母の古希のお祝い
2023年5月1日(月)ー
母の古希のお祝いで、その母が20年以上勤めている【天拝の郷】の、筑紫野の素晴らしい眺望が臨める個室を借りきっての祝いの席
旬の食材をふんだんに使ったコース料理、ノンアルコール・ビール
天気は、晴れ
母は70歳になっても現役で働いており、毎日なにかと忙しくしている
ときおり帰国時に老齢の母とふたりで、温かい魚料理と色とりどりの野菜、小鉢の刺身、それに少量のコンビニの安い赤ワインで食卓を囲んだときに、母はこう言うのだ
「わたしも早くお父さんの所へいきたい・・・」
とか
「(再婚して)もうひと華咲かせるわ!!」
とか
前者の発言は無視してもいい
それは夫に先立たれた妻としての、そして息子に聞かせる発言としてはもっとも適切なはずだと思えるからだ
しかし、後者の発言は問題だ・・・
古希を迎え、一体、どこに咲かせる華があるというのか?
こういうことです
一時帰国して実家に戻ると、台所に水揚げされたばかりの新鮮な鯛がどかっとまな板に乗っていたり、同様に新鮮な烏賊が氷水で冷やされたりしている
母は魚を捌くことができないので、誰かからもらってきたのだろう
加えて、なんの気なしに冷蔵庫を開けると、タモリやイチローが宣伝していそうな漢方薬が並んでいたり、いかにも高そうなフランスワインがあったり・・・
どうしたのこれ?
と母に訊くと、母は少し小鼻を膨らませ、胸を張って自慢するようにわたしにこう言うのだ
ー ”(職場の)常連のXXさんから頂いたの!!”
その口ぶりや態度からは、どうやら相手は男とみて間違いはなさそうだ・・・
そしてまた別の夜、こういうことがあった
ダイニングテーブルに向かい合った母は、急に改まったような口調でこう言った
ー”もしも、あなたたち(子供たち)がOKしてくれるのであれば、お母さんは・・・”
そしてはっきりこう言い切った
ー”もうひと華咲かせるわ!!"
だから、いったいどこに、咲かせる華があるというのか?(笑)
その夜、母から漏れ聞いたところでは70歳以上の男女の多くは、やはり妻や夫に先立たれて孤独な老後を送らざるを得ないひとたちが実に多いらしく、要するに需要があれば供給もあるのだ
この件に関してはそれっきりで、わたしの妹や弟とも話しあったことはないし、実際、母に〈彼氏〉がいるのかも知らない
まぁ、個人的には、母は60代で父を涙で見送り、胸にできた癌細胞にも勝利し、現役で働いているので母自身の人生をエンジョイしてくれればいいとは思うのだが・・・
コース料理もみなで美味しく食べ終え、3歳になる姪の〈えまっぺ〉がデザートのガトーショコラに夢中でかぶりつくのを見て、わたしはそっと個室を後にする
ここからが44歳の独身(しかも長男)の辛いところ
立場的にも、状況的にもここの支払いを済ませる必要がある
長い廊下を歩き、受付で会計を済ませようと思うと、顔なじみの母の同僚が現れてこう言った
ー”お支払いは事前にお母さんが済ませてありますよ!!子供たちからは一切受け取らないでちょうだいと言われているんです”
わたしは素早く振り向き個室を見つめる
そこからは母と甥っこ、姪っこの嬌声が聞こえてくる
ー母め。こやつ、なかなかやりよるわ。このわたしを出し抜いて、しかも一杯くわせるなんて、古希を迎え・・・まだまだ現役だということか
母から学ぶことも、まだまだある
後日談だが、家に帰ってしっかり母に請求されました(笑)
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