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落選文学展

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コンテストに落選した珠玉の迷作たちを「落選文学」として公開。自画自賛展といっても過言ではない。完全なる自己満足の世界。 ・・・と言いつつ、誰かに読んでもらいたいだけという寂しがり… もっと読む
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500字以内のショートショートに応募した末路。

500字以内のショートショートに応募した末路。

最近なんだか現実世界が慌ただしくて、こっちの世界の更新が疎かになってしまっていたことを反省。反省がてらに、応募していたショートショートの結果が先日発表されたので、ここに公開。

「超ショートコンテスト」指定の4テーマに沿って500字以内のショートショートを募集していたもの。審査員はやっぱりあのショートショート作家ですよ。

募集テーマは「ライオンの像」「そうめん」「老人ホーム」

私が選んだのは「

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色づく体温~短歌6選~

色づく体温~短歌6選~

影を踏む揺れる木の葉が落とす影ここは水底見上げれば空

向日葵のような明るさないけれど朝顔ほどの潔さ得る

はっとした言葉の綾も病葉も気づいた時に色は過ぎゆく

雪原に紅を染めたる寒椿空より他に知る者もなく

強くあれ念じながらも震えてたタンポポみたい記憶飛ばして

流れゆく砂をせき止め握る夜それでも闇は白々と明け

左巻きの証

左巻きの証

朝顔の蔓のように
左巻きに
時計の針に逆らうように
日々を歩んでいけたらと願う
朝顔のように愛でられて
一日の始まりを告げるように
太陽に顔を向けて
どこまでもどこまでも
上へと伸びていけたらいい
丈夫でも儚くて
夜に溜まったその日の澱を
左巻きに吸い上げて
浄化のごとく花開かせる
新しい日を拓かせるように
朝を始める、花

すべての花が種を残せることはない現実に
抗い続ける左巻き

風に負け、た

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言葉つかい

言葉つかい

実はこちら、フジテレビの「めざましテレビ」で募集していた新テーマソング用の原作小説に応募したショートショート。YOASOBIが小説をもとに制作した曲が、春からの番組のテーマソングに使われるというので、試しに応募してみたところ、玉砕。monogatary.comにて投稿したため、公開した状態ではあるものの、寂しいのでこちらでも公開してみる。

これも落選文学展への出展作品ということで、誰か反応してく

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マグリットから生まれた妄想物語

マグリットから生まれた妄想物語

 少し前に、横浜美術館で募集していた、「《王様の美術館》からつむぐ物語」の入賞作品が発表された。これは、マグリットの絵画「王様の美術館」から400字程度の物語(400字程度)を想像するというもの。どうやら1000点以上の応募があったらしい。https://yokohama.art.museum/education/online/magritte.html
 私も応募したものの、残念ながら、「落選文

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田中と

田中と

 田中は同期だった。
 その年、新卒で入社した五人は、田中をはじめとして妙に馬が合った。そのため、誰が誘うでもなく、金曜の夜、仕事終わりには自然と飲みに行くようになっていた。
 話すことは他愛のないもの。社会人になっての驚きや苦労、仕事のささやかな愚痴を偉そうに語る。とは言ってもまだ学生気分が抜けきらないせいか、「お疲れ様」と言いたいだけか、とにかく飲みたかっただけなのかもしれない。

 五人のな

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本の声

本の声

「生きてる本があるらしいよ」
 小学校の休み時間。真紀が図書室で本を探していると、クラスの女子のささやき声が聞こえてきた。
「触っていないのに、本が棚から飛び出していたり、突然床に落ちたりすることがあるんだって」
「やだぁ、恐い」
 小さな笑い声とともに、二人は隣の棚へと歩いていった。
――あの二人、また何か秘密とか七不思議とか変な話してるのかな。この間は校長先生が校長室から消えた謎、なんて噂して

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ショートショートお題「告白」

ショートショートお題「告白」

光文社のサイトで定期的にショートショートが募集されていることを知り、早速応募してみた。その時々でテーマがあり、私が見つけた時に募集していたのは「告白」だった。
さて、結果から申し上げると、落選である。でも大丈夫。いっぱい落ちたわけではない。まだ、一敗だ。
せっかくなのでここで公開し、気持ちよく悔しがろうと思う。

先生へ 年が改まり、寒さも本格的になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。突然の手紙

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「坊っちゃん文学賞」に落ちたショートショート。落選文学と名付けて発表!

「坊っちゃん文学賞」に落ちたショートショート。落選文学と名付けて発表!

世界で知らない人はいない気がする、モネ等印象派の画家たち。ご存知だろうか、実は彼ら、当時の画家の登竜門とでも呼ぶべき権威ある公式展覧会「サロン」への落選を繰り返していた。

どの画家もサロンへの入選を目指していた時代において、彼らは1874年、サロンに落選していた画家たち皆でグループ展を開催。のちに印象派展と呼ばれるようになったが、要は落選展である。別に拗ねているわけでも、開き直っているわけでもな

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第十一夜

★これは、夏目漱石『夢十夜』の書き出し「こんな夢を見た。」からはじまるショートショートを募集したコンテストに応募し、鮮やかに落選した迷品。誰かスキでもしてくれたら嬉しい★

 こんな夢を見た。
「夜桜見物しませんか」という風流な誘いに乗って庭へ出た。そのまま並んで縁側に腰を下ろす。桜など植えていたかと訝しんだものの、彼が指さす先には、成程、確かに桜が宵闇に浮かんでいる。隣の家の木であった。
「数本

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