと、ぽろっと笑いながらこんなことを言った。

「まあ、子供のほうは自分で勝手に大きくなったと思ってるんだよね」

自分自身が幼年期のころを思い返し、確かになあと思うほかなかった。
目の前に食事があるのは当たり前、家があるのも当たり前、面倒をみてもらうの

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陳腐ながらメディアの未来を考えてみる

陳腐ながらメディアの未来を考えてみる

朝日新聞出版が5月末に「週刊朝日」を休刊した。
かつての発表文を引用してみよう。

7万部も売れているのに休刊、というのは大きな時代の変化だなと思う。雑誌のいろんな統計を見ても、7万部というのは決して小さくない数字だ。

読む人が減ってしまえば広告料収入が落ちる。定額購読者から得られる収入も落ちる。新聞も雑誌もそうだが、基本的にはメディアというのは多くの人に読まれないと価値がない。人気がモノを言う

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 「やめる」決断をしたとき㊦

「やめる」決断をしたとき㊦

あのときの、急に胸を殴られたかのようなドキッとした感覚はいまでもこびりついている。自分の口からいつの日か伝えるものと思っていた話がコーチから突然口外されたのである。

ミーティングのあと、同じコースで練習していた友人から「なんでやめちゃうんだよ」と聞かれた。「いやあ…」と、うやむやに答えた気がする。
表向きは「受験だから…」とか「全国に出たから…」という理由だったが、実際は「練習はきついし、これ以

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「やめる」決断をしたとき㊤

「やめる」決断をしたとき㊤

人間、生きていれば様々な物事を体験したり経験したりするものだが、いつまでもすべてをやっているわけにもいかないので、そのうち何かをやめる時が来る。

「やめます」というのは勇気がいる。
付き合うときには「好きです付き合ってください」だけでよいのに、別れるときには男がやけに冷たくなったり女が泣いたりして何らかの禍根が残るものだ。何につけても、やっていたことをやめるのは面倒くさい。

それだけに、多くの

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飲み会での愚痴は、会社に飼い慣らされてしまった証拠かもしれない

飲み会での愚痴は、会社に飼い慣らされてしまった証拠かもしれない

学生の頃の飲み会というと、大概は意味もなく酒をあおって嘔吐するという時間になりやすい。
社会人になると流石に節度を持って飲むことを覚えるわけだが、社会人歴が長くなるにつれて飲み会には一つの特徴が出てくる。

それは、会社の愚痴を言うようになるということだ。

聞いている時は「ふむふむ、この人は目の前の現状をそんなふうに捉えているのか」と思ったりするのだが、じゃあ愚痴をああでもないこうでもないと言い

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群馬のハゲとの出会い〜意味のない合宿の話〜

群馬のハゲとの出会い〜意味のない合宿の話〜

暑い夏になると思い出すことがある。「合宿」の記憶だ。

往々にして合宿は憂鬱なものである。トレーニングが普段よりタフになりやすいというのはもちろんだが、食事や睡眠時間などまでいちいちコーチや顧問の目が光り、逃げ場のない環境に追いやられるからである。
小さい頃はイベントのようなかたちで楽しく乗り切れたりもするが、歳を重ねるとなかなかそうもいかないものである。
かたや、合宿を乗り切れば一つステップが上

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知識という麻薬

知識という麻薬

以前、半ば趣味がてら北朝鮮のことを調べたことがあった。

かつては「地上の楽園」などとうそぶかれた場所であったが、実態は言うまでもなく極めて悲惨である。
軍事拡張を進めているため世界各国(特に日本)にはよく面倒ごとを持ち込み、なにより国民生活の礎である経済はボロボロである。2500万人を超える人口がありながら、名目GDPは宮崎県や山梨県並みだという。
知れば知るほど、率直にひどい国である。心の底か

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