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エッセイ・コラム

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2023年4月の記事一覧

好きになった瞬間などわかりはしない

好きになった瞬間などわかりはしない

アニメやマンガの王道ジャンルの一つが「ラブコメ」である。
大概は男性が主人公で正ヒロインや周りの女性とついたり離れたりしながら結局は正ヒロインといい感じになる。

最近のラブコメは恋に落ちるタイミングが心底しょうもない。
作品の設定として始まった時から好きな場合もあるのだが、作品中に好きになるときなんかはちょっと優しくされたとか手をつないだとか一事が万事そんな調子で、恋愛の進展に深みがない。

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一貫性と信仰を求める私たちだからこそ思考を止めてはならないねって話

一貫性と信仰を求める私たちだからこそ思考を止めてはならないねって話

言っていることとやっていることとが食い違っているということはよくある。
政治家や学者によくあるけれども、言行不一致の現状を日々目の当たりにしていると言葉を信頼するということがバカげたことに思えてくる。
言葉の持つ価値が日に日に減じられていくのだ。

政治家も学者も、実際に手を動かす立場ではないのでだからこそ言論の一貫性と言うものが問われるわけだが、ずっと一貫して同じことを言い続けている人はごくごく

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伝統文化のか細い糸を切るのは簡単で

伝統文化のか細い糸を切るのは簡単で

わたしは趣味でお茶をやっている。だらだらやっているのだがちゃんとやるとなるとそれなりの着物を着ていく必要があるので、一応着物も持っている。

着物というのは産業としていま極めて厳しい状態にある。
着る人が年々減っているから工場も止めざるを得ないし、悉皆屋さんの仕事も減るから廃業せざるを得ない。衰退産業の最たる例である。

こうした状況をどうにかせねば、と活動している人がいる。お茶のつながりで出会っ

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メディアが読者に媚びても仕方ないし、読者はメディアをあてにしても仕方ない

メディアが読者に媚びても仕方ないし、読者はメディアをあてにしても仕方ない

新聞やテレビなどのマスメディアに勤める人間は高給取りとして有名だが、メディア業界も時代の中で大きく変化してきている。

紙の新聞は売れず、テレビもいよいよ見られないなかで、隆盛を極めているのはインターネット関連のメディアだ。インターネットテレビやネットニュース関連のメディアが伸びてきている。

インターネット関連のメディアの登場で、メディアが発信する内容にも大きな変化が生まれる。すなわち「読まれる

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誤ってレコードのB面に針を落として名曲に出会った話

誤ってレコードのB面に針を落として名曲に出会った話

奥さんと旅行に行った時の話である。宿がアンティークなつくりになっており、部屋にはレコードプレイヤーはあるのにテレビがない、という現代においてはなかなかお目にかかれぬ空間であった。

レコードプレーヤーは(なんだかんだでまだ買ってはないが)個人的に好きで、「おお」などとひとりテンションが上がり、1980年代の昭和歌謡を中心にレコードに針を落としていたのだが、その際にふとテレサ・テンの「つぐない」のレ

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「悪貨は良貨を駆逐する」ようにウソは正論を駆逐する

「悪貨は良貨を駆逐する」ようにウソは正論を駆逐する

「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉がある。
同一金額の貨幣ではちゃんとしたもの(良貨)が駆逐され、粗悪なもの(悪貨)だけが流通する現象のことだ。一般的には、悪人の多い社会においては善人は目立たぬよう暮らさなければならない世の中のことを指している。

この「悪化は良貨を駆逐する」現象は経済の話であるのだが、実は色々なものにとって普遍的な現象でもあるのではないか。

わかりやすいのは思想の世界である。

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私たちは「不完全な死体」として生きている

昭和時代に活躍した作家で寺山修司というひとがいる。

実際にしゃべっている姿なんかを見ると強烈ななまりを全く意に介さずぼそぼそと言葉を紡ぎ続ける姿が大変印象的なのだが、寺山修司はとかく原稿用紙の上につづる言葉が極めて鮮烈で、そして人間の価値観や思考回路みたいなものをクルッと180度ひっくり返してくるようなところがある。

私もいっとき寺山の詩や文章に傾倒した時期があったが、中でも今なお鮮烈に印象に

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そういえば人に魅了されたことがない

そういえば人に魅了されたことがない

就職活動なんかで「尊敬する人は?」との問いに「両親」と答える人が少なくないらしい。
確かに両親は自分自身を育ててくれた張本人である。私自身も非常に「感謝」はしているが、別段「尊敬」はしていない。

自分を育ててもらったことと人間として尊敬できるのかどうかは、つながりこそあれ別問題である。「なるほど」と学ぶことも多かったが、「ああはなるまい」と反面教師として学ぶこともあった。

先日、幼馴染の結婚式

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失われゆくエクリチュール

失われゆくエクリチュール

言語学なんかでは話し言葉をパロール、書き言葉をエクリチュールと呼ぶが、社会人歴が長くなるなかで、私より若い人の書く文章に触れる機会が増えている。

その中で度々「お?」と感じることがある。
すなわち、「書き言葉であるにもかかわらず、話し言葉のように文章が紡がれている」のだ。

たとえば「~っていうか」「~あるかもだし」といった言葉はいずれも話し言葉である。
SNSや普段のチャットやブログなんかであ

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よくしゃべるやつでも「違和感」があればコミュ障

よくしゃべるやつでも「違和感」があればコミュ障

以前出場した水泳の大会で一緒のレースに出た友人と喋っていた時に、全く知らない奴がベラベラ話しかけてきたことがあった。

私の友人はレース後、息も絶え絶えで「やべーキツイ」と言っていたのにもかかわらず、その知らない奴があれこれと話しかけてきていた。言葉を選ばず言うと「アタマ大丈夫か?というかこいつだれ?」と思いながら適当に私が対応していた。

まあ、ざっくり言えば空気が読めないだけなのだが、その友人

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